Voo Doo Child

夜桜一献

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The killer of paranoid Ⅷ

第三十六話

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 「何ガ起コッタ・・・神域ノチカラガ消滅スルナド有リエヌ!!」

テラメアは、一人の少女に目を向ける。手を招いて挑発する金髪の少女に憤慨した。

「いけない!!引きなさいテラメア!!ここで貴方を失う訳には!!」

構想を練り、実現に至るまでの労力と

これまでの人生の時間。

冷静な青葉がここで初めて狼狽を見せた。

青葉の掌にキューブが出現すると優理と海人が狼狽する。

「これをテラメアに与えれば更なる進化を起こすはず!!」

「させるかああああああああああああああ!!」

海人と優理が青葉に突撃するも二人の攻防を軽くあしらう。青葉の前に炎が逆巻く。寄せ付けない様に朱雀が遮る。

「邪魔ばかりして・・・しつこいですね!!」

「後少しであの疑似神は消滅します。その間貴方を絶対に通しません。朱雀!!」

「応」

早苗がそういうと、紅葉が肩を貸して二人で立つ。朱雀の猛攻に結界を何重にも重ね掛け、割れた端から再度張るも、疲労と焦りもあって間に合わない。

「こんな所で!!!」

炎が青葉を飲み込んで、青葉は直撃を受ける。青葉の忠告も無視して、テラメアが夏樹に接近するも、海人と優理が間に入って撹乱する。虹色のバルーンでテラメアを簀巻きにした後、優理が鎌で首を刈るも斬れずにダメージだけ負わせた。テラメアが拘束を引き千切り、自分の周囲に結界を創る。その上で限定呪術式を展開させた。再度二人が接近すると急に二人の動きが止まる。

「神域ノ中デハ何人モ動ク事ヲ禁ズル」

夏樹が、光る輪っかを作って、羽を生やす。姫の精神の中で空を飛んだイメージを創り、一気に上昇して結界を破壊した。二人が動ける様になってテラメアの攻撃を寸前で回避する。

「いけねえ・・・流れが絶たれちまった。ここは俺が何とかするっきゃねえか!!」

明野が見た所、白虎は消滅寸前。眼鏡の少女が気絶しており、足手纏も居て絶好のチャンス到来。影を広げて再び闇の中で蠢く魔物をけしかける。

「おい、女、お前も結界を張れ」・・死んだはずじゃ・・・それに、貴方達は・・・」

呪術捜査官の上官が、この作戦に臨んだ者達の顔を見る。仮面を付けては居るがわからぬ程知らぬ仲ではない。そして、遠い日の昔に見た殉職者達。古谷が、涙を見せながら古い写真を見せてくれたのを鮮明に覚えている。

「古谷さんの為に駆けつけてくれたんだな」

和服姿の美少女が現れ、丁寧に挨拶する。

「ごきげんよう、明野って言ったかしら。貴方に復讐したいって人が居るんだけど分かるかしら?」

「ーーーーーーはぁ?」

後ろから銃口を押し付けられると、明野はゆっくりと後ろを向く。

「生きてやがったのか幸喜」

明野の顔に余裕が消えて冷や汗をかく。

「すまないな、ほんの出来心だったんだよ」

幸喜は無言で睨みつける。

「分かるだろ?」

反応はない。

「お前の母親が正統になって、俺は常にその後ろを歩かされた!!俺が先に生まれていたら君も俺と同じ道になっていたろうぜ!!分かるだろ?この世界の理不尽を誰かが、壊さなきゃなんねえ!!俺だって正統後継者になって日の当たる世界で生きていく未来があったんだ!!君みたいにな!!」

「さっきまでは連中を裏切り、生きる事にしか執着の無かった癖によく言うよ。大した考えもなく、核たる情熱も信念も無い本能に従う獣。確かにあんたは生粋のクズだ。生かす価値はない」

「ーーー幸喜ィ!!」

影を操る動作よりも速くに銃声が響いて、明野の額に穴が出来る。地面に倒れて絶命した事を確認すると仮面を付けて無言で他の黒服達と合流する。彼等は次にテラメアを見据えた。

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