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The black cat rage about
第七話
しおりを挟む―――――協力する代わりに、一つお願いを聞いてくれませんか?
朝倉京子という少女にそう言われて、彼女の後を追って彼女の職場という陰陽庁京都支部へとやって来た。和香の旦那の面接の件もある。そわそわとしているようだが、まぁ何とかなるだろう。彼女自身も乗り気であるし、こちらにも何かしらの要求がある様子。店も事務所もまだ開店しておらず人気はない。変な運気の上がるグッズや御呪いグッズと書かれた珍妙な石やアクセサリーが陳列されているのを見て、実際に何屋かと問われれば首を傾げてしまう。机に、座布団が敷かれ京子はここへどうぞと言って来た。よくわからず、その赤い座布団に座ってみる。下を向くと
社長と書かれたプレートが見える。
「という訳で、うちのマスコット兼社長になって下さい!!」
ここで断ったら、彼の採用に響いたりするんだろうか、と一瞬頭に変な邪推が過る。協力者に恩を売っておくのも一つの手と言える。頷いて座っておく。何をすればいいの?と目で訴えると
「えーっとですね、出来たら暇な時で良いのでここに座って下さい。それと、事件絡みで何かあった時は協力して頂けると助かります」
まぁ、別に問題はないだろう。
それにも同意しておいた。
「あら、珍しいお客さん?」
「早苗さん・・・・・・と?」
早苗の後ろに、こそこそ隠れている人影が見える。
「ふん、登録するにはこっちに一回来なきゃいけないんでしょ」
「ったく、紅葉って意地っ張りなんだから。気になってた癖に」
「紅葉ありがとう。ごめん、急にこんな事になっちゃって」
「話は聞いたわよ。あの力が関係してるってのは。
でも、家系とはいえ七光りで上に立たれると納得いかないわ」
「私だって、別に納得してないわ。けど、しょうがないじゃない」
「どうだか、こんな良い事務所構えちゃって」
「祝いに来たのか貶しに来たのかどっちなのよあんたは」
両方、と顔に書いてある。彼女は素直で分かりやすい性格をしている。長く一緒に居たであろう少女は、それを良く理解しているようだった。和香の旦那は問題なく採用され、翌日から出勤する事になった。それから、旦那と早苗、紅葉、京子で和香救出の話し合いを行った。
「ていうか、何その話信じらんないんだけど!!」
紅葉が出された茶菓子を頬張りながら、憤る。
「ね、江戸時代の話なんじゃないかって最初は私も耳を疑ったわ」
「それで、今和香さんは大丈夫なんですか?」
「ええ、メールによれば自宅に軟禁されてるって。
外に出れないから仲の良い従者さんが外でメール送ってくれたらしいわ」
それを聞いて、旦那の表情が一気に笑顔になる。
「良かった、和香は無事なんですね」
早苗と呼ばれた少女が私を抱っこして持ち上げる。
「猫さんに自宅に潜入して貰うのは?」
「早苗さんの家もそうだと思いますが、結界の札貼りまくってますよね」
「陰陽師の家の嗜み程度には」
そんな家に忍び込むのはちょっと難しい。
早苗たちが行くにしても自宅に居る可能性は高いが不法侵入になる。なら、お見合いの当日に乗り込んで救出する方が良いとの結論。
「とはいえ、お見合いの場で私達が乗り込むとなると方法は限られますね。早苗さん三味線弾けますか?」
「え、ひょっとしてあれやるの?」
早苗と呼ばれた少女は吃驚している。
「他に、妙案があればそっちにしますけど」
紅葉と呼ばれた少女も感づいたらしく少し恥ずかしそうに思い出している。
「あ れ か。いや確かに三味線習うついでに遊びでやったけどさ」
「和香さんのメールで、やりとりは手紙を庭に落として下さいってありましたから社長、早速仕事頼めますか?」
にゃあと、一言鳴いて承諾する。私は貰った手紙を咥えて教えて貰った住所へと走り出した。
和香さんへ。
旦那さんと亜子さんは和香さんの居ない寂しさに耐えて日々を過ごしていらっしゃいます。陰陽庁に携わる者として微力ながら助太刀させて頂きます。兄にも協力を仰ぐ予定となっていますのでご安心下さい。見合い当日に乗り込む予定ですのでもう暫くのご辛抱をお願い致します。
陰陽庁京都支部局長 朝倉京子
それから、肉球のスタンプ。
私も助けにいくよという報せを残した。
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