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第1章
008 とんだ濡れ衣
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宮殿に車はついた。アリシアは当たり前と言うふうに歩いていく。その後をおっかなびっくりついていくスミス。
「300年で少し古くなったかな?」
王女様の風格を持ってアリシアは言う。お付きのもののアンドロイドと宮殿の情報は共有してるようだ。
「こちらでございます」
立派な会議室に案内される。
「お着物をご用意致しますので、とりあえずこの部屋でお待ち下さい」
「あら、このままでも良くてよ」
しかしアリシアはお召し替えと言う事で別室に連れて行かれた。
「国民は300年も行方不明の王女が生還されたことに嬉しい声をあげています。帰還のパレードも、これから十時から予定されています」
付き添いの執事がスミスにこれからの事を説明する。
「スミス様は王女様の警護についていただきます」
船の操縦士をそばから離さない王女に配慮してか、スミスを警護に割り当てたらしい。
「ああ了解した」
ソファに体を預けスミスは言った。パレードの間、室内に監禁されるのは御免だ。
「これがパレードのコースです。一緒に車に乗って警護をして頂きます」
警備の関係者に配布されるであろう地図を渡される。
人の配置や王女の通過時間など細かな事が記入されている。
「アリス、パレードのコースだ。今から送る」
何か悪い事が起こりそうな気がして宇宙船に無線で連絡を入れる。パレードのコースを渡したのは、何かがある時に宇宙船を投入するのだ。ハリネズミの様に兵器が付いている宇宙船なら、後ろ盾に好都合だ。
「パレードはひとまる時からだ。何もないと思うが用意をしてくれ。なんか悪い予感がする」
宇宙に生きる者の常で、時間を表現するのに独特の言い回しをする。軍隊の方法らしい。宇宙局も使っている。
「了解です。エンジンを温めておきます」
まるで宇宙船に搭乗員がいるかの様な会話をすると、スミスは無線機をポケットに入れた。
パレードは盛大に始まった。300年で皇位継承権は失われているが、国民にとって生還した事は喜ばしい事に違いない。
「ん?」
車から正装で手を振っているアリシアを見ながら、スミスはビルの屋上に視線を送った。キラッとしたものを見た様な気がしたのだ。
「アリシア、なんかある」
言いながら窓から遠ざける。胸騒ぎがする。キラッとしたものは男が持っている長細い金属の塊だった。男が構える。
ミサイルランチャーだ。ランチャーを発射台にしてミサイルが打ち出される。男の服はきらびやかだった。
貴族?まだ顔は幼い。
すぐにアリシアの上に覆い被さる様にしてミサイルの爆風を避けようとした。宇宙士の癖だ。お客様は自分を犠牲にしても守る。これは宙航士の資格を取る時に徹底的に覚えされたものだ。
素人の様で狙いは甘い。しかし近くで爆発したようで爆風が車を揺さぶる。アリシアは気を失っている。
「ちっ」
ポケットから無線機を取り出す。
「アリス!緊急事態だ。アリシアが攻撃された。すぐに移動する。宇宙船をここにもってこい」
「了解」
宇宙船アリスは動き出した。駐機場の兵士は誰もいないのに起動する宇宙船を見て驚いている。アリスはオリジナルの危機に能力を発揮した。
惑星では出せない推力で浮上する。爆風を受けて駐機場にある車が転倒する。
「管制、コードX、緊急事態に付き王女の名により全ての制限を解除する。こちらは貨物船アリス」
「管制、王女様緊急事態了解しました」
アリスは遠慮がなかった。敵の迎撃を防ぐために数十メートルの低高度を物凄い速度で飛ぶ。
「アリス来ました。照準よし。いつでも発射できます」
王女の車の上に被さるように停止する。宇宙船の下のハッチに車もろとも吸い込まれる。建物の上のミサイル発射装置をった男に、照準を合わせている様だ。宇宙船の下部の爆弾口が開く。
「爆弾226、準備よし。犯人を中心に半径500メートルは消し飛びます」
宇宙船アリスの周りに緑色のエネルギー防護壁が張られる。
爆弾226は降下先が未開の惑星の場合、平らな着陸場を作るものだ。生身の犯人に使う様なものではない。爆発すると半径500メートルの広場ができる。
「ちょっと待て。226とは乱暴な。犯人を生かして確保しろ」
それだけに威力は知っている。核爆弾を除けば普通の爆弾では2260に次ぐ威力を誇る。スミスは慌てた。
「爆弾2260も作動させていたのですが、惑星の首都ですから遠慮しました。2260で惑星の一部もろともふきとばしたかったですが、生かして確保、了解です。残念です。アリシアと思念波で無事を確認。それでは八咫烏と連携して確保を遂行します」
アリスは悔しがるが危険だ。これがアリシアと思考を
同じくしている。気をつけなければ。
「ああ、俺としてもアリスに賛同できるが、犯人の考えが知りたい。仕置きはそれからでもいいだろう。俺は2260でもいいんだが、アリシアはここの王女だ。自重しろ」
「了解。自重します」
星の警察は素早かった。八咫烏と協力して犯人は瞬く間に押さえられた。逃げようとしてもアリスのレーダーがみはっている。
男は貴族の孫だった。爺さんの時代に没落したのを王女のせいにしていたらしい。それを孫が聞いていたらしい。
「アリシア。とんだ濡れ衣だな」
「何も言えないわ」
気を取り戻したアリシアはため息をついた。
とんだことになってしまった。作動した爆弾は宇宙空間で始末しなければ危ない。アリスは貨物船を宇宙に向けた。
「通信が入っています。貴族のギルバートと名乗っています。接近している宇宙船が接続を求めています。息子の詫びという事で来たそうです」
親が自分の足元に火がついて出て来たらしい。アリシアは疲れて私室に引っ込んでいる。
「いいんじゃないかと思います。王女の配下が貴族を相手しても問題はありません。一応許可はとります」
アリスは思念波でアリシアと通話した。
「いいそうです。ここでどうするかは決めないでと言うことです」
「ふうん、相手の話を聞くだけか」
「接続用のチューブを相手に繋ぎます」
男が一人乗り込んで来た。初老の貴族だ。
とアリスが喚いた。
「危険物を探知。爆発物です。シールドを展開します」
男は左手を挙げた。何かスイッチを隠し持っている様だ。指が押す。
トレンチコートの胴の部分が光った。爆発だ。どうやら胴の部分に爆発物を巻き付けていたらしい。息子のやったことで自分の貴族の地位がなくなるという事で思い余った始末だろう。
普通の爆発より大きな爆発がおきる。宇宙船は内部は外装より脆い。シールドで爆発の方向は壁の方に向く。壁の向こうは爆弾2260が起動している。
電気が消える。スミスは宇宙帽を被って真空に備える。男を中心に爆発は宇宙船を破壊した。大きな穴があく操縦室。男の遺体は巨大な穴から吸い出されて行く。爆弾2260が爆発する。太陽とは違う青色の火球が光る。爆発が自力で航行できないほど宇宙船を破壊する。
「300年で少し古くなったかな?」
王女様の風格を持ってアリシアは言う。お付きのもののアンドロイドと宮殿の情報は共有してるようだ。
「こちらでございます」
立派な会議室に案内される。
「お着物をご用意致しますので、とりあえずこの部屋でお待ち下さい」
「あら、このままでも良くてよ」
しかしアリシアはお召し替えと言う事で別室に連れて行かれた。
「国民は300年も行方不明の王女が生還されたことに嬉しい声をあげています。帰還のパレードも、これから十時から予定されています」
付き添いの執事がスミスにこれからの事を説明する。
「スミス様は王女様の警護についていただきます」
船の操縦士をそばから離さない王女に配慮してか、スミスを警護に割り当てたらしい。
「ああ了解した」
ソファに体を預けスミスは言った。パレードの間、室内に監禁されるのは御免だ。
「これがパレードのコースです。一緒に車に乗って警護をして頂きます」
警備の関係者に配布されるであろう地図を渡される。
人の配置や王女の通過時間など細かな事が記入されている。
「アリス、パレードのコースだ。今から送る」
何か悪い事が起こりそうな気がして宇宙船に無線で連絡を入れる。パレードのコースを渡したのは、何かがある時に宇宙船を投入するのだ。ハリネズミの様に兵器が付いている宇宙船なら、後ろ盾に好都合だ。
「パレードはひとまる時からだ。何もないと思うが用意をしてくれ。なんか悪い予感がする」
宇宙に生きる者の常で、時間を表現するのに独特の言い回しをする。軍隊の方法らしい。宇宙局も使っている。
「了解です。エンジンを温めておきます」
まるで宇宙船に搭乗員がいるかの様な会話をすると、スミスは無線機をポケットに入れた。
パレードは盛大に始まった。300年で皇位継承権は失われているが、国民にとって生還した事は喜ばしい事に違いない。
「ん?」
車から正装で手を振っているアリシアを見ながら、スミスはビルの屋上に視線を送った。キラッとしたものを見た様な気がしたのだ。
「アリシア、なんかある」
言いながら窓から遠ざける。胸騒ぎがする。キラッとしたものは男が持っている長細い金属の塊だった。男が構える。
ミサイルランチャーだ。ランチャーを発射台にしてミサイルが打ち出される。男の服はきらびやかだった。
貴族?まだ顔は幼い。
すぐにアリシアの上に覆い被さる様にしてミサイルの爆風を避けようとした。宇宙士の癖だ。お客様は自分を犠牲にしても守る。これは宙航士の資格を取る時に徹底的に覚えされたものだ。
素人の様で狙いは甘い。しかし近くで爆発したようで爆風が車を揺さぶる。アリシアは気を失っている。
「ちっ」
ポケットから無線機を取り出す。
「アリス!緊急事態だ。アリシアが攻撃された。すぐに移動する。宇宙船をここにもってこい」
「了解」
宇宙船アリスは動き出した。駐機場の兵士は誰もいないのに起動する宇宙船を見て驚いている。アリスはオリジナルの危機に能力を発揮した。
惑星では出せない推力で浮上する。爆風を受けて駐機場にある車が転倒する。
「管制、コードX、緊急事態に付き王女の名により全ての制限を解除する。こちらは貨物船アリス」
「管制、王女様緊急事態了解しました」
アリスは遠慮がなかった。敵の迎撃を防ぐために数十メートルの低高度を物凄い速度で飛ぶ。
「アリス来ました。照準よし。いつでも発射できます」
王女の車の上に被さるように停止する。宇宙船の下のハッチに車もろとも吸い込まれる。建物の上のミサイル発射装置をった男に、照準を合わせている様だ。宇宙船の下部の爆弾口が開く。
「爆弾226、準備よし。犯人を中心に半径500メートルは消し飛びます」
宇宙船アリスの周りに緑色のエネルギー防護壁が張られる。
爆弾226は降下先が未開の惑星の場合、平らな着陸場を作るものだ。生身の犯人に使う様なものではない。爆発すると半径500メートルの広場ができる。
「ちょっと待て。226とは乱暴な。犯人を生かして確保しろ」
それだけに威力は知っている。核爆弾を除けば普通の爆弾では2260に次ぐ威力を誇る。スミスは慌てた。
「爆弾2260も作動させていたのですが、惑星の首都ですから遠慮しました。2260で惑星の一部もろともふきとばしたかったですが、生かして確保、了解です。残念です。アリシアと思念波で無事を確認。それでは八咫烏と連携して確保を遂行します」
アリスは悔しがるが危険だ。これがアリシアと思考を
同じくしている。気をつけなければ。
「ああ、俺としてもアリスに賛同できるが、犯人の考えが知りたい。仕置きはそれからでもいいだろう。俺は2260でもいいんだが、アリシアはここの王女だ。自重しろ」
「了解。自重します」
星の警察は素早かった。八咫烏と協力して犯人は瞬く間に押さえられた。逃げようとしてもアリスのレーダーがみはっている。
男は貴族の孫だった。爺さんの時代に没落したのを王女のせいにしていたらしい。それを孫が聞いていたらしい。
「アリシア。とんだ濡れ衣だな」
「何も言えないわ」
気を取り戻したアリシアはため息をついた。
とんだことになってしまった。作動した爆弾は宇宙空間で始末しなければ危ない。アリスは貨物船を宇宙に向けた。
「通信が入っています。貴族のギルバートと名乗っています。接近している宇宙船が接続を求めています。息子の詫びという事で来たそうです」
親が自分の足元に火がついて出て来たらしい。アリシアは疲れて私室に引っ込んでいる。
「いいんじゃないかと思います。王女の配下が貴族を相手しても問題はありません。一応許可はとります」
アリスは思念波でアリシアと通話した。
「いいそうです。ここでどうするかは決めないでと言うことです」
「ふうん、相手の話を聞くだけか」
「接続用のチューブを相手に繋ぎます」
男が一人乗り込んで来た。初老の貴族だ。
とアリスが喚いた。
「危険物を探知。爆発物です。シールドを展開します」
男は左手を挙げた。何かスイッチを隠し持っている様だ。指が押す。
トレンチコートの胴の部分が光った。爆発だ。どうやら胴の部分に爆発物を巻き付けていたらしい。息子のやったことで自分の貴族の地位がなくなるという事で思い余った始末だろう。
普通の爆発より大きな爆発がおきる。宇宙船は内部は外装より脆い。シールドで爆発の方向は壁の方に向く。壁の向こうは爆弾2260が起動している。
電気が消える。スミスは宇宙帽を被って真空に備える。男を中心に爆発は宇宙船を破壊した。大きな穴があく操縦室。男の遺体は巨大な穴から吸い出されて行く。爆弾2260が爆発する。太陽とは違う青色の火球が光る。爆発が自力で航行できないほど宇宙船を破壊する。
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