隠していない隠し部屋

jun

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番外編 クリスハートの結婚

忘れない

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エルザにフラれてからは真面目に執務をこなし、父上、ブライアンと共に会議にも参加した。
もともと仕事は嫌いではなかったし、国政に関わる仕事は楽しかった。
毎日忙しく仕事をし、たまに鍛錬の為に騎士団に行き、エルザの事は考えないようにした。
でもたまに思い出す。
俺を泣きながら怒鳴ったエルザ。
傷だらけで倒れていたエルザ。
俺が告白した時の驚いた顔のエルザ。
微笑んで俺に幸せになって欲しいと言ったエルザ。

会いたくて、会いたくて、泣きたくなる時がある。

でももう会いには行けない。

会えば触れたくなるし、好きだと言いたくなる。
今まで女性を傷付けてきた俺は、もう二度と女性を傷付ける事をしないと決めた。
だから、俺は今まで蔑ろにしてきた婚約者のフランシスとの仲を深めていこうと決めた。

定期的に二人で会う時間を作った。
フランシスはこんな碌でもない俺を一途に想い続けていてくれた人だ。
幼馴染みで気心もしれている。
今更友愛が愛情に変わるわけではないが、夫婦となってもそれなりに仲良くはやっていけるだろう、俺に“愛情”を求めなければ。

基本、フランシスは受け身だ。
俺のやることなす事、全部受け入れる。
やってはダメだとも、やらないで欲しいとも言わない。
前はそれでもいいと思っていた。
でも、エルザに怒鳴られてから、フランシスの受け身が受け付けなくなった。
嫌な事は嫌だとハッキリ言ってもらいたい。

だが今の俺には満足しているのか、最近は機嫌良くお茶会を楽しんでいるようだ。
ただ微笑んでいるだけの俺に、何を満足しているのか…。
婚約を継続することになり、結婚式は半年後だ。
その準備が忙しくも楽しそうにドレスを選び、俺の色で全身を纏えるのが幸せなのだと嬉しそうに話していた。

好きな人がそうしてくれたら・・・。

フランシスが嬉しそうにすればするほど切なくなった。

そんな俺を見て、フランシスは寂しそうに笑う。
一緒に喜んで欲しいのだろう。
だから俺は、
「とっても可愛いよ、フランシス。良く似合ってる。」
といつもの笑顔で言った。
フランシスは嬉しそうに微笑んだ。

貴族、それも王族の結婚などこんなもんだ。
好き同士で結婚することの方が稀だ。
だからこれで良い。

そんな毎日を過ごしていたある日、ブライアンと久しぶりに夜、酒を飲んだ。

「なあ、クリスは今、楽しいか?」

「楽しくはないが、嫌ではないよ。」

「・・・そうか。一つだけ聞いていいか?」

「なんだよ、改まって。」

「クリスはエルザの事は忘れたのか?」

ビクッと肩を揺らしてしまった。

「いや、俺は…」

「あ~もう良いよ、分かったから。
ごめん、そんなすぐには忘れないよな…。
もう聞かない。
クリスはフランシスと結婚するって決めたんだからな。余計な事言ってごめん。」

忘れはしない。
初めて好きになった人だ。
もう二度とこの想いを口にはしないと決めた。
でも、時折、誰かに聞いて欲しくなる。
あの人の事が好きなんだと。
会いたいんだと口にしたい。

俺とブライアンはそれから一言も話さず、酒だけを飲んだ。

そろそろ寝るかとなった時ブライアンが、
「クリス、辛い時は俺がいる。
いつでも話し聞くから、我慢し過ぎるなよ。」
そう言って、本宮に戻っていった。


「ブライアン…俺はエルザが今でも好きなんだ…多分愛してる…。」

誰もいない部屋で声に出してみた。

クソ、言葉に出すんじゃなかった・・・。


「あーー、会いてえなぁーーー」


ソファの背もたれに寄りかかり上を向いて、涙が溢れないようにした。

「エルザ・・・」

必死に涙を堪え、残った酒を一気に飲み干し、目を閉じて、最後に微笑んだエルザを思い出しながら眠りについた。















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