手紙〜裏切った男と浮気を目撃した女が夫婦に戻るまで〜

jun

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家族会議 シモン視点

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俺の気持ちが落ち着いたのを確認したウィリアム先生は、今のうちに怪我の治療をするからとナーシャ先生と助手達を呼んだので、入れ替わりに俺は部屋を出た。
そして皆んながいるであろうサロンに行くと、案の定、全員揃っていた。

暗く沈んでいる全員がサロンに入ってきた俺を見て、驚いた顔をした。
知らせを聞いて駆けつけていた義父と義兄も同じ顔をしていた。

きっとさっきまでの俺の顔と今の顔つきが違うからだからだろう。

「ひょっとしてシャルは思い出したの?」と駆け寄ったアンナ。

「いや、シャルは眠ってる。今は眠ってる間に怪我の治療をするとウィリアム先生が言っていた。

ウィリアム先生と少し話しをして思った。
俺達を忘れてしまってもシャルはシャルだ。
忘れてしまったなら、俺はまたシャルに好きになってもらえるよう頑張るだけだし、俺を見て恥ずかしがるシャルをまた見れるんだから、俺はもう泣かないし落ち込まない。

思い出してくれたら嬉しいし、思い出さなくても俺はシャルから離れないし、やる事は今までと変わらない。
だから俺はもうシャルに泣き顔も悲しい顔も見せない。
シャルが笑ってくれて、ここにいたいって思ってもらえるようにするだけだって事が分かったから。」

目の前のアンナにだけじゃなく、ここにいる皆んなにも知って欲しくて全員の顔を見ながら宣言した。

「そうね…みんなで暗い顔でいたらシャルも辛いものね。
忘れてしまったとしてもシャルはシャルだもの、シャルのツボをつけば笑ってくれそう。
どう接すれば良いのか悩んでたけど、私も今まで通り、幼馴染みで大好きな親友として程よい距離感を見極めながら、シャルの負担にならないように頑張るわ。
ありがとう、シモン。
メソメソ泣いてばっかりかと思ってたけど、見直したわ、シモン!」
と褒めてるんだか貶してるんだか分からないが明るい顔になったアンナ。

「そうだな、シャルはシャルだ。
普通にしてたら思い出さなくても、そのうち俺達に慣れたらまた“バカじゃないの、エロ兄貴”って言ってくると思うぜ。
あいつの笑いのツボは俺も山ほど知っている。
あんな他人行儀な態度なんか取れないほど笑かしてやろうぜ。」
いつの間にかアンナの隣りにいた義兄は、アンナの肩を抱きながら笑った。

そこからは義両親も、俺の両親、祖父母の顔も明るいものになった。

お茶を飲んで一息ついてから、さっきウィリアム先生に言われた事を皆んなに話した。


「確かに忘れられた事は悲しいし、早く思い出して欲しいと思う。
“どうして、なんでシャルが”と思ってしまう。
だって明るく楽しそうに笑うシャルを見たいから。
名前を呼んで欲しいから。

でも今のシャルは孤児院から引き取られた子供と同じ心境だと思う。
今日から俺達が家族だと紹介され、緊張し、嫌われないように、迷惑かけないようにしようと必死な子供と同じだと思う。

だから昔のシャルはこうだった、以前のシャルはこれが好きだったとかは言わない方が良いと思うんだ。
きっとそう言えば、シャルは言われた通りにした方が良いのかなって自分を繕うと思うんだ…以前のシャルと同じ事をすれば俺達が喜ぶと思って。

専門家じゃないから何が正しいのかは分からないけど、シャルはシャルだけど今までのシャルに戻そうとするのは間違ってると思う。
何も分からないシャルに、以前のシャルを押し付けるのは止めよう。

シャルに負担をかけたくないんだ…。
不安にさせたくないし、今はこの場所は安全でシャルが居ていい場所だって事を分かってもらうのが先だと思ったんだけど…間違ってるかな。」

思った事を話すと、

「確かにそうだな…。
今シモンが言ってくれなかったら俺も以前のシャルに戻ってほしくて、昔の事を話してたと思う。
話しを聞いたシャルは困るだろうな…。
言われた通りの行動をした方が皆んな喜ぶならそうしようって思うよな…。
俺達の気持ちを押し付けるのは俺も間違ってると思う。」

「私…シャルに会ったら子供の時の事を話そうと思ってた…。
元気で明るくて皆んなの人気者だったんだよって言おうと思ってた…。

そうだよね…私がそんな事言ったら、シャルはそう振る舞おうと思ってしまうわよね…。

シモンありがとう、シャルに負担をかけるところだった…。」

義兄夫婦2人が俺に賛同してくれた。

それからは両親も義両親も祖父母も賛同してくれ、昔の事は、シャルに聞かれたら話そうという事になった。

「シャルーナに負担をかけない接し方とはどんな接し方なんだ?
わしは人の機微に疎い…気付かずシャルーナに負担をかけてしまうかもしれん…。」
と祖父が不安そうに呟いた。

「お父様はそのままで大丈夫だと思うの。
変に気を遣われる方がシャルの負担になるわ。
だからお父様は今までと同じでお願いします。

シャルが私達に気を遣ってしまうのは仕方ないと思うの、だって私達はシャルにとっては見た事もない知らない人なんだもの。
私だっていくら仲良しのマルティノ家に何らかの理由でしばらくお世話になるってなったら、気を遣うわ。

だから私は、シモンに嫁いできた可愛いお嫁さんのシャルと、末長く仲良くしましょうね、姑だけどシャルの事が大好きなのよって事を伝えていくわ。
シャルに嫌われたくないもの、最初が肝心よ!」
扇子を俺に突き出し、そう宣言する母。

「じゃあ私もその路線に乗ろう。
私だってシャルに嫌われるのは嫌だ!」
と頷く父。

「じゃあ私達はただただシャルーナを愛しているって事を伝えていくわ。
だから変に気を使う事はしない、今までのように娘を看病する家族として接するわ。
大人しいシャルも可愛いもの。」
と義母。


どう接すれば良いのか戸惑っていた。
目覚めてくれて良かった、生きていてくれただけで良かったと思ってるのに、何かが喉に詰まったように素直に目覚めた事を喜べなかったが、ようやく詰まったものが無くなり、素直にシャルの目覚めを喜ぶ事が出来た。
皆んなの顔を見ると同じなようだ。


もう嘆かないし、悲しむ事もない。

俺は、シャルに溢れるほどの愛情を変わらず贈り続けるだけだ。

そして、またシャルに好きになってもらうまで頑張るだけだ。
























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