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番外編 ブライアンの結婚
ジュリアンナ
しおりを挟む今日スペンサー王国からジュリアンナが婚約式の為に我が国に来る。
あれから何度か手紙のやり取りをしていた。
その間にジュリアンナの今の状況を知る事が出来た。
ジュリアンナは、前正妃から生まれた王女だった。
前正妃はジュリアンナを産んだ際に亡くなった。
そして側妃が正妃になった。
国王は前正妃を愛するがあまり、死なせる要因となったジュリアンナを放置したが、成長するにつれ、前正妃に似てきたジュリアンナに今更ながら構い始めたらしい。
気に入らない現正妃。
ジュリアンナにあれやこれやと裏でやっているらしい。
昔のクリスのようだと思った。
だから結婚式までこっちで王太子妃教育をする事に決めた。
向こうにいたら何をされるか分からんからな。
ソワソワしながら、馬車の到着を待っていると、クリスとフランシスがクスクス笑っていた。
「なんだよ!」
「余程、嬉しいんだな、ブライアン。」
「ホント、こんなに嬉しそうなブライアン様を見るのは初めてかも。」
と夫婦そろって俺を笑っていた。
だって好きな女にようやく会えるのだから、喜んだって良いだろ!
「別に嬉しい訳じゃない!」
「あ、照れてる!」と兄夫婦は俺を笑う。
「ほらほら、馬車が来たわよ!」とフランシスが顎で指す。
フランシスとクリスは幼馴染みの頃のように喧嘩しながらも仲が良くなった。
そして、ジュリアンナが来た。
馬車から降りたジュリアンナが俺を見つけた。
「我が国にようこそ。ブレイク国王太子ブライアンです。」
「スペンサー王国から参りました。第一王女ジュリアンナでございます。よろしくお願いします。」
クリスとフランシスも挨拶を終え、俺はジュリアンナをエスコートした。
「久しぶりだな、元気だったのか?」
ジュリアンナの微かに震える華奢な手が今までの生活が伺えるようで切ない。
「元気だけが取り柄なの。貴方こそ元気だったの?」
「俺も元気なのが取り柄なんでね。」
「そうね、元気そうだわ。」
「緊張してるのか?」
「してるわよ!私、あまり人前には出ないし、エスコートもされた事ないし、それも・・・」
「それも、なんだよ?」
「なんでもないわよ!」と顔を真っ赤にしたジュリアンナが頰を膨らませながら俺を睨んでいるが、それはそれで可愛い。
「可愛い顔で睨んでも怖くはないぞ。」
「か、か、可愛いって⁉︎」
「お前は可愛いよ。」
「あ、あ、貴方って、ホント、意地悪よね!」
「本当の事を言ってるだけだ。でもお前の手紙も意地が悪いぞ!」
「貴方が喧嘩をふっかけてくるんでしょ!」
「お前が先にふっかけてきたんだ!」
「ブライアン様とジュリアンナ様は仲がよろしいんですね。」
「ホントだな、いつの間にこんなに仲良くなったんだか。」
と後ろで俺達を揶揄うクリスとフランシスを睨む。
「うるさいぞ、お前達!」
俺とジュリアンナは父上との挨拶を済ませ、ジュリアンナを王太子宮の王太子妃の部屋へ案内した。
荷物は既に送られて来ていたが、恐ろしく物が少ない事に驚いた。
すぐにドレスや小物、必要最低限の物を用意させていた。
ジュリアンナの侍女も一人しかついて来ていない。
「ここがジュリアンナの部屋になる。
あのドアを開けると俺達の寝室だ。
その向こう側が俺の部屋になるから、何かあればいつでも来て構わない。」
「ありがとう…こんな素敵な部屋…私が使っていいのかしら…」
「お前以外に誰が使う?ジュリアンナは俺と結婚するんだろ?」
「それはそうだけど・・・私は、その、あまり・・・」
自国で自分がどう扱われていたのか、言い辛いのだろう。
「知っている。お前が自国でどう扱われていたのか。
そんな事は関係ない。俺はジュリアンナだから結婚したかったんだ。」
「あり、がとう…ブライアン様…」
声を殺して泣くジュリアンナの姿は、幼い時のクリスと重なり、胸が苦しくなった。
きっと一人で声を出して泣く事もできなかったのだろう。
膝を抱え、誰もいないところで泣いている姿が想像出来、思わずジュリアンナを抱きしめた。
細い…。
力を入れたら折れてしまいそうなほど痩せている。
手入れしたら美しくなるであろう銀髪はパサついている。
その髪を優しく撫でた。
「ここにはお前を虐げる奴はいない。
そんな事をする奴がいたら俺が消してやる。
だからもう声を殺して泣くな。
俺がこうしてやってる時は思いっきり泣いていい。
お前は一人で今までよく頑張った。」
するとジュリアンナは声を出して泣いた。
今まで侍女と護衛の二人だけがジュリアンナを守ってきたそうだ。
食事は二人で食材から用意し、料理して食べていた。
何もかもを三人で協力して暮らしてきたジュリアンナ。
クリスの結婚式の頃にようやく父親の国王がジュリアンナの状況に気付いたらしいが、自分の父親も似たようなもんだった事を思い出した。
クリスは俺の母親に憎まれ、俺は父親に放置された。
ジュリアンナが連れてきた侍女と護衛も俺達の後ろで泣いていた。
「お前達も、よくジュリアンナを守ってきてくれた。これからは俺がジュリアンナを守っていく、安心してくれ。」
侍女のイリヤが、
「ブライアン様・・ジュリ様をよろしくお願いします。
腹黒だと思ってましたが、こんなにも素晴らしい方だったなんて・・・」
と号泣している。
腹黒って・・・。
護衛のハリーも、
「ブライアン様、ジュリ様は小さい時から苦労してきました。
どうかジュリ様をお幸せにしてやって下さい。
私もてっきりジュリ様をお飾り妻にする方だと思っておりました。」と泣いている。
おいおいお前達、酷くないか⁉︎
「まあ、最初の手紙のやり取りは喧嘩ごしだったからな。
でもジュリアンナとのやり取りは楽しかった。手紙が来なくなった時は焦った。
フラれたのかと思ったからな。」
「違いますよ、ブライアン様。
ブライアン様からの手紙を読んで熱を出したんです、ジュリ様。」とイリヤ。
「そうそう、褒められ慣れないから知恵熱だしたんですよ。
それでも返事を書くって無理したらホントに風邪ひいて寝込んだんだよな、ジュリ様。」
とハリー。
「ちょっと!ブライアン様に余計な事言わないで!」と目を真っ赤にしたジュリアンナが怒っている。
「ジュリ・・俺もそう呼んで良いか?」
と言うと、顔を真っ赤にしてコクコク頷いた。
ハア~何しても可愛い。
俺の唯一の女は、俺の唯一の家族、クリスに似た可愛らしくも逞しい王女だった。
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