王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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ようやく…

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もうダメだと思った時、目の前に誰かが急に現れ、竜の焔を消した。

剣を持ち、私の前で私を助けたのはシリルだった。

「シ、リル?」と呼びかけると、ケネスも驚いたのか同じくシリルの名前を呟いていた。

「ケネス、リジーを早く移動させろ!」とケネスに叫んでいる。
思い出したの?
本当にシリルなの?
どうして急に現れたの?

軽くパニックになっていた私をケネスが竜から離れた場所に移動させた。

私はシリルから視線を外せなかった。
また急に消えてしまうかもと思って目を離せなかった。

すると急に辺りが真っ白になるほど光ったかと思うと、シリルの前に男の人が立っていた。
後ろ姿はシリルに似ている。
その人は迎えに来れなくてごめんと謝り、竜に向かって名前を呼んだ。

すると竜からまたお姫様に戻ったのを私もケネスもシリルも見ていたら、シリルが急に後ろを振り返ると真っ直ぐ私に駆け寄って抱きしめた。
「ごめん、ごめんねリジー…何だか分からないけど間に合って良かった…怪我はない?」
と言ったのを聞いたら駄目だった…。

もう2度と会わないと思った。
また私とケネスを選べないシリルに戻ったと思った…。
だからもう耐えられないと、
番と認識されたくないと思ったのに…こんな事を言われたら、離れられない。

「もう二度と会わないって思ってた…番だなんて気付かせないって思った…二度と顔なんか見たくないって思った…。
だって私の事だけ忘れたんだもの…。
でもやっぱり…シリルが好きなの…」と一気に言うと涙が止まらなかった。

「ごめん、ごめんね、ちゃんと思い出したよ、全部。この世で1番大切で大好きな奥さんの事。でも、これってどういう状況?」
と何も分かっていないシリルは喜びたいのに素直に喜べないらしい。

「竜だった人は、私に似てるけど大昔のケネスの先祖で光ってる人は大昔のシリルって事だけ頭に入れてて。後で説明するから。」

そして私達は目の前の2人を見つめた。

抱き合っていた2人は、少し離れて話し始めた。


「フリージア…済まなかった…君に酷い事をしてしまった…謝っても許されないと思っている。
“番”、イリスが死んでしまった時に急に頭に靄がかかっていたのが晴れた。
目の前にはたった今亡くなったばかりのイリスがいた…
そして君がいない事に絶望したよ…。
俺が君にどういう態度を取ったのかも記憶に残ってたからね…。

何度も此処に行きたいと願ったが、危険だから、何があるか分からないからと行かせてはもらえなかった…。
せめて花でも手向けたいと言えば、代わりに誰かを向かわせると…。
死んでからは、俺の魂を受け継ぐものが代わりに言ってくれと願ったが、誰一人行ってはくれなかった。
今世になって初めて君の魂を持つものと、番の魂を持つものが、敵対する事なく君の悲しみを無くしたいと来てくれた。
だから私の魂を持つものをここに連れて来る事が出来た・・・。
危ないところだったよ、また繰り返すところだったんだから。
だから、フリージア、一緒に、私といっしに行こう。
今度こそ君といつまでも一緒にいよう、約束だ。」

「思い、出しました…私の名前は…フリージア…貴方の名前はシリウス様…シリウス様…シリウス様、お会いしたかった・・・もう一度お会いしたかった…」

その時、私の中の何かが消えた。
私を抱きしめていたシリルもハッとした顔をした。
“番”の縁が切れたのが分かった。
怖い・・・シリルは私なんかもういらないのかもしれない・・そう思うとシリルの顔を見れない。
シリルの背中に回した手を離そうとした時、

「リジー、俺を離さないで…お願い…番じゃなくなっても俺を選んで…頼むから…」と震える声で言ったシリルに、安心した。
“ああ、シリルも私と同じ想いでいてくれた”と。

「良かった…シリルは番ではなくなった私なんかいらないのかもと思ったから…私…」

シリルがギュッと抱きしめる力を強め、
「絶対、誰にも、リジーは渡さない!リジーも俺を誰にも渡さないで…」と泣いた。

その時、
「私の魂を継ぎしもの、フリージアの魂を継ぎしもの、イリスの魂を継ぎしもの。」
と王子様が私達を呼んだ。
3人が並び、膝を付いた。

「顔を上げてほしい、其方らが居らなかったらフリージアには会えなかった。
良くぞ此処まで来てくれた。
竜力はフリージアを抑え込む為だけに私が与えた力。フリージアが居なくなれば魔獣は出ん。
竜力も徐々に消えていくだろう。
フリージアの憎しみが私と“番”の魂を継ぐものを苦しめ、フリージアの魂を継ぐものも苦しめ、いつまでもフリージアの魂が癒される事はなかった。
先程、私と“番”の縁を切った。
もう“番”が現れる事も、竜力に苦しめられる事もない。
此処に連れてくるのに膨大な力を其方から借りたからな。

シリルよ、其方の愛するそちらの最後の“番”を何度も苦しめた事、申し訳なかった。この呪いのような“縁”を誰かに断ち切らせるには、この湖に沈むフリージアの事に気付いてもらうしかなかった。
私の魂が愛するそちらの女性の、そなたへの愛にかけた、そなたとその女性が気付いてくれる事に。
何度も苦しめて悪かった…
其方達を見ているのは辛かった。
だが其方達は強かった。
其方達の絆は決して細くなる事も、傷がつく事もなかった。
ありがとう、本当にありがとう…。
其方達のお陰で私とフリージアはようやく一緒になれた。」

シリウス王子がフリージア姫の腰を抱きながら嬉しそうに言った。

「私の魂を継ぎし、ケネス。
貴方がシリウス様の“番”を心から大切に思い、大事にしてくれたから、私の声を拾ってくれたからここまで呼ぶ事が出来ました。
ありがとう、今までたくさん苦しめてしまってごめんなさい…。
たくさん泣かせてしまってごめんなさい…。

そしてイリス様の魂を継ぎし、ブリジット。
貴方にもたくさん、たくさん苦しめてしまいました。
貴方が苦しんで泣いているのは分かっていたのに、止められなかった…。
本当にごめんなさい…。
私を助けようとしてくれて、嬉しかった…。
ここまで来てくれてありがとう…。
貴方達がいつまでも幸せでありますように…。」

そういうとまた真っ白くなると私達は森にいた。
目の前にサーシャ様とガンズ様がいた。

目を瞠り、口を開けている。

「し、シリル⁉︎今、のは、一体…。
お前達は何処へ行ってた⁉︎何があったんだ⁉︎」とサーシャ様は珍しく動揺していた。

そりゃそうだ。
突然、私とケネスが消え、戻ったかと思ったらシリルがいるのだから。

サーシャ様曰く、
私とケネスはほんの数分いなかっただけらしい。
ポカンとしているうちに戻ってきたが、戻る前に急に真っ白に光って何が起こったのか分からないうちに、私達が目の前にいたのだとか。

そして魔獣の気配が消えたらしい。
今までなら大きなものから小さなものまで、魔獣の気配はあちこちからしているものらしい。
なのに今は全くそれがない。
帰る前に森を巡回しようという事になった。

そして、野営テントの中で。さっきまでの事をサーシャ様とガンズ様に説明した。

もう魔獣が出現する事はない。
シリルが討伐に出る事はない。
竜力に苦しむ事もない。

城に戻ったらもう一度詳しく陛下を含めて説明するという事で話しは付いたが、やはり湖には行こうと決まった。

サーシャ様。シリル、ケネス、私、ガンズ様、ロジェの6人だけで湖に行く事になり、残りは魔獣が本当にいないのかの確認となった。

魔獣のいない森は静かで、風で揺れる枝の音や鳥の鳴き声が聞こえる普通の森に変わっていた。
シリルに抱っこしてもらいながら湖に付くと澄んだ水の、綺麗な湖だった。
さっきの光で浄化したのかは分からないが、ここに1人寂しく泣いているお姫様はもういない。
全員が綺麗な湖に見惚れていた。

ケネスがそれを見つけた。
小さなボロボロの墓碑。
何十年、何百年も放置され、今にも崩れそうな、その墓碑はケネスが触るとポロポロと崩れて無くなった。
もうここにお姫様はいないからとでも言う様に。

私達は誰もいない湖に祈りを捧げ、来るのが遅くなってしまった事を謝った。


こうして何だか夢の中のように、長いようで短い幕切れだった。


そうして私達は家路についた。
















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