私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

ルイジェルド視点

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今日はこれからワソニック領へと出発する。

見送りに、母上、兄上、義姉上とユージン、カトリーヌが集まっている。

「母上、行って参ります。」

「ルイ、気をつけてね。イアンをよろしくね。」

「ルイ、お前は大丈夫だろうが、父上は嫌われる可能性がある。気をつけろよ。」

「ルイジェルド様、お気をつけていってらっしゃいませ。ユージンと無事の帰還を待っていますね。」

「ルイ様、どうかお気をつけ下さいませ。
リリー様にもマリア様にもよろしくとお伝え下さい。これをお持ちなって下さい、お守り代わりです。」
と刺繍が施されたハンカチを渡された。

「みんな、行って参ります。
カトリーヌ、ありがとう、行ってくる。」

と抱きしめ、馬車に乗った。

父上とカイル殿、俺とロイの二台の馬車、荷物も最低限にし、護衛はハロルド、ハンス、騎士隊から五名、途中からワソニック領にいるセバスとモトサンが合流する。

「ロイ、良かったな、リリーちゃんにもうすぐ会えるぞ。」

「ハァ~長かった…寂しかった…枕を抱いて寝るのはもう嫌だ…」

「去年までは一人だったんだから我慢出来るだろ。」

「ルイ!二人で寝る心地良さを知ってしまったら、独り寝など出来ないからな!」

「そんなもんかなぁ…俺も結婚したらそうなるのかな?」

「ならない訳が無い!」

「そんな力強く言わなくても…。
それにしても、アラン殿はまだ目覚めないんだな、どうしてだろう?ロイは怪我した次の日には目覚めたよな?」

「あの時、途中から意識は戻ってたんだ。
だからリリー達の声は聞こえてた。
瞼が上がらないし、身体は動かせなかった。それと同じかどうかは分からないが、父様は俺よりも強く頭を打った、その辺が違うせいなのかも。ぶつけた箇所にもよるだろうし。」

「でも、夢の中でクロと話してんだから、
そのうち目覚めるだろ。」

「目覚めると信じてる。けど、長引けば父様の体力が持たないと思う…。」

「悪い方には考えるな。声が聞こえているなら、話し続けよう、それに竜は長命だ、クロが何か知ってるかもしれない、着いたら目覚めてるかもしれない、良い事だけ考えよう、ロイ。」

「そうだな、ありがとう、ルイ。」

「そういや、お前は姿絵描いてもらわなかったの?」

「俺のはリリーが持ってるし、描いてなんていわなくても誰かが持ってるから描いてもらわなくてもいい」

「うわあーースゴーーーイ」

「バカにしてるだろ!」

「馬鹿にはしてないけど、凄えな!
そういえば兄上がローリーの姿絵持ってたわ、義姉上に見せてた!」

「ハァ~。そういえば、サイモン殿は来なかったんだな。」

「兄上がいるからな。ハロルドがこっちにいるからサイモンは居残りだ。」

「ハンスは姿絵描いてもらってないんじゃないの?」

「護衛組はハロルドが紹介する。クロはかなり賢いらしいぞ、言葉も段々ハッキリしてきたらしい、楽しみだな!」

「そうらしいな、俺の事も覚えたらしいぞ、“リリー、リリー、大好き、ギュッ”って覚えてたんだそうだ。」

「何それ?」

「僕が小さい時、卵をリリーに見立てて、“リリー”って言いながら抱きついてたんだよ!」

「お前、そんな小さい時からそんな事してたの?怖っ!」

「うるさいな!僕はリリーに会ってからはリリー一筋なんだよ!」

「リリーちゃんに会う前は?」

「覚えてない!興味もない!」

「リリーちゃんは確かに可愛い。その辺には先ずいない可愛らしさだけど、後はどこが好きなの?」

「ハア?どこが?どこもかしこもだよ!」

「ごめん、もう分かった!」

「じゃあ、隠密のどこが好きか言えるか?」

「全部だよ!」

「ほーら、みんなそうなんだよ!僕は小さい時に大事な人に会っただけ!」

「リリーちゃんも好きになってくれて良かったよな。これで好きになってくれなかったらお前、どうしてたの?」

「だから五歳で婚約したんだよ!結婚してしまえばこっちのもんだ!」

「お前ってやつは…。」

「そういや、結婚式っていつだった?」

「お前、招待状出しただろ!」 

「ゴタゴタしてから見てない…かも」

「見てないんだよ!来月!」

「あ、もうすぐだ!」

「そうだよ、忘れんな!」

「ルイへの贈り物は決まっている!」

「どうせ、あれだろ?枕!」

「それは絶対だ!その他にもある、楽しみにしておけ!」

「お、何だろ、楽しみ!」



〈イアン、カイルの馬車の中〉

「この間、アイリスとヘンリーとカトリーヌに怒られた…。」

「なんで?お前何やったの?」

「いつも俺らばっかり楽しそうだって。
だから今回ははしゃぐな!って釘を刺された…俺ってそんなに遊んでるように見えるのか?」

「まあ、やる時はやってるが、やってる所は目立たんからな、ワイワイやってると目に付き易いだろ。」

「俺…頑張ってるんだけど…。」

「みんな、分かってるって。気を落とすな。アランが心配するぞ。」

「アラン、今行くぞ、待っててくれ。」

「おい、それなんだよ、見せろよ!」

「ヤダ!これはシンシアに貰ったんだ!」

「見せろって、誰の姿絵だ!アイリスに言うぞ!」

「アイリスは知ってる。執務室への持ち込み禁止になったが。」

「ハア?・・・分かった…アランだ…」

「お前にはやらない!」

「欲しいって言わないから、見せて、頼む!」

「少しだけな!」

「オオーーアランだ…アランが笑ってる…」

「だろ?良い絵だろ?」

「少し…羨ましいな…俺も欲しい…」

「これ見てるとな、アランが話しかけてるような気がして、つい話しかけてしまう…」

「涙ぐむなよ、もうすぐ会えるだろ…やめろよ…もらい泣きするだろ…」

「カイルこそ、泣くなよ…俺も泣くだろ…」


ガチャ。


「陛下、きゅうけ・・・・何?どうした!」

「ハロルド…アランが笑ってる…」

「はいはい、ほら、休憩だから降りて!」





目を赤くした父上とカイル殿を見て、皆がギョッとしたが、誰も声をかけなかった。

声をかけたら多分、めんどくさいことになるから。

父上達のテーブルを見たら、アラン殿の姿絵が真ん中に置かれていた。
それを見て、また二人は涙ぐんでいた…。

泣くなら置かなきゃいいのにと全員思ったが、誰も突っ込まなかった。


まだ先は長い…








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