The Cross Bond Side Story

夜桜一献

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The Cross Bond Side Story Ⅲ

第七話

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 100匹居た猫はすでに30匹程度にまで減らされている。化け物も大した敵ではないと見たか、舌なめずりを見せた。10匹が集まって黒猫達が混ざり合い巨大な黒猫へと変化する。二股の尻尾で化け物を拘束、他の黒猫達も先端を刀に変えて化け物を攻撃した。尻尾は突き刺さり、化け物にダメージを与えているものの、化け物は尻尾jを力で拘束を解き、引き千切ってから目の前の巨大な黒猫に噛み付いた。消滅して残り20匹に減らされる。距離を保ちながら、攻撃を放つ戦いをそれから十数分行った。攻撃を回避する為に踊るように宙返りをする猫、あえて接近して攻撃から身を守る猫、足場をうろちょろして邪魔をする猫、それらが減らされて、残りは10匹となる。10匹はぐるぐると化け物の周囲を回り、ちょこまかと動きながら尻尾を繰り出す。ヒットアンドアウェイの戦法であるが、攻撃は効いているらしい。なんせこの尻尾の刀、訳があって本物の妖刀であるからして。

「いたぞ!!あそこだ!!・・・・・・あれは報告にあった支援の黒猫か!?」

他の陰陽庁の面々が10人程駆けつける。見慣れない者が殆どで、他県の応援者であろう。

「援護するぞ!!銃構え!!」

それに、他の自衛隊の部隊も駆けつける。

それぞれ、得意な武器を用いて、化け物を警戒しながらも攻撃の姿勢を見せる。化け物も鬱陶しいと感じたのか憤っているのが見てとれる。それから、化け物は口を広げて、口から黒い光の玉を圧縮し始めた。これはまずい、と感じた矢先に凄まじい爆発が広がる。感知して上手く逃げ出せたのは一匹だけだった。爆風でコロコロと転がり、木の幹にぶつかる。周囲は焦げており、地形も多少変わってしまっている。応援に来た者は悉く返り討ちに合い、焼けた死体として転がっている。自衛隊も2発目を恐れて顔を出さない。息を潜めているか死んだ振りをしている。自分の妖力を圧縮して打ち出す荒業に、化け物自身でも驚いているようだ。自分を吐き出したに等しい効果と威力、そして脱力感であろう。同じ妖怪としてどうすればどうなるかは熟知している。よってあの威力での2発目は無いだろう。黒猫は再度、化け物と向かい合い、終ぞ一対一となる。人型を取って刀を抜いた。猫の耳に幼い容姿と体型、手招きして上の森へと登り化け物を誘い込む。狩りでも始めるかのように、化け物は上機嫌で後を追った。追い付かれて、反転して攻勢に出る。刀を手に持って、跳躍して一撃を首に見舞う。勘が良いのか、見切っていたのか首を捻って避けられる。
木の側面を足場にして再度斬り付ける。今度は肉を上手く裂けた。同じ要領で攻撃を連続して見舞う。血が噴き出してはいるが、同時に再生している様にも見える。ああ、キリがない。地面に着地して、どうしたものかと思案する。自身は剣の達人という訳ではない。それ故作法も知らぬ化け物である。森の中で幼子は刀を投げた。化け物の心臓に突き刺さり、血渋木を上げる。背後にもう一人の幼子が現れ、背中を一刺しする。木の上から飛び降りて更に幼子が頭から垂直に突き刺した。驚愕の表情を浮かべている化け物。何、驚く事なかれ。所詮は化け物同士の殺し合い。卑怯も糞も何も無い。地面から手が生えて刀で足を叩っ斬る。地面に潜っていた幼児が出て来る。バランスを崩して倒れた所で心臓に突き刺した刀を抜いて首を跳ねようとしたが、あの黒い玉が周囲に浮かんでいるのが見えた。それらが幼児に向かって発射され消し飛んでいく。先ほどの威力に比べれば小手先にも等しいが、化け物が自分の力をコントロールしているように感じた。刀を抜こうとしたが、肉に挟まれ抜く事が叶わない。焦って離れようとはしたものの、そのまま大きな口に捉えられる。

所詮は化け物の殺し合い。

残る最後の幼児も消滅した。

 京都御苑の周辺に、自衛隊がずらりと並んでいる。絵美達もここに配備されており、武器を所持して戦時の様な緊張感が漂っている。絵美達は京都御苑の周辺の住宅に声を駆け回って、市民へ避難の誘導を試みていた。一軒一軒挨拶から始まり、説明をして納得して貰い、指定の場所まで避難して貰うのが任務である。もし最後の砦である京都御苑での討伐に失敗でもすれば真っ先に被害を被るのは無論その住人達である。何としてでも連れてこいという結構無茶な任務だった。そして、ニュースでも指定の区域の住人は避難するように市長が
避難指示を出した事で慌てて市民も避難を始めた。

「ですから、市民への皆様には申し訳ないと思っているんですけどね。今から自衛隊も動いて、今街を騒がせている猛獣を射殺するんです。危険ですから一緒に避難をお願いします!!」

「・・・・あんだって!?」

「ですから、お婆ちゃん。一緒に避難しましょう!!」

「いいから、その婆さん連れていくぞ」

「ええ!?」

「時間がないんだ!!指定の時間までに避難を完了させにゃならんのだぞ!!」

「分かってますけど!!無理やりは不味いでしょ!!」

「ご家族に連絡しろ!!」

「~~~~~~~~!!分かりましたよ!!怒鳴らないで下さい!!」

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