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ニコラス第二王子になってから
二人の弟
しおりを挟むシモン視点
俺には可愛い弟がいる。
弟が生まれた時から毎日会いに行き、俺を見て笑う弟が可愛くてたまらなかった。
それは大きくなった今でも変わらない。
ついこの間まで“にいたま”と可愛く呼んでいたのに、今じゃ“兄上”なんて呼び方をするようになってしまった。
だから“兄様”と時々呼ばせている。
そんな弟が“兄様”と呼ぶ時は、大概おねだりだったりと頼み事をする時だ。
先日も、話しを聞いてほしいと言われた時も“兄様”呼びだった。
その時は自分の事ではなく、俺とアグネスの事だったが、アグネスの事で悩んでいた俺を心配したニコラスが、すれ違っていた俺とアグネスの仲を取り持ってくれた。
頼もしい弟に嬉しく思った。
その弟が深刻な顔で、
「兄様・・・大事な話しがあるんだ…。
俺とアルの事なんだけど、長くなる話しだから、兄様の時間がある時がいいんだけど、良いかな?」
と言ってきた。
ははーん、フローラの事だな…。
ニコはフローラが好きだ。
でもフローラはアルトゥールと婚約している。
あの二人は婚約者というより気の置けない友人という感じで、甘い雰囲気は欠片もない。
ひょっとしたら婚約者ニコにしたいとか言われちゃうのかもしれない。
でもこればかりは俺がどうこう出来る話ではないから、相談にのるくらいしか出来ないなぁ。
でも可愛い弟の為だと時間を作り、今、俺の執務室に三人でいるわけだが、何故執務室なのだろう。
指定されたからここにしたけど、お茶でも飲みながらお菓子摘んで話しを聞きたかったのに、二人とも真面目な顔をしたまま黙っている。
とりあえずお茶とお菓子を用意させて、執務室の応接セットのソファに座って話し出すのを待っている。
「そんなに言いづらい事なのか?」
と聞くとニコが話し始めた。
「兄様・・・今から言うことは、決して嘘じゃないって信じてほしい。」
「うん、信じるよ。可愛い弟の話だもの。」
「兄様…俺とアルトゥールは前世の記憶があるんだ…」
「ハア⁉︎」
それからのニコの話しは荒唐無稽な話しだった。
そんな事ある筈がない。
だって、目の前のニコは中身がアルトゥールで、アルトゥールの中身がニコラスって・・・そんな話し聞いた事がない。
そして二人が前世で死ぬまでの話しは、経験しなければこれほど詳しく話せる筈がないほど、リアルな話しだった。
俺とアグネスの結婚生活の話しは、先日仲直りをしていなければ、その通りの結婚生活になっていただろう。
だからニコは俺にアグネスとちゃんと話せと勧めたのだ。
そしてアルトゥールは前世の俺達を知っていたから助言出来たのだろう。
という事は二人の話しは真実ということだ。
それにしても前世のアルトゥールは最悪だな。
うん、俺もそんな男は嫌いだ。
今のニコが前世のアルトゥールだったなんて少し嫌だけど、今のニコは俺の自慢の弟だ。
うん、大丈夫。ニコはニコだ。
そしてもう一人。
アルトゥールだけど前世は俺の弟、ニコラス。
どうやら前世では“ニコ”なんて呼んでいなかったらしいが、仲は良かったらしい。
そりゃあそうだ。
俺は弟がほしかったんだから。
きっと前世でも今のように可愛がりたかったんだろうな。
でも前世のニコラスは照れ屋さんだったんだろう。俺に抱きつかれたり、撫でられたりするのを拒否ってたとみた。
うんうん、そうに違いない。
あれ?俺って弟二人いるって事にならない?
中身がニコラスのアルトゥール。
アルトゥールが中身のニコ。
おおーーー可愛い弟が二人!
「あーー、兄様?話し聞いてます?」
と首を傾げているニコ。
「うんうん、聞いてるよ。ニコの中身がアルトゥールで、アルトゥールの中身がニコラスなんでしょ。
いやさ、俺ってば弟二人もいるんだと思ったら、なんだか嬉しくなっちゃったんだよ。
うんうん、何だかアルトゥールもニコラスに見えてきたよ!
よろしくな、ニコラス!
じゃないな、よろしくな、アル!」
「えーと、“兄上”は俺の中身がニコラスだと信じた、という事でよろしいですか?」
「うん。だってアルがニコに前世の俺とアグネスの事を教えてあげたから、仲直りできたんだよ。
そんなの本当なら誰も知らない事だもの。
だから君は俺の弟、元ニコラスだ。」
二人はため息をついた。
「そんなに簡単に信じてくれるとは思っていませんでした…。
兄様、ホントに信じてます?馬鹿にしてません?」
とニコが不安げに聞いてくる。
「だからフローラに初めて会った時あんなに泣いたんだね…納得したよ。
だからニコは不幸にしてしまった罪悪感でフローラをアルに任せたのか…なるほどね。
いやね、父上が言ってた事があったんだよ。
ニコが父上に、“フローラと結婚したい”って言ってきたらエルベール公爵とガイエ侯爵に一度話してみようかって。
でもニコはそんな事一言も言わないから立ち消えになったんだけど、そういう理由があったんだ。
前世で再婚したニコラスなら幸せに出来るだろうって事ね。
そして前世と微妙に違ってきて不安になったって訳か…。
で、何が不安なの?」
ニコとアルの話しでは、前世でガイエ侯爵夫人が亡くなったのに、今世はエルベール公爵夫人が亡くなった。
前世でマルタン男爵家の名前なんて公爵家側からは聞いた事もなかったのに、今世は公爵夫妻の学生時代の友人だと聞いた。
そして、前世のマルタン男爵夫人の連れ子のルミアは、エルベール公爵家の末っ子として生まれた。
ならマルタン男爵夫人の連れ子はどんな娘なのか分からないから調べたいという訳か。
まあ、男爵が死ななければ良いだけの話しだから、今すぐ調べさせて治せる病なら手助けしてやろう、それが弟達の願いならば。
弟達の前で手を叩く。
「今すぐマルタン男爵の事を調べてほしい。
治せる病なら医者を自然にマルタン男爵家に向かわせてほしいんだ。
頼んだよ。」
するとさっきまであった気配は無くなった。
ポカーンとしてる弟達。
「フフ、驚いてるね。
国王と王太子は諜報部の“影”が使えるんだよ。
ちなみにニコにも影は付いてるからね。
危ない時には出てきてくれるけど、不埒な事なんかしたら全部見られてるから気をつけてね!」
「「知らなかった・・・」」
「前世のニコラスは知ってたんじゃないの?
知らなかったのなら余程優秀だったんだね、きっと。
第二王子は使えないけど存在はそのうち気配で分かるからね~だからいる者として行動すれば意外と便利なんだよ、ニコも覚えておいてね。
という訳で、マルタン男爵家の事は任せて。
男爵さえ死ななければ良いんでしょ?
だったらなんとかするから大丈夫。
でも、もう手遅れだったのならごめんね。
かと言って手がない訳じゃない。
再婚相手を別の人にすれば良い。
後は何が心配なの?」
二人は顔を見合わせて首を傾げている。
うん、今のところは大丈夫そうだ。
「今のところはなさそうだね。
じゃあ今からは弟達とお茶会だ!
さあ、お茶を新しいものに変えて、もっと前世の事を教えて、弟達。」
未来を生きてきた弟達。
少し変わってきたらしい今世は、お兄ちゃんが弟達を導いてやろう。
フフ~ン、楽しみだ。
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