一番悪いのは誰

jun

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みんなに愛されたいの

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「もう!どうしてファビオは私を好きにならないの!」

クッションを投げつけてもイライラは治らない。
こんなに長時間かけて私を好きにならない事なんてなかったのに!
ハンカチも受け取らないし、ホントにイライラする。
近衛隊の騎士もほとんど私と目を合わせないし、ハンカチを受け取らない。
副隊長のパウロにプレゼントは受け取るなと厳命されているとかで、何も受け取らないんだもの!
ほんの数人がこっそり受け取ってくれるだけ。
美形のウルーシとロレンを王太子宮担当にしたのに、ちっとも私を好きにならない。
狙っていたゾルジとレオはフェデリカに取られてしまった。
あの子は本当に嫌い。
邪魔ばかりするし、私には近付かないくせに、遠くから妨害してくる。
やっとジーノ様を好きにさせたのに、今は体調不良で後宮で静養してるっていうし、ホント、邪魔。
あの子にも私の特性刺繍のハンカチをあげようとしても、受け取り拒否。
人の好意は受け取るべきだと思うの!


私は子供の時に初めてイヴァン様に会った時、絶対この人のお嫁さんになるって決めた。だから毎日お祈りしてたら婚約者になれた。

イヴァン様と婚約出来たけど、イヴァン様のお友達のアルベルト様やロジーニ様、ファビオも素敵だったから、みんな私を好きになったら嬉しいって思った。
でも男の子は男同士の方が良いのか、なかなか仲良くなれなくて年頃になってようやく目を合わせれるようになった。
ファビオはダメだけど、目を見てお願いすると嫌々でも私の言う事を聞いてくれるようになった。
その時に気付いた。
目を合わせて“私を好きになって”と願うと、私を熱を持った目で見るようになり、私を優先してくれるという事に。
でも離れるとすぐ元に戻ってしまう。
だから私の代わりにハンカチを持ってくれたら、ずっと私を好きでいてくれるんじゃないかと思った。
刺繍のデザインも、相手の気持ちを離さないように念を込め、ハート模様に蔦が絡んでいるものにした。
一生懸命刺繍したハンカチを渡した後から、皆んなが私を大事にし始めた。
“お守り代わりに毎日持っていてね”って見つめながら言うと、常に持っていてくれた。
そして、念を込めた香水をつけ始めた私の香りを嗅ぐと余計に効果があるようだった。
だから香水を付けて、目を見てハンカチをたくさん配った。
メイドでも庭師でも侍女も渡せば、私の言う事を聞く様になった。
王太子妃教育で王宮に来る度にハンカチを配ったら大勢が私の虜になった。
結婚して王太子宮で暮らすようになって、
陛下にも王妃様にもジーノ様にもハンカチを渡すと、私の敵はフェデリカとファビオとパウロだけになった。
ファビオは敵というより私の存在をないものとしているようなので最初は無視していたが、やっぱり私を見て欲しくて何度もイヴァン様に、私専属にしてって言ってもそれだけは聞いてくれなかった。
だから陛下にお願いしようと思って、先に王妃様に陛下と二人で話しがしたいとお願いした。ハンカチを握らせ、お願いするとすぐ許してくれた。
そして陛下と二人になった所で、目を見て何回も心の中で祈った、“私だけを見て!陛下は私の物よ!”って。
それからは陛下の寝室に行くようになった。
ベッドでお願いすると、何でも言う事を聞いてくれるから後は陛下にお願いすればいいと思っていた。
だから次はフェデリカを排除しようと躍起になっていたら、いつの間にかファビオが結婚すると聞いて居ても立っても居られなくなった。
だから、邪魔なフェデリカを排除出来て、ファビオが屋敷に帰れなくなる方法を考えた。

王太子妃教育で毒慣らしの訓練をしていた。
意外と好きで結構キツイ量を飲んでいた。
何だかあの死にそうな感じが堪らなく気持ち良かった。
それで思い付いた。
フェデリカをお茶に呼んで、自分のカップに毒を入れて、王太子妃の殺害犯にしてしまおうと。そして、さすがに王太子妃が狙われたとなったらファビオを呼び戻すだろうとも思った。
もちろん本当に死ぬつもりはないが、ある程度の量の毒は口にしようとハンカチに毒を染み込ませた。
お茶を飲んだ後、咳き込む振りをしてハンカチを口に当てた時に毒を舐めた。
左程苦しくはなかったが、苦しい振りでお茶を溢し、ハンカチにお茶をかけた。
その後は計画通りだったのに、ファビオが来てから思い通りにならなくなったような気がする。
イヴァンは王妃様に侍女を頼んでくると言ったきり戻ってこないし、陛下もお見舞いに来たきり全く来ない。
パウロを籠絡しようとしてもファビオ以上にガードが固い。
イヴァンの所に行こうかと思っていた時、パウロが、
「王妃様がお見舞いに来られております。御通ししてもよろしいでしょうか。」
と聞いてきた。
急いで支度を済ませ、隣りの応接間に行った。

「リンカ、体調はどう?」

「ええ、もうだいぶと良くなりました。」

「良かったわ。貴方の侍女が捕まったなんて聞いたから心配していたのよ。
だから私のお気に入りの侍女をリンカに預けるわ。とても優秀だから安心してね。
スーザン、こちらへ。」

「はい。バーバラ様。
リンカ妃殿下、本日からリンカ妃殿下のお側につかせて頂きます、スーザン・フェイダルでございます。
誠心誠意お仕えさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。」

へぇ~王妃様のお気に入りなら間違いないわね。少しおばさんだけど、ま、問題ないわ。

「ありがとうございます、王妃様。助かりましたわ。
王妃様、陛下はどうされていますか?
陛下にお話があるんですの、呼んで頂けます?」

しっかり目を見て“お願い”してみた。
一瞬、眉間に皺が寄ったように見えたけど、
少し困ったような顔になり、
「ドナルドはしばらく忙しくなりそうなの…。
ちょっとディオリジ国の事で問題が出来てしまって、イヴァンがディオリジに行かなければならなくなったのよ。
リンカには寂しい思いをさせてしまってごめんなさいね。
私もフェデリカも顔を顔を出すようにするわ、安心してね。
執務はドナルドとジーノで片付けるし、王太子妃の執務は私がやるわ。
リンカはゆっくり静養してね。
じゃあ、スーザン、。」

そう言って王妃様は出て行った。

ディオリジと問題?何かしら?
まあ友好国だから問題って言っても大した事はないんだろうけど、イヴァン様がしばらくいないのは悲しいわ。
それに長い期間離れるのは不安だわ。
私の力が薄れてしまうかもしれないし・・・。
とにかくイヴァン様がいなくなる前に会って、私の愛情をたっぷりあげないと。
でも、その前に、

「スーザン、今日からよろしくね。
私に就いてくれる人には皆んなに渡しているの。
これ、使ってもらえるかしら。
怪我がないように、何事もなく仕事が出来るようにと、私の祈りがこもっているの。
お守り代わりに身につけていてほしいわ。」
と目を合わせてスーザンにハンカチを渡した。

スーザンは一瞬、目を細めたが、

「まあ、ありがとうございます、リンカ様!
大事に致しますわ!」
と喜んで受け取ってくれた。
これでこの人も私の思い通りね。

「スーザン、お茶を入れてくれるかしら。
王妃様がいらっしゃったから緊張したせいか喉が渇いたわ。」

「かしこまりました。」


お茶を飲んだら、イヴァンの所に行こう。

フフ、アルベルトとロジーニにももう一度私の愛をあげなくちゃ。





一人ほくそ笑むリンカから離れ、お茶を入れていたスーザンは、こっそりハンカチを袋に入れて、ため息をついた。
「ローラ様のハンカチを持っていてもこれはキツイわ…目を合わせないようにしないと。」






この後すぐ、リンカが狂気に陥るきっかけがある事など誰も知らない。















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