一番悪いのは誰

jun

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親友の叶わぬ想い

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アルベルト視点


今日はファビオの奥方、ローラ夫人とのお茶会だ。
そして何故かその場にロジーニもいる。
ロジーニは先月のお茶会だったはずだ。
何故?
それもやけにロジーニは嬉しそうだ。

「アルベルト様、今日はお茶会に来て頂きありがとうございます。」

いかん。私からお礼を言わねばならなかったのに、ロジーニに気を取られてしまった。

「申し訳ございません、ローラ殿。
こちらがお礼を言わねばならなかったのに、気を使わせてしまいました。
体調にお変わりございませんか?」
と俺としては珍しく動揺してしまった。

「はい、元気が溢れておりますよ。ありがとうございます。
アルベルト様もお変わりございませんか?」

「はい。イヴァン様の執務も急ぎもなく最近は定時で帰る事が出来ております。」

隣りのロジーニがソワソワしているのは何故だ?

「そうでございますか・・・フフ…ロジーニ様、そんなにお勧めのジャムを渡したいのですか?」

ジャム?

「そうなんだ!このジャムは桃のジャムなんだけど桃の花びらも入ってるんだ!
紅茶に入れてもパンやマフィンに付けても美味しいと思うよ!」

ロジーニ⁉︎どうした⁉︎何故そんなにテンションが高い!

「まあ!桃の花びらが⁉︎桃は水分も多いですし、糖分も多いですからジャムを作るのは難しいんですよね~買った方が美味しいので我が家では作ってないのですが、花びらまで入れるなんて、バーサ侯爵家の料理長は優秀なんですね!」
と夫人も凄く喜んでいる。

「ジャム・・・ですか?」といえば、

「すみません、アルベルト様。一人で騒いでしまいました…。」
いやいや、もう一人騒いでいた人もいますよ。

「学生の頃、ロジーニ様に頂いたジャムがあまりにも美味しかったので、今回の騒動はそのジャムの大瓶で手を打ちましたの。
今月のアルベルト様のお茶会に特別参加して下さいとお願いしてしまって・・・アルベルト様の許可もなく申し訳ございません。
でも、ロジーニ様のお宅のジャムは絶品なんですよ!」
それは知っているのだが、学生時代とは?

「そうなんですね、私はロジーニがいても構いません。
ですが、学生時代に二人に交流があったなんて知りませんでした。」

そして明かされるロジーニの秘密。
ロジーニは女性に贈り物などした事などない。
変に気を持たせるからと、贈り物を受け取らないから。
なのにローラ夫人には贈った⁉︎
ハンカチも⁉︎
ファビオに頼まず、名乗らず机に置いた⁉︎
ロジーニが⁉︎
軽そうに見えて奥手なロジーニが⁉︎

待て待て、ひょっとしてロジーニ・・・お前…。

隣りを盗み見ると、若干頬を染め、夫人と話す様は恋する乙女ではないか⁉︎
いつからだ⁉︎魅了される前?
いや、そんな前には会っていないはずだ。
なら学園の時か?
でも俺達はリンカに魅了されていたはず。
でもロジーニはイヴァンや俺とは少し遅れてリンカに侍りだしたような気がする。

「アルベルト様?どうされました?体調でも悪いのですか?」
とローラ夫人が気遣う。
「申し訳ございません、少しボォーっとしてしまいました。昨日、今日のお茶会の事を考えていたら眠れなかったものですから。」

「まあ、それはいけません。また体調が良い時にでもお誘い致します。
今日は無理をさせてしまい、こちらこそ申し訳ございません。
でもアルベルト様とまたお話し出来て嬉しかったです。」

また?あれ?俺、ローラ夫人と話した事あったっけ?

「いえ、また誘って頂けたら嬉しいです。
次は体調を整え、ローラ殿とのお茶会を首を長くしてお待ちしております。」

「はい。ロジーニ様も今日はありがとうございました。ジャム美味しく頂きますね。」

こうしてお茶会は終わったのだが、夫人の姿が完全に見えなくなってからロジーニを問い詰めた。

「ロジーニ、話してもらおうか。お前、ローラ殿の事、「待て!言うな!言葉にしたら止まらなくなる!」」

「マジかよ…いつから?」
気付かなかった…。
魅了されてロジーニ自身もそんな淡い恋心、忘れていたんだろう。
でも夫人の健気で、ひたむきな姿を、この一年半見続けていたら、想いは溢れるよな…。

「ファビオに紹介される大分前からだったんだと思う…。
彼女の周りだけ、空気が澄んで見えた。
彼女の周りの景色だけ色が…違って見えた。」

「そんなに前から⁉︎」

「その時は自分の気持ちに気付かなかった。
ただお礼を渡す時、ファビオに頼むのは嫌だと思った・・・」
そんなの嫉妬だよ!

「まあ、ファビオが絶対離さなかったからお前に勝ち目はなかったんだろうけど、不毛な恋ってやつだな…。」

「彼女が杖無しで歩けるようになるまでは、見ていたい…と思ってる。
その後は親父の薦める相手と結婚するよ。」

「ハア~どうして依によって彼女を好きになるかなぁ~」

でもロジーニの気持ちは分かる。
もし彼女が独り身なら、俺だって立候補したい。
それほど彼女は人間的に素晴らしいと思うから。

「初めて、彼女とお昼を食べた時、ファビオがイヴァンに呼ばれていなかったんだ。
大量のサンドイッチを抱えて困ってた彼女が俺を見つけて、分けてくれたんだよ。
その時、後で食べてって俺とファビオの分をくれたんだ。で、彼女、俺のだけ焼き菓子を多めにくれて、なんて言ったと思う?」

「知らん!」

「彼女、“初回特典”だからって言ったんだ…可笑しくて…多分その時自覚したんだと思う…。その後リンカに会って、その想いも忘れてた・・・」

寂しそうに笑う親友は、少し泣きそうに見えた。

「ファビオが知ったら怒りそうだな。」

「それ、俺も言った!」

親友の切ない想いを応援する事は出来ないが、話しを聞いてやれるのは俺だけだ。


久しぶりにロジーニと酒でも飲もうかなと思う。















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