私の婚約者の苦手なもの

jun

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サイモン視点


ロックハート家に到着した。
もうすっかり寝入ってる時間だ。

僕が門番に殿下が来た事を告げる。

門番は驚いて屋敷の中に行く。
すぐに執事が出てきた。

「ルイジェルド殿下が違法薬物の件でロックハート男爵に面会を求めている。
男爵の許可はいらない。
抵抗なきようお願いします。」

と言って屋敷に入り、寝室に向かう。

ノックも無しに扉を開ける。

「ルイジェルド殿下が違法薬物についてロックハート男爵にお聞きしたい事がある。
速やかに着替え、面会されたい。」

「こ、こんな夜中にどうされたのですか?」

「ロックハート男爵、薬草の事は知っている。話しを聞きたい。
夫人の現状も知っている。
手荒な事はしたくない、我々はここから出ないが背を向けるのでそこで、着替えを。
夫人は女性騎士を付ける。」
と殿下が伝える。



着替えが済んだ夫妻は、
「殿下はもうお分かりなのですか?」
とロックハート男爵が聞いてきた。

「ああ、大体は知ってる。隠し部屋のこともな。」

「部屋の事も…。
申し訳ございませんでした。すべて私がやった事です。妻は何も分からないのです。私が止められなかったのが悪いのです。」

「お前が悪いのは知っている。謝罪するのは当たり前だ。
だが一番悪いのは、何も悪くないロザンナ夫人を何年も憎み続けた男爵夫人だろ。
精神を病んだから何をしてもいいのか?
諌められなかったのなら何故医者に見せない?専門家に診てもらえば良かったではないか。
医者を嫌がったのであれば王都から離れて療養させるなりなんなりすれば良かったではないか。
それすらもせず、可哀想だから、不憫だからと何の関係もない、何も悪くない人間を不幸にする権限をお前らは持っているのか?
お前達夫婦が何もしなかったら幸せに暮らせた者達がたくさんいた事を知らない訳ではあるまい。
そもそもお前達の息子がロザンナに手を出したのが一番の元凶だ。
その時、きちんとした対応しておけばこうはならなかった。
息子の体裁を考えて籍を入れたんだろうが、息子が死んだら、お前らは実の孫諸共ロザンナを追い出し、歳の離れた相手の後妻にした。
それでも嫁ぎ先が良かったから幸せに暮らしてたんだ。旦那の男爵を亡くした後は平民になる準備をしていたんだ。
数ヵ月前にここの夜会にロザンナ夫人が来た事は知っているか?」

「いえ、私は知りません…」

「夜会に出るのもこれが最後だろうからと義理の息子に勧められて、滅多に出ない夜会に出席したそうだ。
その夜会がロックハート家だとは知らなかったし、気付きもしなかったそうだ、ここで働いていて、結婚までしていたのにな。

仕えている主人の息子に手を出され、味方もおらず、お前達には責められ、ここでは下を向いて生活していたから家の事はほとんど覚えていないそうだ。

そして薬を盛られた。」

「あの女が息子を殺したのです!あの女が息子を誑かしたのです!悪いのはあの女です!」

「夫人、では聞くがその証拠はあるのか?」

「証拠などなくともあの女がやった事は明白です!」

「では何故、ロザンナを雇ったのだ?雇わなければ良かったではないか?」

「私が決めたのではありません!私がいたなら雇いはしません!」

「では、息子が手を出した時、どうして辞めさせず結婚させた?」

「それは息子が責任を取りたいと言ったからです。」

「では、ロザンナは悪くないではないか?」

「息子が死んだのはあの女が原因です!」

「何故?」

「あの女が何かやったのです!」

「何かとは?」

「薬か何かを盛っていたのです!」

「証拠は?薬でも出て来たのか?何の薬を飲ませた?そう思ったのなら、届け出れば良かったではないか?」

「それは…息子が亡くなりそれどころではなかったからです…」

「息子が殺されたのであれば、その事の方が重要なのでは?」

「その時はそうは思わなかったので…。」

「では、どう思ったのだ?」

「殿下!もうやめて下さい!妻は何も分からないのです、ですからもう勘弁して下さい!」

「夫人、ロックハート家の夜会にはロザンナは何回くらい来たんだ?」

「何回も来ました!その度に薬を盛って辱めたのに、何回も何回もやってくるのです!
ですから、私も何度も辱めて・・・あら…何度来たかしら…一回来たわ…あの時笑っていて…だから…あれはいつだったかしら…二回目も笑っていて…男性と一緒にいたわ…それで…どうしたのかしら…」

「もういい、夫人。
誰か夫人を連れて行ってくれ。」

「殿下!妻は病気なのです!もう自分で何をやっているのかも分からないのです、ですから乱暴にはなさらないで下さい!」

「乱暴には扱わない、約束する。ただ拘束はするぞ。」

「・・・はい」

「男爵、夫人がああなってどれくらい経つ?」

「息子が死んでロザンナが出て行き、しばらくは普通でした。しばらくすると、息子が死んだのはロザンナが薬を飲ませたからと言い出して…。
息子は風邪を拗らせて死んだ事は妻も分かっていたのです。ですが突然そんな事を言い出して…。
息子が死んで動揺しているのだと思っていました…そのうち落ち着くだろうと。
ですが時間が経てば経つほど酷くなっていき、そのうち私も妻の言う通りなのではないかと思うようになりました…。
最初の数年は恨み言だけで何か行動を起こす事はありませんでした。
妻と夜会に行った時、突然妻が帰ると言い出し、何事かと聞いてみたら“あの女がいた”と言いました。
私は気付きませんでしたが、本当にいたのなら許せないと思ってしまいました…。
息子は楽しい事も知らずに死んでいったのに、ロザンナは夜会を楽しんでいると思ったら、妻の言う復讐に加担していました。
妻はとにかくロザンナの幸せを壊したかったようです…。
媚薬を用意し、夜会に行ってはロザンナを探していました。
しかしどこの夜会にもロザンナはいません。
招待状を出してもロザンナが来る事はありませんでした。
そのうちロザンナに似た女性は皆、ロザンナに見えてきた妻が媚薬を盛ろうとしていたので止めました。
それからは夜会に行く度にそんな事になる妻を夜会には連れて行けなくなりました。
そんな妻を宥める為に、夜会を開くようになりました。
媚薬を購入すれば私達の事がバレてしまうと思い、自分で薬草を育て、調薬するようになりました。
殿下の言う通り、妻を医者に診せ、療養させれば良かったのです…。
ですが、私は妻の願いを優先させてしまいました…。」

「じゃあ、十年以上恨み続けて、数年かけて媚薬を作ったという事か?」

「…はい」

「いつから薬を使い始めた?」

「五、六年前位からです…。ですが、薬を飲んで婚約を破棄され、それを苦に亡くなった人がいると聞いて、初めて自分がしている事の恐ろしさに気付きました…。
それからは妻に何度も言い聞かせました…ロザンナは何もしていないと、息子は病死だと、何度も何度も…。最近は夜会を開いてはいません。薬は作っていましたが、使ってはいません…。」

「分かった。だが、理解は出来ない。
お前達がやっていた事は悪質極まりない。
幸せになるはずだった者達の幸せを奪ったその責任を取らねばならない。

夫人は診察を受けてもらう。
この状況もよく分かっていないようだ。
手荒にはしない、安心して欲しい。
診察次第ではそのまま入院して、正常な心を取り戻してからの処罰でも良いと思っている。

夜会で起きた事を公にはしないつもりだ。今、平穏に暮らしている者もいる。

夜会の出席者名簿を提出してもらう。
もし、薬を盛った者を把握しているならそれらも正直に話してくれ。
こちらで被害者と内密に接触し、訴えるかどうかを確認する。
それまでは貴族牢での生活にはなるが、夫人に付いていてくれて構わない。
全員の確認が取れてから男爵には処分を下す。
重い罪になるだろう…。
以上だ。
何か質問はあるか?」


「ありません…。寛大な御配慮、ありがとうございます…。」


と男爵が頭を下げた。


「男爵と夫人を貴族牢に連れて行け。夫人は女性騎士が連れて行け。
使用人への調書は朝になってから。
但し、屋敷からは出さないように。
警備の為に騎士隊は残り、朝から調書を取ってくれ。
後は明日だな。以上だ。」

「殿下、隠し部屋の薬草はどうしますか?」

「それも明日だな。とりあえず帰ろう、疲れた。」

「殿下、お疲れ様でした。夫妻を追い詰める殿下は少しカッコよかったですよ。」

「止めろ、気持ち悪い!」

「はいはい、帰りますよ。」


そんな、会話をしながら王宮に帰った。

途中、殿下が
「そういや、魔王って誰?」
と聞いてきたので、
「母です」
と答えたら、魔王降臨の話しをさせられて、聞き終わった殿下はビビりまくっていた。
こうして魔王の臣下は増えていく…。



そして、“結婚出来る夜会”は閉幕した。















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