一番悪いのは誰

jun

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その時までは

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*しばらく更新出来なくて申し訳ございませんでした。
お待ちして下さった方々、あと数話で完結ですので、もう少しお付き合いお願いします。
最近は体調も良いので、頑張って書こうと思います!


*************************

ロジーニ視点



俺はリンカが嫌いだった。
我儘だし、すぐ泣くし、ベタベタくっついてくるのが嫌いだった。
でも6歳の時からの付き合いだからまだ我慢出来た。
これが中等部辺りに出会っていたら、絶対側になんか近付かなかった。
魅了され始めていたんだろうけど、段々リンカの馴れ馴れしさが気にならなくなった頃、初めてファビオの婚約者に会った。
紹介された訳ではない。
学園で見かけただけだ。
でもリンカみたいに派手派手しくなくて、なんか周りの空気が澄んでいるのかのように彼女の後ろに見える木々がやけに緑に見えた。

俺達は昼休みはリンカに付き合って食堂ではなくサロンで食べていた。
ファビオは婚約者が持ってくるお弁当を食べるからとサロンには来ない。
それが気に入らないリンカはよく怒っていた。
イヴァンにファビオを呼んで欲しいと頼むが、イヴァンはファビオを呼ぶ事はなかった。今考えるとイヴァンは無意識に魅了に抗おうとしていたのかもしれない。

後でファビオをリンカに近付けたくなかったからと言っていたが、魅了されていたなら何としてでもリンカの言うことを聞いていただろう。
いくらリンカがファビオを呼べと言っても上手く躱していたから、イヴァンはリンカを何処かで拒否していたんだと思う。

一度、リンカがあまりに泣くからイヴァンがファビオを昼休みに呼んだ。
俺はたまたま用事があり、昼休み遅れて合流する所だった。
サロンに向かっている途中、中庭のベンチにポツンとファビオの婚約者、ローラ・ダンゼン、伯爵家の一人娘で伯爵が溺愛している女の子が、凛とした清廉な空気感を醸しながら座っていた。

思わず見ていたら目が合った。

「こちらからお声かけして申し訳ございません。あの…ファビオのご友人のバーサ侯爵令息様ではございませんか?」

突然声をかけられ驚いたが、

「うん、そうだよ、君はファビオの婚約者のダンゼン伯爵令嬢だよね、ファビオといる所を見かけた事があるよ。何か困った事でもある?」
と答えると、
「困っているというか…いつもファビオの分の昼食を持ってきているのですが、ファビオは王太子殿下に呼ばれたと行ってしまったので、大量の昼食をどうしようかと…。そしたら侯爵令息様が遠くからいらっしゃったのが見えて、もしまだお昼を食べていませんでしたら、ご一緒にどうかな…と思ったのですが、婚約者以外の男性とは食べちゃいけないんだろうなぁとか…かと言って勿体無いし…と悩んでおりました。」

物凄く喋るけど、内容が何だかおかしくて思わず吹き出してしまった。

「ごめん、思ってる事全部口に出すから笑ってしまった。
良かったら、貰っても良いかな?お腹空いてるから。ファビオには言っておくから。」

と少し距離を取ってからサンドイッチを貰った。バスケットの中には大量のサンドイッチとデザートなのか焼き菓子も入っていた。

「うわ!凄い大量だね~ファビオどんどけ食べるの⁉︎」
と言いながら食べたサンドイッチはチキンが挟まって美味しい。
他のサンドイッチはいろんな種類の具が挟まりどれも美味しそうだ。

「食べきれないでしょうから、少し包みますので、小腹が空いたら食べて下さい。
ファビオも訓練の後にお腹が空くからと訓練後の分は持ち帰るんです。ちょっと待って下さいね。」
と俺の分とファビオの分を紙袋に入れてくれた、デザートも一緒に。

「はい。バーサ侯爵令息様の分は「あ、言いづらいだろうからロジーニで良いよ。」」

「あーそうですね、それではロジーニ様の分はこちらです。初回特典でデザートはファビオより多めですよ!」
と日に当たって何だかキラキラしてるローラ嬢を見てドキドキしてしまった。
それに初回特典って…。
「初回特典…ファビオが知ったら怒りそうだね、ありがとう。執務の休憩の時に食べるよ。」

初めて話したローラ嬢は気さくで可愛くて、何か胸が苦しくなる気持ちが何なのかはサロンに着いた時には消えていた。


魅了が解けてローラ嬢…今はギルディー侯爵夫人か…、夫人との事を思い出した。
ファビオから以前渡された夫人が刺繍したハンカチは大事に執務机の引き出しに入っていた。
勿体無くてしまってしまったんだ…。
夫人にはファビオがいたから、俺は自分の気持ちを奥底に隠した。
そんな不安定な心がリンカの魅了に抗えなかったんだろう…。

中庭にいるローラ夫人とファビオ。
倒れ込む夫人を抱き止めるファビオを見つめていた。
彼女はどんな状況でも楽しい事を見つけているようだ。
彼女を守っている“影”に妖精さんとふざけたあだ名をつけては揶揄っているのだそうだ。

彼女は凄い。
決して諦めないし、ファビオを尻に敷いているし、何より城にいる皆を彼女こそ魅了している。

そんな彼女とお茶をしている。
ファビオはいない、二人きりだ。
まさか俺まで誘ってくれるなんて思わなかった。
王族の方々だけなのかと思っていた。

「ロジーニ様、中庭以来の逢瀬でございますね、フフ」と笑うローラ夫人。

ああ、覚えていてくれた…。

「そうだね、あの時のサンドイッチは美味かったなぁ~焼き菓子も美味しかったよ。
お礼が随分遅くなってしまってごめんね。」

「あら、あのハンカチと美味しいジャムはロジーニ様からなのだと今の今まで思っておりました!
だって一度ロジーニ様のご実家の料理長が作るジャムは美味しいとファビオが持って帰ってきたジャムと同じでしたもの。」

「え⁉︎知ってたのですか?」

驚いた…ファビオにローラ嬢にお礼を渡すのが嫌で、こっそりローラ嬢の机に置いたんだ。
だから俺からとは知らないと思っていた。

「お礼を言いたかったのですが、中々お会い出来なくて…遅くなりましたが、ジャム、とても美味しかったです。我が家の料理長では再現出来なくて、また食べたいと思っていました。だからロジーニ様はジャム大瓶で今回の事は無しにしましょう!」
と笑うローラ夫人は学園で見た清廉で美しいままだ。

「ありがとう・・・夫人が毎日頑張ってるご褒美とお詫びに新作のジャムもつけちゃいます。」

「わあ、それはとっても楽しみです!次のアルベルト様のお茶会の時にロジーニ様も特別参加ですね!」

この人のこんな笑顔が見れるなら次のアルベルトには悪いが、お邪魔させてもらおう。

そしてこの見た目だけでなく中身までも美しい人が杖無しで歩けるようになった時、父が薦める縁談を受けよう。
それまでは・・・その日までは・・・。















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