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「仲良しだと思ったぁ?」
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♢天界♢
最高神ルシファーのあとに続き『神殿』へとむかった魔王とナンナは慣れた様子で【友人専用】と木彫りのプレートに書かれた部屋に招かれた。
「では、私は何かお茶請けを作ってきますね」
魔王とルシファーが部屋に入ったところでナンナが言う。
「あら、ごめんなさいねナンナ。材料はいつものところにあるからどう使ってくれても構わないわ」
「感謝いたします」
「儂はミルククッキーにココアパウダーを振り掛けたやつじゃ!」
12個の椅子が囲む白い円卓の2時の方角で既に着席している魔王が勢い良く手を上げた。
「デヘヘッ、解りました!魔王様!」
一瞬で頬が紅潮したナンナを見てルシファーは一言
「うっわ…」
と、漏らし顔を引きつかせた。
ナンナから魔王専用のティーセットを受け取りナンナを見送ると、ルシファーはそれを魔王の側に置き自分は12時の位置に座った。
「まったくあなた達は、やってくれたわねぇ」
「まあまあよいではないか!そう怒るでない」
カップにココアを注ぎながら魔王は「カカッ」っと笑う。
「うふふ♪…別に怒っているわけじゃないの、 ただ…」
台に肘を乗せ指を絡めその上に顎を乗る
「せっかく裏ボスとして私が存在しているのに本当にやる事が無くなっちゃったって思ったのよ」
微笑みながら少し寂しそうに右の瞼を閉じた。
「クハハ!何を今更、貴様の所に勇者が来たことなど一度も無いだろうに」
それがどうした、と言わんばかりの表情で魔王は湯気をたてるココアに口をつける。
「まぁ、そうなのよねぇ…いっつも魔王と相討ちか魔王を倒したものの失った物の重圧で気を病み、引退するか自ら命を断つか…。結局、天界まで来れた者は誰一人居なかったわ」
「儂の時代は特に酷かった。儂のもとにたどり着けた人間がたったの1パーティだけじゃ!し・か・も・雑魚!」
今朝の話を思い出し声が荒ぶる魔王。
「雑魚なのは置いておいて、魔王ちゃんを討伐しに来なかったのは単純に、あなたが軍を手放したからよ。村に攻めいる魔物も悪戯をする魔物も国を滅ぼす魔物もぜーんぶリストラしたでしょ?」
「むむむ…だってそっちの方が勇者を招きやす
いと思ったんじゃもん!」
「結果は?」
「……さっき話した通りじゃ…」
「そりゃあそうよ。だって危機が無いのだもの。そんな世界、平和ボケするに決まってるわ」
あしらう様に手を振る。
「ぬぬ…正に、ザル魔王城じゃったか」
否定の仕様もない。人里離れた蜂の巣をわざわざ突くなど、度し難き阿呆だ。
触らぬ神に祟りなしとも言う。
「でも、私の前の最高神での世界だったら魔王ちゃんは存在を消されていたかもしれないわね」
「ふむ?儂は前最高神の事を深くは知らん……一体、どんな神だったのじゃ?」
そう聞かれなかなか難しいのか、回答に困るルシファーは
「そうねぇ…彼は一言で言うなら“遊び心の無い神”だったわ」
渋々答えを出したといった様子だった。
「と言うと?」
「私達みたいに原初の誓を破ると慈悲なく世界から追放、もしくは消滅」
その言葉に、苦虫を噛み潰したよな顔をする
「原初の誓、か。アレはどうも堅苦しくて嫌じゃ。そもそも《魔王は魔王城から出てはならない》とは何じゃ!良かろう!?自由欲しかろ!?」
同意を求めるように「クワッ!」とルシファーに顔を向けると
「そうよそうよ!私だって最新の化粧品とか買いに行きたかったのよ!それなのに《神(最高神含む)が天界を離れる事を禁ず》って何よ!?お出かけしたいじゃない!お洒落したいじゃない!心は乙女なのよ!」
「「ねー!「のー!」」
己を落ち着かせる為に二人は1杯「グイッ!」とカップの中身を飲み干した。
「ふう…。そう考えると貴様の創った現世は良かったのかもしれんな。ナンナと出会い、フェンリルと出会い、マーリンと出会い、バハムートと出会い、スプリガンと出会った。貴様もな最高神」
魔王は懐かしむ様に目を瞑った。まぶたの裏には彼らとの記憶が鮮明に映し出されている。
「ナンナと魔王ちゃんと私で人間の都市へお買い物に行ったこともあったわね。あ、もしかしてその時のティーセット?」
「いや、あれは流石に200年前の物じゃったからな取っ手が折れて割れてしまった。これはナンナが買って来てくれたものじゃ」
広角を軽く上げルシファーに見せびらかす。
「ふーん…いいセンスしてるじゃない。まぁ、私と同じ天使長をしてたこともあるしね。目利きに関しては無問題だろうし、加えてあの子の目はよく見えるから、魔王ちゃんの好みなんて見透かしてるわよ」
「……実に良い近侍じゃよ。気は回るし仕事も早い。特に、儂の下僕共はフリーダムすぎるからな」
「《巨狼》フェンリル、《天災》バハムート、《静謐なる魔女》マーリン。人間側からすると、どれも捨て置けない者たちを何故、手元においたのかしら?」
その質問を魔王は鼻で笑い、一つ、長いため息をつく。
「まぁ……あれじゃ。結局儂らは人間が好きじゃったんじゃよ」
「自ら滅ぼしたのに変な話じゃろ?」と憂いを帯びた顔で魔王は首を傾げた。
「良いのよ、神は彼らを見放しちゃったんだから。それに原初の誓に則り、近々滅ぼす予定だったのよ?手間が省けて清々したわ♪」
ルシファーは朗らかに笑い、心配ないといった様子で魔王を見つめた。
「ふん…そう言ってもらえると助かるな」
━━━分かっているのじゃ。
別にナンナに急かされたからと言って世界を滅ぼした訳ではない。
誰かが滅ぼさなければならなかった。
勇者でも良い。魔王でも良い。神でも良い。
俗に言う世界終末戦争が起こせれば誰が発端でも良かった。
だが、儂は嫌じゃった。
こやつが最高神となり原初の誓は有ってないようなものとなった。
魔王は魔王城に縛られることなく儂は世界を巡ることができるようになった。
1000年じゃ。
1000年掛けてこの世界を見てきた。
じゃからこそ言える。この世界は
“反吐が出るほどに美しく。ココアのように甘ったるい。”
人間同士の争いが定期的にあるものの、そこには必ず愛があった。
止めるべき場所で止められる世界になった。
儂の管轄外の魔物達も必要以上に狩りをせず、必要な数が生き、必要な数が死ぬ。
世界は至って正常。。。
そんなものを破壊するのは魔王の仕事じゃし特権じゃ。
じゃから正義にはさせぬし
何より儂がそれを望まん。
「世界は正常に機能しておったな。貴様は間違ってなかったのだろう」
「そうねぇ……私達は退屈だったけど、人間も魔物も、まぁ平和だったでしょうね」
「そうじゃな…」
「仕方ないわ…世界の寿命が近かったんだもの」
世界の寿命
世界の造られ方はこうじゃ。
ラグナロクにより生き残った種族の中の一人が次の世界の核となりその者の残りの寿命が次の世界の寿命となる。
その核を中心に最高神が新たな世界を創造していくのじゃ。
すでに“最高神”が“最高神となって”5000年以上は経っておるはず…。
5000年以上の寿命を持つものは神か魔王しかおらん。
つまりこの世界の核となったのは……
・・・・・。
魔王はそこで深いため息をつき、ココアを胃に流し込みガタッと勢い良く立ち上がった。
呼吸一回分の間を開け「…どうしたのよ」とルシファーはカップを持ち上げて目を瞑った。
「…………のう…儂の我儘を聞いてくれるか?」
俯き話す魔王にようやく飲み終えたルシファーは一言
「嫌よ~」
と言うと、瞑っていた瞼を
━━━━見開いた。
最高神ルシファーのあとに続き『神殿』へとむかった魔王とナンナは慣れた様子で【友人専用】と木彫りのプレートに書かれた部屋に招かれた。
「では、私は何かお茶請けを作ってきますね」
魔王とルシファーが部屋に入ったところでナンナが言う。
「あら、ごめんなさいねナンナ。材料はいつものところにあるからどう使ってくれても構わないわ」
「感謝いたします」
「儂はミルククッキーにココアパウダーを振り掛けたやつじゃ!」
12個の椅子が囲む白い円卓の2時の方角で既に着席している魔王が勢い良く手を上げた。
「デヘヘッ、解りました!魔王様!」
一瞬で頬が紅潮したナンナを見てルシファーは一言
「うっわ…」
と、漏らし顔を引きつかせた。
ナンナから魔王専用のティーセットを受け取りナンナを見送ると、ルシファーはそれを魔王の側に置き自分は12時の位置に座った。
「まったくあなた達は、やってくれたわねぇ」
「まあまあよいではないか!そう怒るでない」
カップにココアを注ぎながら魔王は「カカッ」っと笑う。
「うふふ♪…別に怒っているわけじゃないの、 ただ…」
台に肘を乗せ指を絡めその上に顎を乗る
「せっかく裏ボスとして私が存在しているのに本当にやる事が無くなっちゃったって思ったのよ」
微笑みながら少し寂しそうに右の瞼を閉じた。
「クハハ!何を今更、貴様の所に勇者が来たことなど一度も無いだろうに」
それがどうした、と言わんばかりの表情で魔王は湯気をたてるココアに口をつける。
「まぁ、そうなのよねぇ…いっつも魔王と相討ちか魔王を倒したものの失った物の重圧で気を病み、引退するか自ら命を断つか…。結局、天界まで来れた者は誰一人居なかったわ」
「儂の時代は特に酷かった。儂のもとにたどり着けた人間がたったの1パーティだけじゃ!し・か・も・雑魚!」
今朝の話を思い出し声が荒ぶる魔王。
「雑魚なのは置いておいて、魔王ちゃんを討伐しに来なかったのは単純に、あなたが軍を手放したからよ。村に攻めいる魔物も悪戯をする魔物も国を滅ぼす魔物もぜーんぶリストラしたでしょ?」
「むむむ…だってそっちの方が勇者を招きやす
いと思ったんじゃもん!」
「結果は?」
「……さっき話した通りじゃ…」
「そりゃあそうよ。だって危機が無いのだもの。そんな世界、平和ボケするに決まってるわ」
あしらう様に手を振る。
「ぬぬ…正に、ザル魔王城じゃったか」
否定の仕様もない。人里離れた蜂の巣をわざわざ突くなど、度し難き阿呆だ。
触らぬ神に祟りなしとも言う。
「でも、私の前の最高神での世界だったら魔王ちゃんは存在を消されていたかもしれないわね」
「ふむ?儂は前最高神の事を深くは知らん……一体、どんな神だったのじゃ?」
そう聞かれなかなか難しいのか、回答に困るルシファーは
「そうねぇ…彼は一言で言うなら“遊び心の無い神”だったわ」
渋々答えを出したといった様子だった。
「と言うと?」
「私達みたいに原初の誓を破ると慈悲なく世界から追放、もしくは消滅」
その言葉に、苦虫を噛み潰したよな顔をする
「原初の誓、か。アレはどうも堅苦しくて嫌じゃ。そもそも《魔王は魔王城から出てはならない》とは何じゃ!良かろう!?自由欲しかろ!?」
同意を求めるように「クワッ!」とルシファーに顔を向けると
「そうよそうよ!私だって最新の化粧品とか買いに行きたかったのよ!それなのに《神(最高神含む)が天界を離れる事を禁ず》って何よ!?お出かけしたいじゃない!お洒落したいじゃない!心は乙女なのよ!」
「「ねー!「のー!」」
己を落ち着かせる為に二人は1杯「グイッ!」とカップの中身を飲み干した。
「ふう…。そう考えると貴様の創った現世は良かったのかもしれんな。ナンナと出会い、フェンリルと出会い、マーリンと出会い、バハムートと出会い、スプリガンと出会った。貴様もな最高神」
魔王は懐かしむ様に目を瞑った。まぶたの裏には彼らとの記憶が鮮明に映し出されている。
「ナンナと魔王ちゃんと私で人間の都市へお買い物に行ったこともあったわね。あ、もしかしてその時のティーセット?」
「いや、あれは流石に200年前の物じゃったからな取っ手が折れて割れてしまった。これはナンナが買って来てくれたものじゃ」
広角を軽く上げルシファーに見せびらかす。
「ふーん…いいセンスしてるじゃない。まぁ、私と同じ天使長をしてたこともあるしね。目利きに関しては無問題だろうし、加えてあの子の目はよく見えるから、魔王ちゃんの好みなんて見透かしてるわよ」
「……実に良い近侍じゃよ。気は回るし仕事も早い。特に、儂の下僕共はフリーダムすぎるからな」
「《巨狼》フェンリル、《天災》バハムート、《静謐なる魔女》マーリン。人間側からすると、どれも捨て置けない者たちを何故、手元においたのかしら?」
その質問を魔王は鼻で笑い、一つ、長いため息をつく。
「まぁ……あれじゃ。結局儂らは人間が好きじゃったんじゃよ」
「自ら滅ぼしたのに変な話じゃろ?」と憂いを帯びた顔で魔王は首を傾げた。
「良いのよ、神は彼らを見放しちゃったんだから。それに原初の誓に則り、近々滅ぼす予定だったのよ?手間が省けて清々したわ♪」
ルシファーは朗らかに笑い、心配ないといった様子で魔王を見つめた。
「ふん…そう言ってもらえると助かるな」
━━━分かっているのじゃ。
別にナンナに急かされたからと言って世界を滅ぼした訳ではない。
誰かが滅ぼさなければならなかった。
勇者でも良い。魔王でも良い。神でも良い。
俗に言う世界終末戦争が起こせれば誰が発端でも良かった。
だが、儂は嫌じゃった。
こやつが最高神となり原初の誓は有ってないようなものとなった。
魔王は魔王城に縛られることなく儂は世界を巡ることができるようになった。
1000年じゃ。
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じゃからこそ言える。この世界は
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人間同士の争いが定期的にあるものの、そこには必ず愛があった。
止めるべき場所で止められる世界になった。
儂の管轄外の魔物達も必要以上に狩りをせず、必要な数が生き、必要な数が死ぬ。
世界は至って正常。。。
そんなものを破壊するのは魔王の仕事じゃし特権じゃ。
じゃから正義にはさせぬし
何より儂がそれを望まん。
「世界は正常に機能しておったな。貴様は間違ってなかったのだろう」
「そうねぇ……私達は退屈だったけど、人間も魔物も、まぁ平和だったでしょうね」
「そうじゃな…」
「仕方ないわ…世界の寿命が近かったんだもの」
世界の寿命
世界の造られ方はこうじゃ。
ラグナロクにより生き残った種族の中の一人が次の世界の核となりその者の残りの寿命が次の世界の寿命となる。
その核を中心に最高神が新たな世界を創造していくのじゃ。
すでに“最高神”が“最高神となって”5000年以上は経っておるはず…。
5000年以上の寿命を持つものは神か魔王しかおらん。
つまりこの世界の核となったのは……
・・・・・。
魔王はそこで深いため息をつき、ココアを胃に流し込みガタッと勢い良く立ち上がった。
呼吸一回分の間を開け「…どうしたのよ」とルシファーはカップを持ち上げて目を瞑った。
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