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悲しい初夜
*R15になりますが、ガッツリではなくあっさり描写になります。
気になる方は次話からお読み下さい。
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シリルは私の部屋の浴室に連れて行き、私は母の部屋に連れて行かれた。
泣いている母が私を抱きしめながら、
「こんな事なら最初から縁談なんか受けなければ良かった…私の大事な娘がこんな目に合うなら“番”なんてもの無ければ良かったのに…。
リジー、本当にいいの?これで婚約を白紙には出来なくなるのよ?」
「例えこの後婚約破棄にでも解消にでもなっても後悔なんてしない…シリルがこの後ケネスを抱くのが分かっているのに番として私はそんな事許せないから。」
一度強く私を抱きしめた後、母は小瓶を出した。
「媚薬と弛緩剤と避妊薬が入ってるわ。
殿下の事情を知ってから、いつか貴方に渡そうと思っていたの。殿下から体質の話しを聞いた後渡そうと思っていたけれど、一向にリジーが聞いた様子ではないから心配していたの。
こんな事なら私がもっと早く話してあげていればこんなに辛い事にならなかったかもしれないのに…ごめんなさいね、リジー…」
と涙を溢しながら背中を撫でる母の手は震えていた。
一言でも言葉を出せば、母の優しい手に縋ってしまいたくなるので、何も言えなかった。
母の部屋の浴室でカーラに身体を素早く洗ってもらい、浴室を出た後メイド総出で身体を磨かれたが、誰も何も言わずに唇を噛んでいる姿に泣きそうになり、私も唇を噛んだ。
薄手の寝衣を着せられガウンを羽織ってから自分の部屋の寝室に入ると、頬を赤くし口から血が垂れているシリルと兄が睨みあっていた。
シリルはまだ荒い息をしながら兄を睨んでいたが、私が来た事が分かると瞠目した後目を逸らした。
兄が、
「耐えられなくなったらすぐに呼ぶんだよ。
大きな声でも音でも何でもいいから助けを呼ぶんだよ、約束だ。」
そう言った後、頭を優しく撫でて寝室を出て行った。
ハアハアと荒い息のシリルを無視して母から渡された小瓶の中身を飲み干した。
床に投げ捨て、ガウンを脱ぎ、寝衣も脱ぎ捨てベッドに横になった。
そんな私にシリルが、
「こんな形でリジーを抱きたくないんだ…」と小さな声で呟いた。
「シリル、私は、もう媚薬を、飲んだわ…弛緩剤も、避妊薬も、入ってるので、心配いらない、らしいわ、今後、私達がどうなるか、分からないけど、私が、貴方の、番なの…番は誰にも渡さない…」
即効性なのか媚薬の効果が出てきたのか身体が熱く、息が荒くなる。
そんな私の様子を見たシリルは、一度グッと目を瞑ると着ていたガウンを脱ぎ、ベッドに乗り上がると私に覆い被さり、
「ごめん…」荒い息遣いで言った後、私達の初夜が始まった。
「リジー、愛している」と何度も言いながら、私の中に精を吐き続けているシリル。
もう何時間経ったのかも分からない。
身体もシーツも体液でぐちゃぐちゃだが、それも気にならないほど快楽にお互い溺れている。
グチャグチャと聞こえる下半身の淫らな音にも慣れた。
意識を飛ばしても身体を揺すられ、また快感に善がる声を出し始める自分にはまだ慣れない。
私が付けたであろうシリルの身体に出来た爪痕や噛み跡が激しさを物語っていた。
いつ眠ったのか、次に目覚めた時は浴室でシリルに抱かれて湯に浸かっていた。
「身体は大丈夫か?」と私の後ろからシリルが声をかけてきた。
「指一本動かせないほど疲れてる…かな…」
「俺は…リジーと結婚したい…」
「今は何にも考えたくないかな…少し眠りたい…シリル…ケネスが心配してるからもう帰って良いよ…さよなら…」
それだけなんとか言うと私はシリルに抱かれたまま眠った。
目が覚めた時、自分の部屋のベッドに一人で寝ていた。
帰れとは言ったがひょっとしたら隣りにいてくれるのではと期待したが、余程ケネスが心配なのか帰ったようだ。
涙が出た。
私の存在は何なのだろう。
何のためにシリルと結婚するのだろう。
子供を産むためだけに結婚するんだろうか。
普通の政略結婚なら側室がいる事もあるだろう。
だが私は竜の“番”だ。
竜はたった一人の番を大事に囲い、一途に愛するものと教えられたのに、そうはならなかった。
だったら私が番ではないのではないだろうか。
ただの一目惚れで、番なんて気のせいだったのではないだろうか。
多分それだ、そうじゃないとおかしい。
一人きりで寝ているベッドの上で泣き疲れて眠るまで泣いた。
シリルに抱かれてからどれくらい経ったのか分からないが、お腹が空いて目が覚めた。
呼び鈴を鳴らしカーラを呼ぶと、目を真っ赤にしたカーラが飛び込んで来た。
「お嬢様…良かった…もう2日も眠りっぱなしだったんですよ…心配しました…」と私の手を握り号泣しているカーラに声をかけようと思っても水分すら取っていなかった喉は咳しか出ない。
急いでカーラが私の身体を起こし、水を飲ませてくれた。
「2日も寝ていたのね…心配かけてごめんなさい、カーラ。目が真っ赤よ、冷やしなさいよ。」
「お嬢様の心情を思うと、私…私…」
また泣き出してしまったカーラに、
「カーラ、私お腹がペコペコなの、何か持ってきてくれる?」
ガバッと顔を上げると、「直ちにお持ちします!」と駆け出して行った。
そんなカーラに和んでいると、両親がソォーっとドアから覗いていた。
「リジー、起きたのかい?」
「リジー、入ってもいいかしら?」
とドアの隙間から二人が覗く姿にフッと笑ってしまう。
「お父様、お母様、ご心配をおかけしました。」と声をかけると二人はバーンとドアを開けると走り寄り私を抱きしめた。
「リジー…お父様は心配で心配で死んでしまいそうだったよ…」とお父様が泣き、
「リジー、頑張りましたね、これからの事は何の心配もいりませんからね。お母様が貴方を傷付ける輩どもから絶対に守りますからね。」
と勇ましい言葉をくれた。
「お父様、泣かないで。お腹は空いているけれど、2日も寝ていたから痛いところもないし、あまり覚えてもいないから。
お母様が輩なんて言葉仰るとは思いませんでした。」と笑った。
漸く両親も笑顔になり、カーラも食事を持ってきてから加わり、4人で穏やかに過ごした。
私の食事が終わると父は悲しそうな顔で、
「リジーの体調が戻ったら一度陛下も交えての今後の事を話し合う事になった…。
決してリジーに無理強いするような事はないし、陛下もリジーの気持ちを尊重して下さるから、心配いらないよ。
王妃様はかなりシリル殿下にはご立腹らしくリジーを心配されていた。
王宮に行くのは嫌だろうが、リジーは大丈夫かい?」
「お母様も行きますからね。決してリジー1人になどしませんから安心してね。
あの男がリジーに近寄ろうとしたら股間を蹴っ飛ばしてやりますからね、大丈夫よ。」
「フフ、お父様とお母様がいて下さるなら安心です。私も今後の事をよく考えておきます。」
もう少し休むと言うと2人は寝室から出て行った。カーラも隣りに控えているからと出ていくと、ベッドに横になりこれからの事を考えた。
こうなってしまえば婚約は継続されるだろう。
それを狙ったわけではなかった。
ただシリルの態度が許せなかった。
シリルを愛していたのは確かだし、将来を楽しみにしていた。
でもあの日あの光景を見てから、あれほど恋焦がれたシリルが別人に思えて、縋る事も罵る事も出来なかった。
それからは食欲も無くなり、夜も眠れなくなった。
寝ても夢の中で淫らに絡み合った2人を見続け眠れなかった。
医務室に2人揃ってきた時は、夢の中だけでなく現実でも私を苦しめるのかと恐怖だったが、私への謝罪というよりお互いの為の謝罪に感じ、急に熱が冷めた。
それまではシリルに捨てられると思い逃げ回っていたが、婚約者に謝罪する為に婚約者を傷付けた原因である人を連れてきている時点でもうどうでも良くなった。
でも心の奥底にある“番”の繋がりは、細くなりながらもまだ繋がっていると感じていた。
もう関わりたくないと思いながらも、最後に話しだけでもと思ったからシリルの長い言い訳を聞く気になった。
長いだけで全く私への愛情など伝わらなかった。
事情は理解出来たし、ケネスの献身も分かった。ケネスの存在を消してはいけないことも飲み込めた。
ただシリルのケネスへの愛しか私には分からなかった。
長い時が過ぎて薄まった竜の血がたまたまシリルは少し濃く受け継いだ。
だから細く、いつ切れてもおかしくない“番”など何の意味もないと思った。
私が教わった“番”の感覚とは全く違うのに、シリルは頑なに番に拘る。
私にだって薄ら竜の血が受け継いでいるからシリルが番だと認識出来たが、教わっていた恐ろしいほどの執着も、震えるほどの愛情もシリルに向けられはしなかったし、私にもそんな激しさの愛はなかった。
私の今後を決めた。
話し合いの席についた時、私の望みが叶ったら、絶対幸せにはなれないだろうなと思いながら眠りについた。
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