信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

文字の大きさ
23 / 78

彼女は悪くないけど 1

しおりを挟む


エリー視点


あいつらが大嫌いだった。
二人だけの空気感を纏い、その他は何も目にも入れず、ひたすらベタベタしている二人、

ノア・エリソン侯爵令息
ラミリア・ルーロック伯爵令嬢

周りはお似合いだと言っていたが、見るたびイライラした。

私もお似合いだと思っていた時期がある、
私の婚約者がルーロック伯爵令嬢を好きになるまでは。

それは偶然だった。
街に買い物に来ていた私の婚約者は、急な目眩と吐き気でしゃがみ込み動けなくなった。
そこへたまたま居合わせたルーロック伯爵令嬢は、侍女と護衛に彼を近くのベンチまで運ばせ、水で冷やしたハンカチを額にあてたり、水を飲ませたりと、とても親切に介抱してくれたそうだ。
馬車で家まで送るとまで言ってくれたが、さすがにそこまではと断って、お礼は改めてという事でその日は別れた。

後日、彼は伯爵家にお礼に伺い、彼女と少し話したそうだ。
具合の悪い人を放って置けなかっただけなので気にしないで欲しいと、優しく諭され、恐縮したと後日彼は教えてくれた。
それからだ。
彼は私と一緒に居てもどこか上の空。
どうしたのかと聞いてもなんでもないとしか言わない。
彼の両親に聞いても分からないと言われた。

ある日彼と街を歩いている時、急に立ち止まった。

なに?と思い、彼の視線を辿ると、そこには有名カップルがいた。
そして、彼が切なげに見つめている先にはルーロック伯爵令嬢がいた。

胸がザワっとなり彼に声をかけると、
「あの二人がどうかしたの?」
と聞くと、以前具合が悪くなった時、令嬢に親切にしてもらったと言った。
その時の彼の顔は、頬を赤らめ、明らかに恋してる顔だった。

「そうなのね、じゃあ、私もお礼が言いたいわ、行きましょう!」
と言う私を彼は止めた。

「もうお礼はちゃんと言ったし、せっかく二人で楽しんでいるところを邪魔してはいけないから。」

と悲しそうに言った。

多分、私と一緒に行きたくなかったんだろうと思う。
“私”というか“婚約者”を連れて行きたくなかったんだろう。

彼の気持ちが分かり、握った手に力が入ったが、あれほど仲睦まじい二人の姿を見せつけられれば、そのうち彼女への気持ちも落ち着くだろうし、諦めるだろうと思っていた。

それからの彼は、表面上はなんら変わっていないが、どこに行っても何をしていても、彼女の事を思っているのが分かった。
お茶をすれば、紅茶のカップをジッと見た後、フッと笑い何かを思い出している。
宝石店に行った時は酷かった。
私へのプレゼントを買う為に行ったその店で見ていたのは、私の髪の色でも瞳の色でもない、彼女の瞳の色と同じ色の宝石だった。
最後はちゃんと私の色のアクセサリーを買ってくれたが、彼の色の物を買ってはくれなかった。
それでも今だけだと我慢した。

そんなのが一年程続いた時、彼が間違えて私の名前ではなく彼女の名前を呼んだ。
たった一度、
だった一度だけど、私にはもう耐えられなかった。
彼は、すぐごめんと言ったが、気まずいのか視線を逸らした。
私は、彼に婚約を解消してほしいと告げた。
元々親同士が仲が良いから、それだけで婚約しただけなので、解消したからといって何か問題があるわけではないので、私は彼から逃げた。

その後、両家の話し合いで婚約は解消された。
最後だからと彼と二人になった時、

「ごめん。エリーを裏切るつもりはなかった。ただ遠くからでも見ていたかった。 

ちゃんとエリーと結婚する意思はあったんだ…。
傷付けてしまって本当にごめん…。」

そう言って彼は振り返らず帰って行った。

怒鳴りつけようと思っていた。
今まで我慢し続けた事を全部言おうと思ってた。
平手くらいしてやろうと思っていた。
でも、彼が本当に彼女を好きだった事を彼の口から聞いた事が、悲し過ぎて何も考えられなくなった。

彼が帰ってから、どうやって部屋に戻り、誰と何を話したか、全く覚えていなかった。

それから、あの二人を見ると虫酸が走った。

ただの逆恨み。
ルーロック令嬢は親切でした事であって、彼を誘惑した訳ではない。
そんなの分かってる。
でも、私達の仲を引き裂いたのは彼女だ。






だったら私も同じ事をしたって間違ってないと思う。

だって私達だってあの二人くらい仲が良かったんだから。


そして私の計画が始まった。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

処理中です...