王子と従者と私〜邪魔なのは私だった

jun

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光に包まれて現れたのは…

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シリル視点



俺は図書館から帰った後も、あの窓を思い出していた。

帰りに外に出た後、図書館の窓を見上げた。
多分俺はここからあの窓を見上げた事がある。
切ない気持ちと嬉しい気持ちが俺の心に残ってる。
何度もあそこを見上げたんだろう…
ここに立ち、見上げながら悲しんだり、喜んだりしてた、きっと。
だからこの場所に来ると立ち止まってしまう。

それは間違いない。
なのにそれ以外は思い出せない…
あの子を泣かせてしまうと思うと涙が出る。

なんとか涙を止めて城に帰ってきた。


今いつものソファに座っているが、改めて自分の部屋の中を見た。何年も経っているのに何も変わっていないような気がする。
何処か変わった事がないかじっくり見回して気がついた。
“花言葉辞典”
部屋には似つかないその分厚い本は今までなかった。
寝室のサイドボードの引き出しの中には、竜力の制御の仕方と俺の字で書いてあるノートがあった。
そして異質なものがもう一つ、裁縫箱。
沢山の刺繍糸が入っていた。
執務室の引き出しには、“日記”と書かれたノート。
それらをテーブルの上に並べる。

先ず花言葉辞典をめくった。
何度も見たんだろう、折られた角を見て笑えた。
折られた箇所を開いてみれば、赤インクで線を引かれた箇所がある。
丸く印のされた花は、ハンカチに刺繍された花。花言葉は“変わらぬ愛”。

他にもたくさんの丸。
丸された花をあの窓辺に俺は毎日置いたのか…。
だから庭師が俺に話しかけてきたのか…。
そうすると、今まで交流がなかったと思っていた料理長も団長も、最近は会う事もなかったターニャも、きっと俺は彼女の為に何かをしたのだ。
裁縫箱だけが分からないが、答えはこの“日記”に書いてあるのだろう。


喉がカラカラだ。
「ケネス、お茶!」

・・・・・・・そうか、もうケネスはいないんだった。

呼び鈴を鳴らしお茶を持ってきてもらった。
お茶で喉を潤した後、ノートをめくった。

最後のページまで読み、ノートを閉じた。

ケネスには聞いて知っていた。
なんて酷い事を、と思っていた。
でもどこか他人事だった。

日記の初日は俺が学院の2年途中の日にちからだったが、俺と“リジー”に1年の時からその日まで、何があったのかが事細かに書かれていた。
学院史上最悪の破廉恥事件と言われている俺とケネスの事、“リジー”に見られて婚約が白紙になりそうだった事、“リジー”に接触禁止とリジーの視界に入ってもいけない事、図書館で何があって、俺が何をしたのかも分かった。
仲直りして、俺もケネスも嬉しくて泣いた事、“リジー”が飛び級した事の理由、俺のせいで深く“リジー”を傷付けたアミュレット事件の事、結婚した事、そして、

“リジー”が俺の“番”だって事。

皆んなが隠していた事が分かった。
どうして会わせないのかも分かった。
結婚していた事と・・・“番”の事…。

きっと一度でも顔を見たら俺は“番”と認識するんだろう。

そして…“リジー”は…“番”と認識されたくないのだと気付いた…。

そりゃそうだ…これほどの事をされてよく俺となんか結婚したと思う。
でも日記を読んでいて、俺だけではなく“リジー”にも愛されていたのが分かった、なのに“リジー”は俺には会いに来ていない。

もうダメなのかな…俺…捨てられちゃうのかな…
思い出したい…もう一度…“リジー”に会いたい…“会いたい”…

その時、ふと“会いたい”と思った時、窓辺に立つ“リジー”がクシャッと顔を歪めて窓の下にしゃがんだ光景が浮かんだ。

そうか…この顔を見たから俺は走って図書館に行ったんだ。
もう1人で泣かないでと俺はリジーに言った事を思い出した。
なのに抱きしめてるから顔が見えない。
笑った顔を思い出したい…
神様、頼む、お願い、お願いします、リジーを思い出させて…お願いしますから…。

ポロポロ涙を溢して泣いた。
声を出して大声で泣きたい、リジーに会いたい、思い出したい、お願いします、助けて、助けて下さい、と思った時、急に剣が震えた。
え?と思い、剣を抜いた瞬間真っ暗になった。その後、殺気をぶつけられ抜いていた剣を咄嗟に殺気に向けて竜力を放ちながら奮った。
目が慣れると目の前には口から煙を吐く黒竜。
どうやらなにかしらの力でここに連れて来られ、ブレスを吐こうとしていた直前に俺が来たらしい。

「「シ、リル?」」と後ろと、離れた場所から聞こえた。
後ろに人がいるなら、おそらくその人を狙ったのだろう。
遠くにいるのはケネスだ。

「ケネス、リジーを早く移動させろ!」と叫ぶと、ケネスの気配が移動したのが分かったので、俺は黒竜に集中する。
俺の後ろにいるのがリジーだとすぐに分かった。
でもその時はまだ何も思い出せてはいなかったのに。

「ア、ナタハ、オウジ、サマ?」と黒竜が喋った。

すると辺りが真っ白な光に包まれた。
思わず目を瞑ると、おれと竜の間に光る男がいた。

「ごめん、ごめんねフリージア…やっと迎えに来れたよ…遅くなってごめんね…」と光から現れた男は俺にそっくりだった。

そして黒竜は人化した。
それは…女性で、リジーだった。




その姿を見て、俺は思い出した。














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