王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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番の拒絶

*前話の後半部分にシリルとケネスの名前を逆に書いていた部分があった為、訂正させて頂きました。
学生時代のゴタゴタがしばらく続きますが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
********************

シリル視点


俺とケネスの関係を知ったブリジット、リジーは徹底的に俺を避けた。
俺の体質の事を説明していなかった事、お互いが“番”だと認めていた仲でのあの光景はリジーにとっては絶望しかなかったのだろう…。
俺だってリジーが例え事情があろうと他の男とヤっているのを見たら、相手を殺してリジーも殺して俺も死ぬ。
それほど“番”を愛しているし、死ぬまで離すつもりはない。
だが熱は溜まる。
番を見つけた以上他の女は抱けないし、抱きたくもない。
ケネスがいるからなんとかなっているが、12の時からの仲のケネスを今更離す事も出来ない。
いつでも俺を支え、一晩中相手をし、生活も執務も討伐も俺の隣りにはケネスがいた。
そんなケネスが大切な存在だという事は、番が出来ても変わりはしなかった。
男だからなのかケネスだからなのかは分からないが、リジーを娶るつもりでもケネスと別れようとは思っていなかった。

リジーに早く俺の体質を説明しろと父にも母にも、急かされてはいたが、そのうち、そのうちと先延ばしにしていた結果、リジーに深い傷をつけてしまった。

何度屋敷に行っても会わせてはもらえず、学院で会おうとしてもリジーの友人達に邪魔され、学院側もリジーに同情し、どこで授業を受けているのかも教えてはもらえず、帰りに会おうとしてもリジーの親友のエリザベス・ガンズ侯爵令嬢や他の女子達がリジーを囲い込み、声をかけようとすると全員に悲鳴をあげられ、その間にリジーは友人や親戚の家に帰って行き、全く会う事も話す事もできなかった。

それでも執務も討伐も無くなりはしないため、今までと変わらない生活を送りながらも必死にリジーに会おうとした。
父上にも母上にも兄にも相談した、なんとかリジーに会えるようにしてほしいと。

「討伐後でもないのに学院のサロンで淫らにもケネスと交わっていた貴方にブリジットが愛想を尽かすことに何の問題があるの?

貴方の体質云々の問題じゃないわ。
ケネスがいいならブリジットはもう解放してあげなさい!
貴方は知らないだろうけど、今のあの子の姿を見たら…私は…。
我が息子ながら貴方を許す事なんか出来ないわ!」

母は俺へ軽蔑、侮蔑の目を向け退室して行った。
兄も、
「私も今のお前には何も言うことは一刻も早い婚約解消を勧める事くらいだ。
あんなに明るかったブリジット嬢をあんなにしたのはお前だ。」と言って退室した。

「シリル…お前がケネスを手放せないのであれば私は反対はしない。
ブリジットが嫁に来るのを楽しみにしていたが番を蔑ろにするようでは婚約は解消させる。」

「待ってください、父上!俺はブリジットを愛しています!婚約を解消する気はありません!」

「ではケネスを捨てられるのか?」

「それは・・・・。でもブリジットは俺の番です…離れるなど出来ません…」

「2年生までは目を瞑るが、学院卒業と同時に結婚。結婚式前1年間つまり3年生の1年間と結婚後正式な“番”になって子供が出来るまでの間ケネスに会う事を禁止。
それにお前は耐えられるのか?」

3年になるまではケネスを置いても良いが、3年の1年間と結婚後子供が出来るまでケネスには会えない…

俺は何も言えず黙っていた。

「ハア…もう解消で話しを勧める。侯爵に話しを出した時点で解消は決定だ。
侯爵を呼ぶのは1ヶ月後。それまでにどうするか決めろ。」

そう言って父もいなくなった。

自分の部屋に戻るとケネスが待っていた。

「陛下達と話しは出来た?何か良い案はあった?」と心配気に聞いてきた。

「母も兄も何も話す事はない、婚約を解消してやれと言われた。
俺は最近のブリジットを見ていないが、だいぶ窶れているらしい…。
父は1ヶ月後にスケイル侯爵に婚約解消の話をするからそれまでにどうするか決めろと言われた…」

ケネスを抱きしめながらそう言うと、
「俺はもう充分シリルに愛された。
今度はブリジット様を愛して欲しい。
俺は何処か遠くからお前とブリジット様の幸せを祈っている。
だからブリジット様とちゃんと話し合って欲しい。
俺のせいでブリジット様を不幸になんてしないで欲しい…」と震えた声で俺に別れを伝えるケネスを強く抱きしめた。

「なんとかリジーには会って話しをしようと思う。
ケネスの事もなんとかする。
もう少し待ってくれ…頼む…リジーもお前もいなくなってしまったら俺は・・」
都合の良い話なのは分かっているが、どちらも手放すことなど出来ない。

それからもリジーに会えはしなかった。
もう直ぐ1ヶ月になる頃、リジーが倒れたと騎士科の友人のライアンが教えてくれた。
俺は急いでケネスと二人で医務室に行こうとした時、
「お前はこんな時でもケネスを離さないんだな…クズが。
俺がお前にブリジット嬢の事を教えたのは、お前が今のブリジット嬢を見ていないからだ!一度その目で彼女を見てみろ!
それでもお前がケネスを離さないのなら俺がブリジット嬢をもらう。」
ライアンは射殺すような目で俺を睨んでいた。

俺とケネスはライアンから目を逸らし、二人で医務室に向かった。

ノックをしても返事はなく、医務室に二人で入るとブリジットは真っ白な顔で頬はこけ、布団から出ていた腕は折れそうなほど細くなっていた。

確かにあれから3ヶ月は経っていてその間一度も会えてはいなかった。
だがこんなに痩せこけるほど俺達は傷付けていた事にようやく気付いた。
起こす事も出来ず、かと言って動く事も出来ず、ただリジーの窶れた寝顔を見ていた。
そこへ医務室の医務官が戻ってきた。

「蔑ろにしている婚約者とはいえ、ここまでの仕打ちはどうかと思うわ。
それに女性の寝姿を男二人が凝視してるのはどうなのかしら。
用事がないならさっさと帰りなさい。」
この医務官は話し方は女性だが歴とした男だ。
だが女子よりも女子らしいので女子にも男子にも人気だ。
特に女子の味方なので俺とケネスとリジーの関係も知っているからか言い方もキツい。

「眠っても泣くほど辛い思いをさせてるって分かってる?
この子多分眠れてもいないし、食事もろくにとっていないわ。
食べても吐いてしまうんですって。
だから少しの果物と具のないスープしか飲み込めないの。
眠ってもあんた達のセックスしている所を見るんですって。
だから眠るのも怖い。
そんな子にあんた達は二人揃って何を伝えたいの?
仲睦まじい姿を見せて引導を渡しにきたのなら後日にして頂戴!」
医務官はライアンと同じ目で俺達を睨んだ。

「違い、ます…俺は…リジーとちゃんと話したくて…ずっと会えなかったから…。
こんなに窶れてるなんて知らなかったから…。
婚約も解消されそうなのに…会えなくて…。
俺はリジーを愛してるから…。」
魔獣を先頭きって倒している俺が泣きそうになった。
俺の背中を優しく撫でるケネスの手の温かさに少し気持ちを落ち着かせていると、

「あんた達はホントに最低だな!
イチャイチャすんなら今すぐ出てけ!
二度とこの子の前に顔出すな!
1人で来る勇気もないくせに愛してるもクソもねえわ!出てけ!」
医務官が怒鳴ると、リジーが布団の中で微かに動いた。

「リジー!」

声をかけるとゆっくり目を開けた。
しばらく状況が分からなかったのか、パチパチと瞬きをした後、小さく俺の顔を見て悲鳴をあげた。

いつも「シリル」と可愛らしい笑顔で俺を呼んでいたリジーは、俺の顔を見て怯え、そして俺から距離を取る為に後退った。

生涯を共にする運命の番は窶れ、俺に対しての明確な拒絶を見た俺は頭が真っ白になり何も言えなくなった。















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