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供物
しおりを挟む号泣事件から周りの様子が少し変わった。
何故かロイを見かけると、
手を合わせて拝む者、
こっそり柑橘類を渡そうとする者、
図書館に行けば、
「初めての出産 コレで貴方もママの仲間入り」なるものをオススメする者。
ロイ…誰か妊娠させたのだろうか…
ロイはガン無視しているが、こっちは気になって仕方がない。
今日は一人になりたいなぁ
「なんで?」
巻きついているロイが聞いてくる。
「何が?」
「一人になりたいって言ったよ。どうして?」
口に出してしまったらしい…。
「・・・・」
「・・・・」
圧が凄い…瞳孔開いてるんじゃないだろうか?
胸が苦しい…。
「ロイは…隠し子がいるの?」
「ハア?!どういうこと?」
みんなの反応を説明する。
どうしてみんな妊婦さんが喜びそうな物ばかり差し入れようとするのか理解出来なくて、
ひょっとしたらロイが誰かを妊娠させたのではないかと…。
「あ~それね、ちょっと待ってて!」
ロイが居なくなりポツンと一人で立っていた。
ロイがいないとなんだか寒いし淋しい。
ロイが誰かを連れて来た。
「久しぶり、リリーちゃん!」
「お久しぶりです、ルイジェルド殿下」
何故、殿下?
「説明して。早く!」
「なんでオレが?」
「いいから早く!」
「お前が説明すればいいだろ!ま、仕方ない、可愛いリリーちゃんの為だ。」
「可愛いってお前が言うな!」
「はいはい、じゃあ説明しよう、リリーちゃん。
先日の『リリーナ号泣事件』の時に食堂にいた生徒が微かに聞こえた、
[ロイ、産む、母]の単語を推理して、
人外と思われているロイが、
とうとう子供を身籠った!
と勝手に解釈して今に至る。
理解出来たかな?
こんな、リリーちゃん以外は羽虫とでも思ってる奴が、他所の女性に手を出すわけないでしょ!だってどうて「殿下、ありがとうございました。簡潔な説明、さすが王族の一員です。そして、余計な事言うな!」
「お前な~もうちょい敬えよ~オレ第二王子だぞ!」
「さあ、生徒会に戻って執務に戻って下さい。わざわざありがとうございました。」
「ハイハイ、じゃあまた、リリーナちゃん!」
「はい、お仕事頑張ってくださいね。」
行ってしまわれた…。
「リリー、今の説明で理解出来た?」
「なんとなくは…私の思い込みで発した言葉が今の状況を作ったってことなのね…。」
「これで安心できた?」
「うん、ごめんね、ロイ。でもみんな誤解したままだよ。いいの?」
「構わないよ、リリーが安心出来たならそれでいいよ。」
ロイは小さな頃から私がいつでも盾になり守ってきたつもりだけど、いつの間にか身長も抜かれ、身体も鍛えてたくましくなった。
ただ、ビカビカ虫だけが弱点だ。
私の不安をあっさり無くしてくれたロイの為に早くビカビカ虫をなんとかしなければ!
決意も新たに、教室に戻ろう。
反省文はこりごりだ。
********************
愛でる会 緊急連絡
先日のロナルド様懐妊情報は誤報!
懐妊は誤報!
会員の供物を見て、リリーナ様がロナルド様の浮気と捉え、悲しまれている。
至急供物の停止。
速やかに供物の回収、各自行動を改めるよう気をつけるべし。
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こうしてロイ妊娠の噂はその日のうちに抹消された。
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