私の婚約者の苦手なもの

jun

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仲直り

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ロナルド視点



僕は、隠密からリリーの様子を聞いて、
堪らない気持ちになった。


タニヤが嫌すぎて、リリーに何も話していなかった…。



昨日、遅くてもリリーに会いに行けば…

理由を話して、一緒に登校は出来ない事、
タニヤと登校するのは一日だけだという事、

ちゃんとリリーに説明しておけば、リリーに悲しい顔をさせる事なんてなかったのに。


下を向かせる事もなかったのに…。


隠密は、
朝の事だけではないのではないか、と言っていた。

ひょっとしたら昨日見かけた金髪は、
リリーだったのではなかったのか?

リリーは、僕とタニヤを見て、誤解していたのかもしれない。

昨日から気にしていたとしたら、

今朝、僕がその子と登校して来た事を見たリリーが、
ショックを受けるのは当たり前だ…。


それに、
いつも一緒にリリーと食べていた朝食も、
タニヤが嫌で、行けない事だけを伝えた。

リリーはどんな顔で朝食を食べたのだろう…

登校してきて、女の子といる僕をどんな顔で見ていたのだろう…

俯いていた時、

飛び出した時、

木の陰で膝を抱えていた時、


きっと…悲しい顔をさせていたのだろう…


昨日のカフェで僕を見た時から。


ごめんごめんごめんごめん、リリー。

すぐ行くから、泣かないで。





そして、ワソニック家に着いた。




玄関まで、出迎えてくれたリリーを抱きしめた。

「ごめんごめんごめんごめん、リリー、ごめん…悲しませて、悲しい顔させてごめん。」


「私こそごめんなさい、ロイの話も聞かないで逃げちゃった…」


「違う!リリーは悪くないよ!」



「まあまあ、仲良しね。
とりあえず、そんなとこにいないでお部屋で話しなさい。

ロイ君、リリーと話しが終わったら、私達にも話しを聞かせてもらえる?
昨日から私達も、ロイ君の事心配してたんだからね。」

「そうだぞ!父様母様と呼ばせている以上、私達は家族なのだからな!」


と言って、母様と父様は僕達を二人きりにしてくれた。





リリーの部屋で、並んで二人で座っている。
もちろん、扉は少し開けてある。

「リリー、僕の話、聞いてくれる?」

「うん」

「リリーが熱を出して寝込んでた時に、叔父家族が家に来たんだ。
叔父上、最近再婚して義理の娘が出来て、その娘が、僕達と同じ学院に通う事になったんだ。

それで家の別邸に移ってきたんだけど、
街の事を知らないから、学院で使う物を買う為に母上と僕とその子と三人で街に行った。


その子は礼儀を知らない、所謂僕の大嫌いなビカビカして臭い、ベタベタ触ってくるような女なんだ。

馬車の中で、母上とその子が言い争いになった。

そのせいか母上の具合が悪くなってカフェに入ったけど、治らなくて母上がお手洗いに行ってから帰ろうってなったんだ。
外で母上を待つ為に先に店から出た。
そこを、リリーに見られたんだと思う。
違う?」


「多分、そう。
私もお母様と買い物に来てたの。

お茶でも飲もうってカフェに行ったけど、混んでたからすぐ出ようとしたら、
ロイに似た人が見えたの。

多分お母様はあの時、ロイだと分かって私を外に出したのね、

女の子と一緒にいるロイを見せたくなかったから。

外に出た後もお母様は私をお店から離そうとしてた。

その時、ロイが女の子と出て来て・・・

私、驚いてしまって…

お母様が屋敷まで連れて帰ってくれたけど、あまり覚えてないの…


次の日、ロイは来なくて・・・

登校したら、ロイは女の子と一緒だった…

私と朝食も食べないで、

私と登校しないで、

どうしてって思ったら、ロイの顔を見れなかった…

ごめんね、私、話も聞かないでロイから逃げた。ロイを傷つけた…ごめんなさい…」


「僕こそごめん、
ちゃんとリリーに話せば良かったのに、
自分の事でいっぱいになってた。

悲しくさせてごめん、
もう悲しい顔なんてさせないから。」

「うん、もう謝らないで。」

「明日はリリーと登校するからね」

「もうその子と登校しなくていいの?」

「初日だから今日だけ。明日からは勝手に行くよ、いや、行ってもらう!」

「良かった。

トリーちゃんにも心配かけちゃったから、
明日報告しなきゃ!」

「トリーって誰?」

「カトリーヌちゃんだよ。
ロイは・・・
隠密って呼んでるのかな?」 


「隠密…がリリーは朝の事だけじゃないはずだって言ってくれたから気がついた。
昨日、リリーに似た人を見かけた事。
リリーの側にいてやれと言われた。
隠密には助けてもらってばっかりだな。」


「トリーちゃんが来てくれなかったら、あそこにずっと蹲ってた。

帰っていいって言ってくれたから、
今、ロイと話せてる。

トリーちゃんがいてくれて良かった…。」


「隠密は、リリーの事をとても心配してた。

僕に負けないくらいリリーの事が好きなんだね。

リリーの事を話す時、辛そうな顔をしてた。」


「今度、トリーちゃんにお礼しなきゃね!」

「そうだな。
僕達の絵姿でも送れば喜ぶぞ、多分。」

「あはは、喜びそう~」



「さあ、父様達の所に行こう。僕も少し話したい事があるんだ。」

「うん」


二人で手を繋ぎ、お父様達の所へ向かった。













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