隠していない隠し部屋

jun

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こっそり

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シルビオに離婚届を預けて屋敷を出た日から、もう数ヶ月経った。

そして、キャルティさんは…シルビオの子を生んだ。
それを聞いた時、胸が苦しくなった。
分かっていたけど、2人の生々しい姿が頭を過り、吐きそうになった。
そうか…シルビオの子供だったんだぁ…

考えないようにして、毎日を過ごした。
かと言って何もする気は起きず、ただぼんやり過ごしていた。

時折モリスが来て、『仕事漬けの兄さん』、『目の下に隈を作って頑張る兄さん』、『義姉さんの写真を見てこっそり泣いている兄さん』などなどタイトルが微妙な写真というものを持ってくるようになった。
その写真を見ながら、この時はこうだった、
この写真の時はこんなだった、と解説してくれる。
どうやらモリスは私とシルビオをくっつけようとしているようだ。

離婚したのに。

反省したんだろう。

このままじゃ駄目だと思ったんだろう。

でももう遅い、私達は別れてしまったんだから。
シルビオは別の人と書類上だけとはいえ再婚してしまったんだから。

真面目になったシルビオはますますモテるだろう。
シルビオは別人のように変わったらしい。
浮気をしなくなったシルビオ。
私が一番求めていた姿のシルビオ。
私と別れた事でそうなったのなら、別れた甲斐がある。
うん…意味はあった、離婚して良かった、後悔はしていない、けど・・・

悲しい…。
寂しい・・・。

シルビオの写真を見て、ため息をつく。

モリスの話しでは、キャルティさんとシルビオはほとんど会わなかったそうだ。
キャルティさんは出産が終わって体調が回復次第、修道院に入る事が決まっている。
真面目に過ごせば出てこれる。
2人は子供のために再構築するのかな…。

フン、関係ない!
私には関係ない!
関係ない・・・関係ないのかぁ~
もう私には関係ないんか…

さびしい…グス

トントン…「エルザ、ちょっと良いかな?」

お父様の声がする。

「はい、ちょっと待ってください!」
急いで涙を拭き、ドアを開ける。

「エルザ、何、泣いてたのかい?」

「いえ、欠伸を…」

「ふぅ~ん、欠伸ねぇ~。そこの写真見てたんじゃないの?」

「あ!あれは、モリスが、持ってきて…くれた…やつで…」

「はいはい、まあ座って話そう。」

お父様が涙を溜めた私をソファに座らせ、

「シルビオの事で話しがあるんだ。
最後まで話しを聞いてから、質問は受けるよ。分かったかい?」

「?はい。」

そして、離婚届は今、お父様が預かっていて私達はまだ離婚しておらず、夫婦のままだという事実を知った。
キャルティさんとは、例えシルビオの子だったとしても入籍はせず、子供はヒーナス家で育て、キャルティさんはそのまま修道院に入ると話しをつけたんだそうだ。

私が実家に戻ってすぐ、シルビオから屋敷に来て欲しいと手紙が来て、そこで2年間の猶予が欲しいと土下座されたんだとか。

お父様は、シルビオに対する信頼度ゼロの状況をどう回復していくのか、お父様とお母様を納得させてみろと、半ば嫌がらせのつもりで言ったら、シルビオは分厚いレポートを提出してきた。
何故浮気をしていたのか、何故繰り返したのか、エルザだけが好きなのにどうしてそんな事をしたのか、全て書いてあり、今後、どうしていくかも事細かに書いてあったのだとか…。
そしてそのレポートを私に渡した。

「私はね、シルビオにも言ったけど、エルザが幸せならそれで良いんだよ。
これから好きな人を作って再婚しても良い。
結婚なんかしなくても良い、エルザが幸せなら。
離婚届は出してはいないが、エルザが本当は誰と一緒にいるのが幸せなのか、それがシルビオなのか、別の人なのか、それとも1人でいることなのか、それが分かったら離婚届は提出するか、破棄するよ。

シルビオはこれから死ぬ気で頑張ると思う、エルザを迎えに行くために。
もし、それを待ちたいのなら私達は反対なんかしないから、好きにやりなさい。
その気持ちを隠す必要はないんだよ、1人で泣くなんてダメ!
あ、ちなみにエルザとシルビオは離婚してないからエルザには子供がいる事になってるけど、良いの?」

「ハアー⁉︎」

「だって離婚してないから、エルザの子供になるよ。今はクリスハート様が出産届の書類は預かってくれてるけど、そろそろ提出しなくちゃまずいんじゃないかな~一度、こっそり赤ちゃん見てきたら良いよ、可愛いよ。」

「お父様⁉︎どうして私が⁉︎え?母親⁉︎」

「暇してるなら面倒見てあげたら?
シルビオには見つからないように。今エルザが帰っちゃったら元の木阿弥だからね。」

「でも、そんなの…」

「エルザはシルビオを愛しているんでしょ?」

「愛…して…いるのかは、」

「今まで口にした事ないから恥ずかしいんだろうけど、エルザはシルビオを愛してる、そしてシルビオを放ってはいられない、でしょ?」

「・・・・・はい。」

「こっそり見ていてあげなさい。
もし、またシルビオが浮気なんかしやがったら、そん時は即座に離婚届出してやるから、任せろ!
そして、血の繋がらない子をエルザが育てられるか、育てられないか、見極めなさい。
見たら可愛くて堪らなくなると思うよ。
だってシルビオの子供なんだからね。」

お父様は言うだけ言って行ってしまった。

渡されたレポートを読んだ。

ホンット、シルビオはバカだなぁ…

しばらく知り得た情報を頭の中で整理するのに時間がかかり動けなかったが、整理が付いたら、すぐにモリスに手紙を書いた。

それからはモリスに協力してもらい、ジョバンニも引き入れ、使用人も味方につけ、“見つかったら負け!極秘潜入生活”が始まった。















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