96 / 123
トレルリ神民国~『普通』を体験してみよう~
路銀を稼ごうっ! その6
しおりを挟む
朝のうちのお客さんは、狩人さんが多い。
意外なことに、『劣化遅延のお札』は狩人さんに人気で、あっという間に用意してあった十五セットは売り切れた。
にぃにが用意していた矢は、最後のお札を買ってくれた人が矢尻付きのものをお試しでポンと六本買ってくれたあとは、眺めていく人はいるものの売れる気配はない。
「お客さんの相手は私とグラジオラスにまかせて、フェリシアはお札を追加で書いたらどうだろう?」
「え……でも――」
「いいんじゃない? フェリシアの分の売り物なくなっちゃったし、暇でしょ」
クリナムさんとにぃにの二人に揃って提案されたので、わたしはいったん後ろに下がらせてもらって、売り切れてしまったお札の追加を書かせてもらうことにした。
「フェリシア、『冷却のお札』も作っておきなね」
「うにうに」
『劣化遅延のお札』を買ってくれた狩人さんがもう一つ欲しがっていたのが、『冷却のお札』。
これは、『劣化遅延のお札』と同じように袋や箱などの入れ物に貼って使う使い捨ての魔道具で、中にはいっているものを冷やすためにに使う。『劣化遅延のお札』と併せて使えば、お肉や野菜が痛む速度が更に遅くなる。
言われてみれば、最初から一緒に並べておいてもいい商品だ。
それに作るのも二種類あれば、飽きの防止にもなる。いいことづくめだというのに、何で私ってば気づかなかったかなぁ……?
ま、それは置いといて。
露店を覗いていく人は狩人さん以外にでは、魔道具師さんがチラホラリ。
にぃにに、「この札を作ったのは君か?」などと聞いて塩対応されてたけど……それでもめげずにわたしに声をかけてきて、クリナムさんに追い払われてた。
コレは『青田買い』と言う、才能の有りそうな子を自分の工房に引き抜くために、定期的に露店を覗いているんだろうというのがクリナムさんの予想。
にぃにには、知らない人に「笑いかけない」「ついてかない」ように念押しされた。
しませんよ、そんなこと。
クリナムさんとピエリスさんは、魔神様のお墨付きがあったから、特別なのだ。
なにはともあれ、『青田買い』の人に目をつけられるのは面倒なので、クリナムさんの背中に隠れるようにしてお札を書く作業に取り掛かる。
と言っても、首に引っ掛ける紐の付いた板にベース素材の紙をセットして筆を出すだけという簡単なお仕事です。
道具の用意をしたら、一回大きく深呼吸をしてからお札作りに取り掛かる。
お札作りは、言葉にするだけなら『魔石インクにベース素材に吸われない量の魔力を含ませながら書く』だけの作業だ。とはいえ、この、二つのものに魔力をまとわせながら手を動かすのが慣れていないと難しい。マジックバッグを作るために刺繍をしていたときにも同じようなことをしていたから、だいぶ慣れたけど。
面倒なのが、ベース素材ランクによってまとわせる魔力の下限と上限が決まっていること。多すぎても失敗、少なくても失敗するので、ベストな量を作業しながら見極めないといけないのだ。
筆に魔力を自分なりに適量だと思う魔力をまとわせ、集中して筆を走らせる。
魔法文字の形は、多少なら崩れても構わないけれど、空いているべき隙間が埋まってしまうようなのはダメだ。筆にまとわせる魔力がベース素材に含有されているものよりも少しだけ多くないとにじむし、多すぎると定着できずにかすれてしまう。
わたしの場合は魔力が多すぎるから、ほんの少ししかまとわせていないつもりなのに多すぎになりがち。
――根性入れて、抑え込むよ……っ!
そんな調子で気合を入れるので、一枚書いては一休み。二枚書いては二休みと、なかなか作業がはかどらない。二枚書いては、露店に補充して――なんてことを繰り返しているうちに、いつの間にやらお昼の時間。
「おつかれさんっ! 昼飯こーてきたけど、食う?」
ちょうど三十枚目を書き終えたところに、食べ物を抱えたピエリスさんが戻ってきた。
食べ物の匂いを嗅いだとたん、お腹が大きく『ぐぅ~っ』と鳴いて、口元に冷たい感覚――はっ! ヨダレはダメだっ!!
どうやらピエリスさんは他の露店を偵察してきたらしく、やれアッチで何を売っていただのと店番をしながら話してくれる。にぃにはさっさと食事を終えると、ピエリスさんが見つけたというクズ鉄屋さんに、クリナムさんを連れて出かけていった。
意外なことに、『劣化遅延のお札』は狩人さんに人気で、あっという間に用意してあった十五セットは売り切れた。
にぃにが用意していた矢は、最後のお札を買ってくれた人が矢尻付きのものをお試しでポンと六本買ってくれたあとは、眺めていく人はいるものの売れる気配はない。
「お客さんの相手は私とグラジオラスにまかせて、フェリシアはお札を追加で書いたらどうだろう?」
「え……でも――」
「いいんじゃない? フェリシアの分の売り物なくなっちゃったし、暇でしょ」
クリナムさんとにぃにの二人に揃って提案されたので、わたしはいったん後ろに下がらせてもらって、売り切れてしまったお札の追加を書かせてもらうことにした。
「フェリシア、『冷却のお札』も作っておきなね」
「うにうに」
『劣化遅延のお札』を買ってくれた狩人さんがもう一つ欲しがっていたのが、『冷却のお札』。
これは、『劣化遅延のお札』と同じように袋や箱などの入れ物に貼って使う使い捨ての魔道具で、中にはいっているものを冷やすためにに使う。『劣化遅延のお札』と併せて使えば、お肉や野菜が痛む速度が更に遅くなる。
言われてみれば、最初から一緒に並べておいてもいい商品だ。
それに作るのも二種類あれば、飽きの防止にもなる。いいことづくめだというのに、何で私ってば気づかなかったかなぁ……?
ま、それは置いといて。
露店を覗いていく人は狩人さん以外にでは、魔道具師さんがチラホラリ。
にぃにに、「この札を作ったのは君か?」などと聞いて塩対応されてたけど……それでもめげずにわたしに声をかけてきて、クリナムさんに追い払われてた。
コレは『青田買い』と言う、才能の有りそうな子を自分の工房に引き抜くために、定期的に露店を覗いているんだろうというのがクリナムさんの予想。
にぃにには、知らない人に「笑いかけない」「ついてかない」ように念押しされた。
しませんよ、そんなこと。
クリナムさんとピエリスさんは、魔神様のお墨付きがあったから、特別なのだ。
なにはともあれ、『青田買い』の人に目をつけられるのは面倒なので、クリナムさんの背中に隠れるようにしてお札を書く作業に取り掛かる。
と言っても、首に引っ掛ける紐の付いた板にベース素材の紙をセットして筆を出すだけという簡単なお仕事です。
道具の用意をしたら、一回大きく深呼吸をしてからお札作りに取り掛かる。
お札作りは、言葉にするだけなら『魔石インクにベース素材に吸われない量の魔力を含ませながら書く』だけの作業だ。とはいえ、この、二つのものに魔力をまとわせながら手を動かすのが慣れていないと難しい。マジックバッグを作るために刺繍をしていたときにも同じようなことをしていたから、だいぶ慣れたけど。
面倒なのが、ベース素材ランクによってまとわせる魔力の下限と上限が決まっていること。多すぎても失敗、少なくても失敗するので、ベストな量を作業しながら見極めないといけないのだ。
筆に魔力を自分なりに適量だと思う魔力をまとわせ、集中して筆を走らせる。
魔法文字の形は、多少なら崩れても構わないけれど、空いているべき隙間が埋まってしまうようなのはダメだ。筆にまとわせる魔力がベース素材に含有されているものよりも少しだけ多くないとにじむし、多すぎると定着できずにかすれてしまう。
わたしの場合は魔力が多すぎるから、ほんの少ししかまとわせていないつもりなのに多すぎになりがち。
――根性入れて、抑え込むよ……っ!
そんな調子で気合を入れるので、一枚書いては一休み。二枚書いては二休みと、なかなか作業がはかどらない。二枚書いては、露店に補充して――なんてことを繰り返しているうちに、いつの間にやらお昼の時間。
「おつかれさんっ! 昼飯こーてきたけど、食う?」
ちょうど三十枚目を書き終えたところに、食べ物を抱えたピエリスさんが戻ってきた。
食べ物の匂いを嗅いだとたん、お腹が大きく『ぐぅ~っ』と鳴いて、口元に冷たい感覚――はっ! ヨダレはダメだっ!!
どうやらピエリスさんは他の露店を偵察してきたらしく、やれアッチで何を売っていただのと店番をしながら話してくれる。にぃにはさっさと食事を終えると、ピエリスさんが見つけたというクズ鉄屋さんに、クリナムさんを連れて出かけていった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~
eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」
王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。
彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。
失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。
しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる