私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

サイモン視点

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アラン様が攫われた。
父があんなに取り乱した姿を見るのは初めてだ。
イーガー家の裏の仕事を知ると大概の人は避け始めるらしい。
俺は、元々友人と呼べる者はいなかったので気にしていなかった。
というか、俺の世代ではほとんど知らない人間ばかりだが、学生時代にトーマスに懐かれてからは、何人かの友人が出来た。

父が学生の頃は、陛下が襲われる事が多かった。
影も活躍していたので、誰がとは分からなくても、どの家が裏で処理していたのかというのは、なんとなく分かって距離を置かれていたのだろう。
それに父は愛想がないし、目付きも悪い。
そんな父に、アラン様はトーマス同様、父に友人を増やして、父の長所を引き立ててくれた功労者なのだろう。

父の唇は噛んで赤くなっていた…。


そういう俺もアラン様が好きだ。
トーマスとリリーナちゃんの父親だとすぐ分かる、明るくて楽しい、優しい方だから。


「殿下…アラン様は大丈夫でしょうか…」

「今朝のあの雄叫びを聞いたか?」

「ええ、アレは王都にいたほとんどが聞いたでしょう」

「て事は国中に聞こえた…のか?」

「おそらく」

「あれ聞いてどう思った?」

「俺はドラゴンの事を知っていたのですぐ気付きましたが、知らなければ警戒しますね」

「一般の住民は怯えるよな」

「でしょうね。分からないものは怖いですから。」

「声だけで恐怖させる事が出来る生き物だぞ、普通は生きてはいないと思うよな。」

「そう…ですね…」

「でも、ハロルドの話しでは会話が出来るんだよな?」

「みたいですね、アラン様が説得したらしいですから。」

「なら俺はアラン殿は生きていると思う。
トーマス殿を認識し、連れて行こうとした所を説得され解放したんだろ?なら、連れて行かれたアラン殿は会話を続けているだろう。エサでないのであれば。」

「怖い事言わないで下さい!」

「最悪も頭の隅に入れとかないと万が一の時、動けないだろ!」

「それはそうですけど…。カトリーヌの時は動けなかったくせに…」

「カトリーヌの時は最悪なんて考えるのも嫌だったんだよ!五月蝿いなぁ!」

「でも、そうですね、アラン様ならドラゴン連れて帰りそうじゃないですか?」

「あり得る…城に置いてくれとか言いそう…」

「アハハハ、言いそう!なんかそう考えると気持ちが軽くなりました。」

「父上達は心配だろうな…大丈夫だろうか…」

「父でさえあんな感じですから、陛下やカイル様は心配ですね…リリーナちゃんの事も心配です…そういえば、ロナルドは?」

「まだだ。おそらくハロルドに聞いてワソニックに行ってるんだろう」

「そうですね。ロナルドも可愛がってもらっていたようなので心配してるでしょう…」

「休んでも構わないんだが、何も連絡は来ていないのでそろそろ来るとは思う」

「リリーナちゃんを置いては来ないでしょう?」

「だと思うがな…。」

「これから隣り街の対応や王都、各地への対応をどうするか考えないとダメですね。
とりあえず父が母の所へ向かったので、ハンスへ何か指示は出したとは思いますが、これからの指示を出すのを誰にするか、各地への対応を誰にやらせるか陛下から何か連絡が来そうですね。俺、ちょっと今どんな状況か見てきます。」

「ああ、父上が心配だ…見てきてくれ。」


陛下の執務室には今朝の騒ぎで指示を仰ぎに大勢押しかけているのをオスカー様が対応していた。
陛下は?と思い、覗いてみると、対応しているがどこか集中していない感じだ。

オスカー様が俺を見つけて、

「サイモン、少し後で来てくれ!」

と言われ、殿下の執務室に戻った。


「殿下、陛下の執務室は各家代表が押し寄せていました。オスカー様が対応していましたが、後で連絡するみたいですね。俺も後回しにされました。
陛下は…集中出来ていませんね…大丈夫でしょうか…」

「後で兄上と行ってみる。父上も動揺しているのだろう…」

「俺も後でもう一度行ってみます。」


殿下と各対応をどうするか話し合いをしている所にロナルドが登城してきた。
顔色が悪い。
父がここに来る前にワソニックに行き、アラン様の事を説明したらしい。
リリーナちゃんや夫人は最初は取り乱したが、今はロナルドの母のシェリル夫人が二人を見てくれているらしい。


そろそろ頃合いかと、陛下の執務室へ向かった。

途中、カイル様に会い二人で陛下の執務室に向かった。
カイル様も顔色が悪い。


執務室に行くと、陛下がカイル様を見てホッとしたのか縋るようにカイル様に詰め寄った。
カイル様が宥めていたが、陛下の動揺が治らない。

隣り街の対応の為の人員を警備隊から向かわせ、ハンスに仕切らせる事を進言した。


オスカー様も心労の為かいつもの勢いがない。

すぐ動くため、退室したが、陛下は大丈夫だろうか…


殿下に陛下はかなり心痛な様子を伝え、警備隊へ出向き、隣り町に数名行って欲しい事を伝えると、父が既に警備隊、騎士隊から五名ずつ連れて行ったようだ。ならハンスにも明確な指示を出しているだろう。

そこへハンスがチャールズ様からの情報を伝えに来た。
ドラゴンはリリーナちゃんの名前も出したらしい。
リリーナちゃんが知ったら絶対領地へ行くと言うだろう。
今は人手が足りていない。
だが、リリーナちゃんを行かせるのは危険だ。
秘密にした方がいい。
一応、陛下には報告するが、陛下は行かせる事はしないだろう、アラン様の為に。

殿下の執務室に戻る途中で陛下の呼び出しがあり、陛下の元へ行くと、

いい大人が絵本の話しで盛り上がっていた。
先程までの暗い空気が全くなかった。

あの後、何かあったのだろう。
オスカー様がいつもの冷静な口調ではなく、殿下のような口調で陛下達を仕切っていた。

オスカー様ってキレるとこんな感じなんだぁ…と思っている所で、オスカー様に声をかけられた。

何をしているのか聞いたら、ドラゴンの事など何も分からないから知り得る物全てから手がかりを探しているのだとか。

なるほど、それで勇者ね。

どこにも情報がない所から予想を立て、全ての事を迅速に決めねばならないのだから、絵本だろうがなんだろうが、参考にするしかない。

俺を呼んだのは、ワソニック領地と此処との連絡を迅速にする為、影を使いたいとの事だ。
なので、引退したすぐ動ける、ウチの執事、セバスに任せようと思い、陛下に引退した影を使う事にすると告げ、
リリーナちゃんの事も伝えると、滅多にいないリチャード様が人手がたりていないのだから手伝ってもらうのも有りだろうと言うと、
カイル様と陛下が止めた。
お前は自分の娘を向かわせられるのかと。
リチャード様が謝罪し、リリーナちゃんの事は極秘となった。

すぐ動いてもらう為、退室し、屋敷へ戻った。



「お兄様!」

カトリーヌが父から聞いたのか、帰るとすぐに俺の所に来て、アラン様とリリーナちゃんの様子を聞いてきた。
アラン様の行方はまだ分からない事、リリーナちゃんはワソニックにマリア夫人とシェリル夫人と三人でいる事、父も向かった事、
アラン様はおそらく生きている事を伝えたが、やはり落ち着かないのだろう、行こうか迷っているので、今は家にいるように言い聞かせた。
何があるか分からないから。

セバスに、ワソニック領地にモトサンと向かい、王都との伝達を速やかにやってもらいたい事を頼んだ。

セバスがすぐモトサンの所に向かい、ワソニック領地に行く事を了承すると、また城へと戻った。

漸く、アラン様救出へ近付いてきた。


アラン様…早く戻ってきて下さい…貴方がいないだけで、こんなに大物が役立たずになっていますよ…















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