The Cross Bond Side Story

夜桜一献

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The Cross Bond Side Story Ⅱ

第十四話

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 ビルが崩落して、足場を失った前田達は下層階へと落とされる形となった。幸い、ビルは立体駐車場で空間が存在していた。黒田は故障か立ち上がる様子はない。秋山は足が瓦礫で挟まったのか、身動きが取れない。前田と広間は辛うじて動けるが、化け物も一緒に落ちた事に焦りを覚えていた。銃を構えるが、何故か化け物が見当たらない。瓦礫が動くのを見て、そこから黒い化け物が姿を現した。

「糞、銃が手元に無い!!」

「私のを使って!!」

秋山が放り投げて、前田が受け取る。すぐさま霊子銃での射撃を行い、化け物はその場から動かず防いでいる。十数秒が経過した後も、その状態は続いている。再生が追い付いているせいでダメージは薄いが消耗は見て取れる。

「・・・何やこいつ、急に大人しなったな」

「挟まって動けないとか?」

秋山がピンと来て、正解を引き当てた。そこから出るには腕を使わなくてはいけない。にも関わらず、ガードしているせいで動く事が出来ないでいる。動けなくて当然だ。

「千載一遇のチャンス!!広間、銃はあるか!!」

「ちゃんと持ってるで。後ろに移動して挟み撃ちや!!」

広間が回り込んで、背中に射撃を食らわせる。効いているらしく、悲鳴をあげて苦しんでいる。

「秋山、そこから動けるか!!」

「もう少し!!」

「動けるようになったら、パックの交換をして銃を任せる。俺は剣でこいつの首を跳ねる!!」

それで終わりに出来るはずだと信じて、射撃を続行した。


 ビルの崩落は免れたが、第一波が収まったに過ぎない。壁のひび割れは目に見えて進行しておりいつビル全体が崩壊してもおかしくない。建物自体も建築年数が経過しており7階層のビルのうち、2階層までが崩れている形になっている。化け物と戦闘を行った者達は未だビルの中に居る。エクレア・アルバーンは舌打ちをして、市民の避難を急がせた。身動きを封じられている紅葉、葵、春坂に近づく。

「我々は貴方達を妨害する為に今居る訳ではありませんわ。さっさと行ったらどうです?避難誘導と人命救助でこちらも手一杯なのですけれど」

司祭の言葉を意外に思ったのか、春坂は答えた。

「今は共闘関係にあると、信じていいんですね?」

「神に誓えば宜しいですか?おっと、奴が暴れ始めたようですわね。こちらもそちらに合わせて共闘致しますわ」

ビルが揺れて、また小さい破片が落ちてくる。

「分かった、その言葉を信じよう。とはいえ、僕は結界の維持で動けない。紅葉君と葵君頼めるかい。奴をこのビルから追い出すんだ。応援ももうじき到着するだろうから、ここで殲滅を行う。もしもの事は白虎、頼めるかい」

「誰に物を言っている。こいつは分からんが、主は保護するぞ」

「葵も守ってあげてね」

「・・・・・・・・・」

警察も到着して、崩落の危険があると市民を誘導し、大勢の野次馬を近寄らせないようにしている。橘葵は、その野次馬の中に、赤い髪の毛の見知った女の子を見つけた。隣にいつもの小姑も一緒に居るのが見える。

「あれだけ帰るつったのに、聞きゃしないんだから全く」

「ごめんね、洵ちゃん。せめてこの騒ぎが収まるまでは・・・あ」

葵が綾乃に一礼して、それから背を向けてビルに向き直る。

「何やってんのよ。準備は良い?葵、突入するわよ」

白虎が雷でビルの玄関を吹き飛ばして、二人はビルへと入って行った。
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