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ニコラス第二王子になってから
意外な弔問客
しおりを挟む葬儀は小雨の中行われた。
エルベール公爵家の面々は憔悴し切っていて、当主のエルベール公爵は頬はこけ、目の下には隈が出来、目は真っ赤だった。
クリフもフローラもミリアも泣き腫らした顔だった。
その姿は涙を誘い、ご婦人方から啜り泣きが聞こえていた。
俺は護衛を引き連れてアルの近くにいた。
フローラの事を見ていると駆け寄りたくなるので弔問客を何気に見ていた。
すると見覚えのある女性が視界に入った様な気がして、その女性なのか確認する為じっくり見ていたらその女性はいた。
後ろの方にいたので気付きにくい場所にいたが、エリーナ夫人・・・今はまだマルタン男爵夫人だが、前世の義母が葬儀に出席していた。
ギョッとして見てしまったが、すぐに視線を外した。
ミリアをチラッと見ると、彼女も気付いたのか目を瞠り、前世の母を凝視していた。
エリーナ夫人もその視線に気付いたようだが、自分を見ているとは思わなかったのか、すぐに視線は外れ、他の人と同じように前方を見た。
隣りにいたアルに、
「前世の義母がいた。ミリアも気付いたようだが、どうしようもないよな。」と告げた。
「歳はエルベール公爵夫人と同じだろうから学園の時に知り合いだったのかもしれないな。
ウチの父親と従姉妹なんだろ?
後でこっちに来るかもな。」
そう言われてみればそうだ。
こっちに来るならちょっと観察したい。
男爵が生きていた時のエリーナ夫人はどんな感じだったのか、今世に子供はいるのか…。
「そういえば今世のルミアはいるんだろうか?」
と俺と同じ事を思ったのかアルが小声で俺に聞いてきた。
「どうなんだろうな…そっくりではないだろうが、似たような顔かもしれないな…」
そんな事を二人で話しているうちに、夫人の埋葬は終わっていた。
エルベール公爵家の皆んなが花束を埋葬した場所に置き、祈りを捧げ葬儀は終わった。
墓石は後日建てられるだろう。
弔問客達は挨拶を済ませて続々帰って行った。
エリーナ夫人は公爵に挨拶した後、こちらに近付き、ガイエ侯爵と侯爵夫人に挨拶していった。
侯爵と従姉妹だからだろうが、なんだか複雑だ。
あっさりと帰って行ったが、エリーナ夫人の背中をミリアはずっと見ていた。
アルが侯爵にエリーナ夫人の事を聞いていた。
「父上、先ほどの夫人は何方なのですか?」
「あ~私の従姉妹なんだ。エリーナはエルベール公爵と夫人とも学園時代は仲が良かったからな。
マルタン男爵と結婚してからはあまり付き合いはなかったようだがな。」
そうだったのか?
前世でそんな話しは聞いた事がなかったが…。
「マルタン男爵は最近体調を崩しているらしい。エリーナの所には子供が一人しかいないし、まだ10歳だからな…なんとか病気を克服してほしいがな…。」
俺とアルは顔を見合わせた。
侯爵から離れようとしたら、アルの袖を掴むマイクがいた。
「兄上、どこにいかれるのですか?」
マイク・・・。
前世では迷惑をかけっぱなしだった弟。
今は12歳だったはず。
久しぶりに会ったマイクは昔と同じで、お兄ちゃん子なんだろう、アルの袖を離さない。
「マイク、少しニコラス様とお話ししてくるから父上と母上の側にいなさい。」
とアルが言うと、少し不満げながらも袖を離した。
「はい…」
「ごめんね、少し兄上を借りるね」と言うと、俺の顔を見てハッとした後、
「いえ、ニコラス第二王子殿下、お邪魔してしまい申し訳ございません。」
少し赤い顔でマイクが俺に謝った。
可愛らしい前世の弟の頭をつい撫でてしまった。
驚いたマイクは固まってしまい動かなくってしまった。
苦笑しているアルに引っ張られ、その場を離れた。
「お前は少し王族らしくしろよ、マイクの頭を撫でるな、俺の弟なんだから!」
「あはは、ごめん、お前が弟を可愛がってくれてるようで嬉しいよ。」
耳を赤くしたアルが照れ隠しのように話し始めた。
「うるさい!それよりさっきの話しの事だ。
マルタン男爵は病に伏せってるって事は余命がないのかもしれない。
また未亡人になったエリーナ夫人が誰かと再婚する可能性は高い。
前世を鑑みて、あり得るのはエルベール公爵。
今は男爵夫人だが、元々は伯爵家の娘だ。
結婚出来る身分はある。
もし、エリーナ夫人がエルベール公爵と再婚したら、次に問題になるのは連れ子の娘の事だろう。
すでに元ルミアは公爵家にいる。
前世は男性恐怖症で今世は対人恐怖症のルミアと、連れ子のルミア擬きがどんな娘かで変わってくる。
もしルミア擬きが男性恐怖症なら、施設に入れて治療させるよう進言する。
一日中寄り添うような事は誰にもさせないよ、俺は。」
「うん、俺は間違えた。
今回は俺は何も手を出せないが、口は出す。
もし再婚するなら来年だ。
それまでマルタン男爵家が今どうなっているのか調べてみる。
なあ、アル…。
俺たちの事をシモン兄様に話しても良いと思うか?俺達だけでは解決出来ない事も出てくる。その時、兄上に相談したいんだが、駄目だろうか…。
お前も兄上や父上、母上に会いたいだろう?
俺は会えた…死ぬはずだった前世の母に会えて、俺は嬉しかった。
お前にもせめて兄上には説明して、三人で相談出来るようになったら良いと思わないか?」
眉間に皺を寄せて険しい顔をしているアルは黙ったままだ。
「こんな話し…信じるわけないだろ…。
兄上が仲間になってくれたら心強いけど、信じてくれる保証なんてない。
兄上が気味悪がってお前と距離を取るようになったらどうするんだ!もっと動きにくくなるぞ!」
「俺はそうは思わない。
お前だって分かってるだろ、兄上は優秀だ。
本当か嘘かが分からない人じゃない。
もし信じてもらえなくて嫌われても、その時はその時だ。
でも俺は兄上を信じてる。
本当はお前も信じてるだろ、アル。」
俯いたアルがしばらく考え込んだ後、
「分かった・・・話してみよう。」
三日後、俺達は兄上に全てを話すことにした。
その事が吉と出るか凶と出るかは分からないが、俺とアルは覚悟を決めた。
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