The Cross Bond Side Story

夜桜一献

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The Cross Bond Side Story Ⅲ

第十話

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今日は月が映える良い月夜。森から抜けて3、40分は経過しただろうか。

化け物がある家でぴたりと歩みを止める。

周囲を警戒して、人が来ない事を確認して、窓を尻尾で割ると家の中に侵入した。

扉を壊して、進もうとすると壊した窓から声が聞こえた。

「これで繋がったなぁ斉藤庄司君。君だろ?噂のエイリアン」

振り向くと、中にもう一人茶髪の眼鏡をかけた少年が立っていた。

「ここはさ、別に俺の家って訳じゃないんだ。知り合いの家でもない。君に奪われた日常が苦痛で、耐えられなくなって、逃げ出す様に家を出た夫婦の持ち家だった場所。そりゃそうさ、だってこの街のどこに居たって子供との思い出が一杯だもんな」

尻尾を少年に向けて、串刺しにしてやろうかと思ったが、素手で受け止められる。上半身の筋肉が膨張して衣類がその膨張に耐えきれずに弾ける様に破れた。みるみるうちに、狼男へと変貌し怒りを露わにして咆哮する。

「お前が、子供との思い出を苦痛に変えたんだぞ!!」

智也が、力一杯尻尾を掴んで外へと放り出した。体格は遥かに化け物の方が一回り大きいが、匹敵する程の力を目の前の狼男に感じる。体制を整えて、縊り殺そうと突進するが膝蹴りで、顎を蹴られて体が宙に浮いた。狼の爪で首を斬られる。血を手で覆って出血を防いで、狼男に背を向けて跳躍した。

「逃げる気か!!」

天井を伝って、逃げると狼男も追ってくる。踏み切りのランプが赤く点灯しているのが見えて大きく跳躍した。走る電車の上に乗って、逃走を図ったが狼男も何とか電車に飛びつく。二人は走る電車の上で、対峙した。思い切り電車の天井に拳を突き立てて穴を開けた。中で休んでいた客が、現れた化け物に悲鳴を上げて逃げ始める。電車の中に入って一人の少年を尻尾で捕まえた。
徐々に力を込めて締め上げる。狼男も、窓から割って入り込んだ。

「た・・・助けて・・・ぐぇっ・・・・」

更に締め上げて、狼男に手招きする。智也は仕方なく、ゆっくりと前に出た。化け物が狼男に重い一撃を腹に入れる。智也は同時に、伸ばした爪の斬撃で尻尾を斬った。乗客は、慌てて逃げていく。智也の受けた一撃も重く、腹を抱えて膝を着いた。庄司は首を捕まえて、ドア付近にある鉄のパイプに頭を打ち付けた。それから何度か地面に叩きつけて、腕を大きく振り被って再び腹をめがけて一撃を入れる。今度は手が体を貫通して突き刺さった。智也も悲鳴を上げて、決死の思いで爪を首に突きさす。

「くっそ・・・傷が・・・」

庄司の傷跡が、回復していく。いつの間にか、尻尾が再生している。尻尾で体をぐるぐるに巻かれて圧迫されると智也は呻いた。いつの間にか、ギターを抱える金髪の少女が二人の側に立っている事に、二人は気づいた。智也は必至に、逃がそうと声を掛ける。

「に・・・・・・逃げるんだ・・・」

うんざりした表情で、二人を見据えている。

「狼男に、変な化け物。こっちはそんな世界で生きたくないって言ってんのに」

化け物が尻尾で串刺しにしようと思ったが、彼女が何かを手に出現させて尻尾を弾く。何も無かったその手には、柄の長いハンマーが握りしめられている。再度尻尾で攻撃すると、今度はそのハンマーで殴られ、尻尾の一部が消滅した。

「暫くは再生出来ないよ。私の能力は【妄想殺し】キモいあんたのその歪んだその『思い』」

構えて、化け物に通告した。

「――――――――私がぶっ壊す」

夏樹が、ハンマーで打ち付けるとその個所が削り取られるかの様に消滅していく。尻尾と防御に使った片腕が壊され、消滅し、庄司は焦って天井の穴から脱出した。最後に夏樹に向けて化け物の大声で咆哮して威嚇し、その場を後にした。アナウンス放送が聞こえて電車がその場でブレーキを掛けて一時停車する。夏樹が急いで狼男の側に駆け寄ると狼男から通常の状態に戻っており、智也は血塗れの重症で倒れていた。化け物が電車から離れて、屋根を伝って逃げようとしていると、急に体が重くなる。巨大な白い蛇が化け物の体を逃がさぬ様に締め上げている。ヘリの音が聞こえて、空から一人の青年と少女が現れる。ヘリから降りて着地した。

「あっぶな!!危うく逃がすとこ・・・・・・」

「玄武、いけそうか?」

【いつでも。対象の退魔師は術札を自分の額に張り付けたか確認を】

「必要ない始めろ」

令二は、札を化け物に飛ばして貼り付ける。白い蛇が黒く変色して溶けていく。ドロドロに溶けた蛇を不審に思いながらも何をされたかは理解出来てはいない。それから、世界がどこか青く色づけされていく。明かりが消えて生物の息遣いが街から消えた。
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