王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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“一輪の花に愛を込めて作戦”

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シリル視点



ケネスと話し合った日から俺達は正しい距離感を心掛けた。
いつも隣りにいたケネスは俺の後ろを歩くようになった。
ついいつものように話しかけ、小声でケネスに毒づかれている。
『シリル様、おふざけも大概にして下さい。きちんと前を見て下さい。話し方も砕け過ぎです、この馬鹿シリル!』
とケネスもちょこちょこ敬語が抜けるが、なんとか距離感を保ってみんなの前でもシリルは俺には敬語で話しかけ、俺もケネスを従者として扱った。
最初は周りも「喧嘩したのか?」とか「今更誤魔化しても」とか言っていたが、1ヶ月も経つとそれも少なくなってきた。
でもやっぱりリジーには会えない。
どんなにウロウロしても会えなかった。
お茶会にもまだ誘われてはいない。

ちゃんと眠れているのだろうか…
きちんと食事は取れているのだろうか…
リジー・・・会いたい・・・会いたいな・・

ある日調べ物の為に図書館に向かっていた時、遠くにリジーの後ろ姿が見えた。
咄嗟に物陰に隠れたが、どうやらリジーも図書館に向かうようだ。
どうしようかと思ったが、図書館は広い、リジーに会う確率も低いだろうと俺も時間を置いて図書館に入った。
すると、扉を開けてすぐリジーの姿が目に入ったので、焦ってすぐ近くの本棚の陰に隠れた。
リジーは窓から外を眺めているらしく、後ろを振り返る事もなく只管外を眺めていた。
景色を見ているというより何かを探しているのかキョロキョロとした後、下の方をジッと見ていた。
この時間あの辺は騎士科の生徒が訓練が終わりシャワー室に向かっている頃だ。
俺は急ぎの執務があったので今日の訓練は出ていない
え?騎士科に誰か気になる人がいるのか⁉︎
驚いてソォーっと棚から顔を出し、リジーを見た。
ずっと下を見ていたが、ため息をついた後また下をジッと見つめていた。
待ち人は来なかったのか悲しそうな顔をしていた。

クソッ、誰だ。
リジーが気になる男は誰だ!
胸が苦しくて悲しくて唇を噛んだ。
見ていられず図書館を静かに出た。
今日の訓練に出ていない奴の中にいるのだろう。
なんとしても見つけ出してやる!

急いで教室に戻り、まだ帰らなかった奴に今日の訓練を休んだ奴は誰だと聞けば、俺とライアンだけだと言われて愕然とした。

ライアン…アイツはリジーを狙ってる奴だ。
クソが!絶対お前にリジーは渡さない!
リジーは俺の番だ!

鬼気迫る勢いで駆け込んできた俺に残っていた生徒は急いで荷物をまとめ、教室から出て行った。
ケネスも残っていたのか、近寄ってきて「シリル様、どうしました?執務は終わったのですか?」
と聞いてきたので、調べ物の為に図書館に行ったらリジーがいた事、リジーが騎士科に気になる人がいるらしい事を話した。
「ハア⁉︎誰?一体誰なんだよ!」と敬語も忘れて俺に喰ってかかってきた。
「知らねえよ!それが誰か探してんだよ!」
2人で肩で息をする程興奮していたが、執務の事を思い出し、急いでまた図書館に戻った。図書館の中を静かに覗いたらもうリジーは帰ったようだ。
探していた本を見つけ、貸し出しの手続きをする為カウンターに行くと、
「先程もいらっしゃいましたよね。貴方あの子をずっと覗いてましたけど、やましい事を考えてるなら警備に連絡しますよ!」
ととんでもない事を言われたので、
「違う!俺はあの子の婚約者だ!」と言うと、
「じゃあ声かければ良いじゃないですか!怪し過ぎます!」と司書は反論してきた。

「俺は…嫌われてるから…声をかけれない…」と言うしかなかった。

「それは…なんというか…がんばれ。」と同情してくれたのか俺への当たりが優しくなった。

「あの子ね、毎日同じ時間にあそこに立ってるの。多分騎士科に好きな人がいるのね。
あそこを通るのはほぼ騎士科しかいないからねぇ。いない時は寂しそうに帰っていくの。
でもその人を見つけた時はとっても可愛い笑顔になるのよ~頑張れ!って応援したくなってしまうの!
でも今日はいなかったみたい…悲しそうに帰って行ったわよ。」
と有力情報を得た俺達は司書にお礼を言って学院の執務室へ行き速攻で執務を終わらせ、急いで帰り、ケネスにもう一度詳しく話しリジーの好きな男がライアンの可能性が高い事がはっきりした。

「一体リジーは何処でライアンに会ったんだろう…俺も会えないのに…」

「そんなの当たり前だろ、ブリジット様の周りの情報網なめんな。
俺とお前が居そうな場所、通りそうな場所、俺達が何処にいるのか把握してるから会えないんだよ。ブリジット様は周りの友達が優秀だから何も気付いてないけど完璧に俺達に会わない導線に誘導されてるんだよ。
特にあのエリザベスって子が凄い。
俺だって遠目からでもブリジット様に会いたいのに…」
と俺に呆れたようにケネスが言った。

「そうだったんだ…てっきりリジーがトコトン俺を避けてるのかと思ってた…。」

そうか…リジーは俺をそこまでは避けてなかったのかもしれないと思うと嬉しくなった。

「ちょっと!嬉しそうにすんな!ライアンのことだろ!」とケネスがキレた。
そうだ、ライアンの事だった。

「あれ?でもライアンってほとんど休む事なくないか?真面目が取り柄のアイツが今日はたまたまだが、休んだ事あったか?」
そう。ライアンは真面目で正義感のある男だ。訓練を休む事などほとんどない。
休んだのを俺は見た事がない。

「あれ?ライアンじゃなかったら今日の訓練休んだのは俺しかいないけど?」と言ったら、

「お前しかいないだろが、アホが!俺もお前が変な事急に言うから動揺して焦ったけど、よくよく考えたらお前しかいないだろうが!」
とまたキレていた。

「え?じゃあリジーは毎日俺を見る為に図書館に通ってるってこと?え?今日俺が居なかったから悲しんでいたってこと?」

「うるさいなぁ!そう言う事だよ、ムカつくけど!でもお前以外の人を見てたんじゃなくて良かった…」とホッとした顔をしていた。

「お前、リジーが好きなのに良いのかよ…。」
ケネスは号泣してからリジーを好きだって事を隠さなくなった。
身分差があるから最初からリジーとどうこうとは考えていないらしく、とにかくリジーからの信頼を取り戻し、またリジーと仲良くなりたいのだとか。
ま、俺もケネスも先が長いが。

「俺はお前の事も好きだから、好きな奴と好きな子が上手くいってくれたら嬉しい…お前といる時のブリジット様は可愛いから。」
と照れた顔で笑った。

そこから俺達の苦行が始まった。
何があっても訓練は休まないようにした。
あの場所からリジーが俺を見てくれてると思うと嬉しい反面、上を見たい衝動を抑えるのに大変だった。
我慢ならんと思い、思わず立ち止まる事も何回もあった。
その都度、ケネスが後ろから『絶対堪えろよ!一度でも見上げたら二度と図書館には来ないぞ!』と小突かれて、なんとか踏みとどまっていた。
時折討伐もあった。
以前より淡白になった俺達は、あんなに一晩中やってたのに数回射精すれば落ち着くようになった。
やっぱり半分以上性欲だったんだろう。
最近では終わった後、

「リジーだったら良かったのに…」
「ブリジット様に触りたい…」

と必ずリジーを思い出すようになったのだが、ケネスの邪な妄想に俺がキレるって感じですっかり熱を散らす行為は業務のような治療のようなものに変わった。

だが俺達が討伐に出ているのは学院生徒には筒抜けだ。
騎士科の生徒も研修として参加するから。
だから討伐の後は図書館の下を歩くのが辛かった。
それはケネスも同じで、討伐後はいつもより距離を取るようになった。

リジーは俺達をどんな顔で見てるんだろう。
また泣いてるんだろうか…。
苦しくて討伐後の訓練は早足で通るようになった。

どうにかリジーを慰めたくて考えに考えて、兄に相談した。
「ふぅ~ん、で、なんでそうなったか全部最初から教えてもらおうか。
どうやらお前とケネスの仲も変わったようだし。」と黒い笑顔で兄上に俺とケネスの事、ケネスがリジーを好きな事、リジーが放課後俺を図書館から見ている事を喋らされた。

そして兄上の婚約者のマリア嬢もいつの間にか仲間にになり、俺だとバレずにリジーをどうやって慰めるかを考え、司書をお菓子で買収し、マリア嬢命名、“一輪の花に愛を込めて作戦”が開始された。















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