The Cross Bond Side Story

夜桜一献

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The Cross Bond Side Story Ⅲ

第六話

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    会敵してすぐに結衣と和香に向かう化け物。一回りも大きい怪物に結衣は立ち向かっていく。装束に関して、自身である程度どういった装束にするのか陰陽庁に言えば選択が出来るのだが、女性に人気が高いのは巫女服である。古来より術師としても小太刀二刀流の剣士としても一般的。男性も剣士は明治を経て侍から軍服へと様変わりし、今では黒いスーツにコートを羽織るのが主流。しかしながら、年を重ねたベテラン程、白衣に袴や侍に似た装束をする傾向にある。京都守護職新撰組や忠臣蔵に憧れる者は多いとか。術師は白衣に袴や坊主の格好が主流。結界師や感知者には黒子や忍者の様な風体の者もいる。とかく自分のスタイルに合わせて申請が可能となっており、札に封印していつでも着装出切る様にする者、普段着として持ち歩く者とさまざまである。結衣は女性の中では珍しい男装の麗人である。スーツにトンファーを手に持ち、機動性を重視した結果である。ある程度そのまま街に溶け込みたいという本音もあるのだが。結衣は立ち会って、直ぐ様近距離での戦闘に自身に警鐘を鳴らした。目の前にいる存在に対して攻勢に出るでなく立ち止まって迎撃の構え。化け物の攻撃を回避し、いなし、距離を保ちつつ隙を伺う。その隙に和香が再度札を飛ばして化け物に貼り付け、爆発が巻き起こる。煙が晴れる前に、化け物は何食わぬ顔で結衣に攻撃を仕掛けに来た。慌てて結衣も距離を取ろうとしたが間に合わず、重たい一撃を腕を交差させて凌ごうとしたが、結衣の体は宙に舞い上がり吹き飛んだ。衝撃で激痛が迸り、両腕に重圧が圧し掛かる。自分で後ろへ飛んで衝撃を減らしたはずだが、それ以上の衝撃だった。鼻から血を流しながら坂を転げ落ち、激痛に耐える。

「結衣ちゃん・・・よくも!!」

薙刀で攻撃するものの、薙刀を捕まえられてしまい、へし折られる。そのまま組み伏せられ、和香の眼前にその大きな牙を持つ口が開かれた。和香も目を閉じて覚悟をした瞬間

「にゃあ」

と猫の声が鳴り響き、化け物の動きがピタリと止まる。

一匹の黒い猫が森の中から姿を現した。

長く生きてりゃ、強敵に出会う事もある。猫又だの、黒猫さんだの、社長だの呼ばれながら多少の神性を得たが、分の悪い勝負になるであろう事は一目瞭然である。意識がこちらに向いている間に、自分の分身を100体作り出した。全員で襲い掛かって相手に噛み付き、引っかき、やりたい放題やらかした。自慢の爪は岩に傷を残す程研ぎ澄まされ、牙に至っては嚙み砕けぬ物が思い浮かぶ方が難しい。威力は申し分無いと思うのだが、いかんせん耐久力がない。まぁ、なんせ猫である訳で、簡単に潰されてしまう訳だ。振り払われ、握力で握りつぶされ、噛み砕かれる。といっても、分身なので痛くも痒くもなく血も出ず消滅するだけ。相手が怒り狂っているのが見て取れる。その隙に和香が逃げ出して結衣の下へ駆け寄った。

「土地神様、ありがとう御座います!!結衣さん!!」

「すみません、しくじりました」

両腕からと、鼻から血を垂れ流している。折れている可能性が極めて高い。衝撃で意識が朦朧としているのか動きが鈍い。
  
「大変・・・・・・ちょっと待って頂戴」

和香が懐からテーピングを取り出し、近くの木を薙刀で切って両腕に固定する。

一匹の黒猫が巨大になって、結衣の傍へ寄る。

黒猫に乗せられた結衣は尻尾にくるまれ、落ちない様に固定されている。

「お願いします。私はもう少し残って」

戦います、と言おうとしたが、ニ本のうちのもう一尾にくるまれ宙に浮かされた。

「土地神様!?」

問答無用とばかりに、その場から離れる巨大化した黒猫。なんせその土地神と呼ばれる猫

言葉を聞く事も字を読む事も可能ではあるのだが、いかんせん猫であるからして

「にゃあ」

言葉を話せない。その一言に、全てを集約させるしかないのである。





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