帰らなければ良かった

jun

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為人

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ガース視点


シックス先輩が執務室に駆け込んできた。

「済まんガース、話しを大きくしてしまった…」

と言って辺境伯がきた事を聞き、すぐさま二人で団長の元へと走った。
そして、先輩が初めから全て説明してくれ、何故そんな事になったか分かった。

要はめんどくさくなったラルス団長が手っ取り早い方法を取ったのだろう。

「エドワード団長、申し訳ございません。俺が軽い気持ちで妻の話しを団長にしてしまったが為に、話しを大きくしてしまいました、本当に申し訳ございません!」

「シックス、気にするな、こっちが勝手にやってた事にラルスやシックスが手伝ってくれていたのだから、礼を言うのはこちらだ。
ありがとうな、シックス。」

「エドワード団長の爪の垢を煎じてウチの団長に飲ませたいです…あの人は事を面白くしようとするばっかりで…」

「シックス、とにかくガランド様と相談するとしよう。悪いがどのお茶会に行ったら一番効果的なのかサンディ殿に聞いてもらえるか?」

「「え?エドワード団長行くんですか?」」

「ああ、ガランド様が知ってしまったのなら動くしかあるまい。それに脅しておいたらそれ以上噂もしまい。」


結局団長もラルス団長の案でいく事にしたようだ。



「エド、入るよ」と言ってラルス団長が辺境伯を伴い、やってきた。

「じゃあ、俺達は戻るから!」
と言ってシックス先輩を回収して帰って行った。

「エドワード、話しは聞いた。さて、どれくらいウチの奴らを連れて行こうか?十人では足らんか?」

「お久しぶりです、ガランド様。
お手間をおかけし、申し訳ございません。数はそれで十分です。
シシリーとブライアンも連れて行きたいと思っているのですが、よろしいですか?」

「二人の仲を直接見せつけてやれば納得するだろう。二人には詳しい説明はいらん、お茶会に参加させてしまえ。そこへ俺達が迎えに行けば良いだろう。たまたま寄ったのだとでも言ってな!」

「はい、了解しました。」

嘘⁉︎そんなんで良いの?

 
短い会談は終わった。
辺境伯はシシリーに会いに一番隊の執務室へ行くと言い、俺を執務室まで案内させた。

「ガース、シシリーやブライアンが大変だった時、お前が執務のフォローをしてくれていたと聞いた。済まなかったな、ありがとう。」

「いえ、可愛い後輩達ですから、そんなのは当たり前の事です、ガランド様からお礼をいただくほどではございません!」

「エドワードやラルスは目に見える形で動いて皆に賞賛されるが、お前やシックスは裏方として団長達を支えていたのだ、礼の一つでは足りないくらいだぞ。」

ヤダ、泣きそうだ。

そうなのだ、この人、人たらしなのだ。
そして、シシリーを育てた実績もある良き父なのだ。
国王の次に力を持っていると言われている。
辺境伯には我等騎士団をも凌ぐ「オニキス騎士団」がある。
「オニキス騎士団」は実力が有れば誰でも入団資格はあるが、簡単には入れない。
辺境伯が一人一人と面談をして合格しなければ入団は出来ない。
後は辺境伯が人材を見つけ入団させる事もある。それが子供でも。
そんな「オニキス騎士団」はもれなく全員、辺境伯を団長としてだけでなく、父として、兄として、師匠として慕っている人の集団なのだ。
その辺境伯が愛してやまないシシリーが刺されたと聞いた時の辺境伯は凄かった…。

騎士団を引き連れ、殺気を全員が放ちながら馬を駆けて来たのだから、戦争が始まるのかと、各地から問い合わせが殺到した。

陛下との謁見の際、あまりの殺気にあのファンハイド卿ですら、冷や汗が出たとか出ないとか。
ま、娘が犯人だったのもあるだろうけど。

とにかく敵に回したら大変だが、味方についたら怖いものはない。


「ガランド様、ここです。」

「忙しいのに済まんな、ありがとうガース。」

「いえ、ごゆっくり。」


そう言って別れたが、執務室の中からは、

「シシリーーーーーーーーーー!」

と地響きするほどの声量で叫んでいる辺境伯に耳を塞いでいるであろうシシリーとヤコブの姿が想像でき、笑ってしまった。












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