王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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ケネスの怪我

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3年生になって夏季休暇前の期末試験も終わり、試験結果が張り出された。
私とエリザの1位2位を独占し、ホクホクで夏季休暇に入れると2人で喜んでいると、シリルがケネスを伴いやってきた。

「凄いな、リジー、1位じゃないか!エリザ嬢も2位か凄いな。おめでとう。」
「ブリジット様、さすがです!おめでとうございます。」
と2人に賞賛され少し恥ずかしかったが、
「ありがとう、必死に頑張ったよ。」
と言うと、シリルはよしよしとする様に頭を撫でた。

「リジー、申し訳ないんだが、明日から討伐に行かなきゃいけないんだ…ごめんな。」と悲しそうな顔をした。
チラッとケネスを見ると下を向いている。

「そっか、せっかくの夏季休暇なのに残念だね、怪我なんかしないで帰ってきてね、ケネスもね!」と態と明るく言うと、

「リジーも夏風邪なんか引かないようにな」とシリルが言うと、ケネスが、
「ブリジット様…帰ってきたらブリジット様のクッキーが食べたいのですが、頑張った褒美に頂けますか?」と珍しくおねだりをした。

「もちろん!ケネス好きだよね、私のクッキー。たくさん作っとくから怪我なんかしちゃだめだよ!」と言ったら、ケネスは嬉しそうに笑った。

2人が行くと、なんだか胸がザワザワした。
今までそんな事一度もなかった。
嫌な感じがした。

横にいたエリザに、何かお守りになるような物はないかと聞くと、だったらアミュレットでも渡せば良いんじゃない、と言われたのでエリザがアミュレットを売っているお店に連れて行ってくれた。
たくさんあるが、防御に特化したアミュレットを二つ買って、学院に戻った。
この時間ならまだ学院の執務室にいる時間だから。
執務室に行くと帰ろうとした2人がいてくれた。

突然、現れた私に驚いていたが、笑顔で迎え入れてくれた。
でも私があまりにも真剣な顔をしているから怪訝な顔をしている。

「どうした、リジー?何かあったの?」とシリルが私の顔を下から覗いた。

「すごく、すごく嫌な感じがするの…こんな事行く前に言う事じゃないんだけど、心配で…2人にアミュレットを買ってきたの…。
お店にあった中で1番防御に特化してるからどうしても渡したくて…」
泣きそうな私を抱きしめながらシリルは背中を撫でながら、
「心配してくれてありがとう、リジー。
俺だけじゃない、ケネスもいるし他の騎士団の者達もいる。
必ず無事に帰ってくるからリジーは美味しいクッキーを焼いて待っていてほしい、大丈夫、リジー?」

「うん…ごめん…忙しいのに…」

とにかくアミュレットをシリルとケネスに渡すと少し安心出来た。

「ブリジット様…私にまでありがとうございます…。嬉しいです…」と泣きそうな顔でケネスがお礼を言った。
「ケネスも絶対無理しちゃ駄目だよ、約束ね、絶対ね!」と手を取って約束させた。

少し頬を赤くしたケネスが「はい」と言ってくれた。

じゃあもう帰るねと帰った3日後、シリルとケネスが大怪我を負い、帰ってきたと連絡がきた。
どういう状況なのかと父が王宮から使者に問うが、詳しく教えてくれないが、私に来て欲しいとだけ言った。
私にだけ陛下が説明すると言っていると馬車の中で教えてくれた。
余程の怪我なのかと身体が震えた。

王宮に付いて案内された部屋には陛下と王妃様、王太子のサーシャ様がいた。

問いかけたいのをグッと堪え、挨拶を済ませると、陛下が説明してくれた。

「討伐を始めてすぐ何かおかしいとシリルもケネスも感じたそうだ。魔獣のほとんどがシリルとケネスだけを狙ってきて何とか初日は凌いだが、激しい戦闘でシリルの熱が溜まってしまった。
ケネスに頼み、処理してる最中魔獣に襲われたそうだ…他のテントではなくシリルのテントだけ魔獣は襲ってきた。
騎士団の団長がすぐ屠ってシリルとケネスを別のテントに運び治療させた。
すると別の魔獣がまたそのテントを襲いにきた。
警戒していたので怪我人は出なかったが、何か魔獣を引き寄せる物があるのではと、テント内を捜索すると、魔獣を引き寄せるアミュレットが見つかった…。」

そこまで聞くまでに嫌な予感はした。
私だけを何故呼んだのか、これで分かった…。

「ブリジット、お前がシリル達に渡したアミュレットは魔獣寄せの為のものだった…。
ブリジットが態とそんな物を渡した訳ではない事は既に分かっている。
店の店主はアミュレットを買いに来たスケイル侯爵家の令嬢が来たら“コレを売れ”と娘を人質に脅されていたそうだ。
今、脅した人間を探している。
だが王子暗殺という大事件だ…しばらくこちらで過ごして欲しいのだが、構わないか?」

優しく問いかける陛下に頷くしかなかった。

王妃様は、
「ブリジット、少し休めば良いわ、なんなら私の部屋にいれば良いわよ。」
と言ってくれた。

サーシャ様は、
「ブリジット、君にもシリルにもちゃんと毎日護衛という名の監視員が付いてるんだよ。
だからブリジットが犯人ではない事は明確なんだ。ただ君を狙ってる可能性もある。
ほぼ犯人は分かってるんだが、中々証拠を掴ませないが、大丈夫、私に任せておきなさい。」
と言ってくれた。

「シリルと、ケネスの、怪我は、大丈夫…なんですか…」
身体の震えが止まらず、声が震える。

「シリルの怪我は大した事ないの、ケネスは背中を魔獣の爪で引き裂かれて重症だけど命に関わる程でもないの。でもね…シリルが興奮してて手がつけられないの…」
と目を伏せる。

「会う、事は、出来、ますか…」と言うと、

「あまり会う事は薦められないかな。気取られないように遠くからなら大丈夫かもしれないけど…」とサーシャ様が言うと、

「ダメよ、今のシリルは獣と同じよ!ブリジットに何かあったらどうするの!」と王妃様が反対する。

「私の、せいで、そんな、事に、なって、しまった、んです、遠く、から、でも、会わ、せて、下さい…」

そして、シリルの部屋の寝室で療養しているケネスをソォーと覗かせてもらっていたら、シリルが私に気付いた。
すると私の喉を押さえて、
「お前か、お前がケネスを殺そうとしたのか!」と私の喉を締め付けた。

サーシャ様と護衛の方達が何とかシリルを抑え込んだが、
「貴様、二度と俺の前に顔を出すな!一度でも俺の前に現れたら殺す!」
と私に怒鳴っていた。

私はそこで過呼吸を起こし、意識を失くした。



それからの事はあまり覚えていない…。
喉が潰れかけ声が長い期間出すことが出来なかった。
あの時の事を思い出すと眠れず、身体が震え、涙が止まらなかった。
食事も喉のせいもあり、固形物は飲み込む事が出来なかったし、味も全くしなくなって果物すら口に出来なかった。
流動食しか喉を通らない為、全ての食材が液状の物になった。
味はしないので苦にはならないが、食事は苦痛になった。
後は男性が怖くて、陛下、サーシャ様、私を助けてくれた騎士様、父、兄以外は震え、動悸、過呼吸の発作を起こすので私の周りには女性だけになった。

夏季休暇はとっくに終わっていた。
エリザがお見舞いに来てくれて、発作以外で泣いたのは初めてだった。
家族の前では心配かけたくないので、気丈にしていたから、エリザの顔を見たら涙が止まらなかった。

私達の婚約は破棄にはならなかったが、保留となった。

あれからシリルとケネスがどうなったのかは知らない。
私がシリルの名を聞くだけで発作を起こすから誰も何も言わない。

体調が良い時は少しだけ外に出て散歩をした。
学院から暇な時にでもやれば良いと課題を貰った。その課題を全て終わらせれば卒業資格が貰えると言われ、少しずつ終わらせた。

その後、犯人は捕まったと王妃様から聞かされた。
ケイトリン様が使用人を使って店主を脅し、私が、少し痛い目を見ればいいと思ってやった事だったそうだ。
侯爵家は領地没収、男爵に降爵された。
ケイトリン様は、北の規律も寒さも厳しい修道院に入るそうだ。

「ブリジット、ここにいるのが辛いならもう侯爵家に戻っても良いの。どうする?
・・・実はね…息子が謝りたいって言ってるのよ…でも私は絶対に会わせない。
このままここにいたらいつかアイツが来そうなの…」

息子…名前は出さなかったがシリルの事だろう。

ガタガタ震える私を抱きしめて王妃様が、
「絶対ブリジットを守るわ、大丈夫、大丈夫よ」と何度も私の背中を撫でてくれた。

そして私は我が家に帰った。

冬になる頃には大分落ち着いて、出されていた課題を全て終わらせ、無事卒業認定を貰えた。
だからもう学院に行く必要はない。
あの2人を見る事もない。



自分の家で穏やかに過ごしていたある日、カーラが、

「お嬢様は…もうあのお方が他の方と婚約しても気にはなりませんか?」

と恐る恐る聞いてきた。

一瞬何の事か分からなかったが、シリルの事だ分かった。


「私がこんなんだもの…結婚なんか出来る訳ないじゃない…」

「そんな事を聞いているのではありません。
お嬢様はどう思うのかを知りたいのです。」

何だか今日のカーラはいつもと違って真剣だ。

「・・・・・分からない。あの時のが興奮状態で私だけではなく誰にでも攻撃的だったとは聞いたけど…やっぱり好意より恐怖が先にくるの…。
でも・・・の隣りに、私以外の人がいるのは見たくないかな…と思う…」

そうなのだ。私はまだシリルを嫌いになってはいない。
番だから殺されかけても嫌いになれないのか、私自身がシリルと別れたくないと思っているのか分からない…。

「急に申し訳ありませんでした…。また話しを聞いてくれますか?」とカーラが言うので、
「もちろんよ、カーラ。もしかして好きな人でも出来たの?」と聞くと、
「へ⁉︎あーーそう、かも?」
「どうして疑問系なの?おかしなカーラ」と笑った。
カーラは複雑そうな顔でアハハと笑っていたのが気になったが、あまり深くは考えなかった。














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