山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

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第八章:逆流する情念と、終わってる責任論

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 異界のリングに、肉体と肉体がぶつかり合う「ヌッポヌッポ」という執拗な音が響き続ける。貞子の大きな胸に挟まれ、赤く腫れ上がった健一のソレは、もはや快楽というよりは熱病のような痛みを伴っていた。

 だが、健一の根底にあるのは、歪んではいるが「客」としてのプライドだった。

(……この嬢、プロ意識低すぎだろ。顔をボコボコにするM性感なんて聞いたことねえぞ……。グローブでちょっとグリグリするくらいが華だろうが!)

 顔面を殴られ、鼻血を流しながらも、健一の怒りは別の方向へと向いていた。そして彼は、朦朧とする意識の中で反撃の機を窺う。貞子の激しいピストン運動のリズムを読み、あえて出すタイミングを極限まで溜めて、一気に解き放った。

「これでも……食らえッ!!」

「ドビュッ! ドビュドビュドビュォッ!!」

 健一の鬱屈したエネルギーが、至近距離から貞子の顔面へとダイレクトに発射された。大量の白濁液が、貞子の美しいが青白い顔、そして見開かれた右目に容赦なくぶちまけられる。

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 女性怨霊協会:モニター前の凍りつき

「げ!!!」

 口裂け女が顔を背けた。
「ヤバッ、目に入ったじゃん……。あれ、呪い返しどころか、物理的な攻撃になってね?」

「ポ、ポポポ……(あんな大量に……あの人間、どれだけ溜めていたのです)」
 八尺様は手で口元を隠しつつも、ドン引きの表情を隠せない。

「貞子ちゃんの顔が真っ白……。これ、完全に『屈辱』の極致だよね」
 会長の花子さんはスマホの録画ボタンを押す指が止まっていた。最恐の怨霊が、人間の精液で視界を奪われる。そんな光景、長い怨霊史上でも前代未聞だった。

 ---

  リングの中:論理の崩壊

「!!!!!???」

 貞子は視界を遮る温い粘液の感触に、激しい困惑とパニックに陥った。怨霊として生きて(死んで)きた中で、顔に生きた人間の精をかけられるなどという経験があるはずもない。彼女はよろよろと立ち上がり、グローブの手で必死に顔を拭おうとする。

 しかし、その隙を健一は見逃さなかった。
 彼はボコボコに腫れた顔で立ち上がると、無防備になった貞子の腰に、正面から「むぎゅっ」と力一杯抱きついた。

「、、!!(なんだ!!)」

 貞子は反射的に健一を振り払おうとした。だが、次に聞こえてきたのは、殺意でも怒号でもなく、情けない男の「泣き声」だった。

「グスッ……グスッ……グスッ……」

 健一は貞子の白い腹部に顔を埋め、子供のように肩を震わせて泣き出した。

「……酷いよ、酷いよぉ……ッ。キスもしてくれないし……。人の顔ボコボコにして……ッ!」

 鼻血と涙を貞子の腹になすりつけながら、健一は支離滅裂な「被害者面」を開始した。彼の脳内では、もはやM性感のサービス不履行と、貞子への奇妙な執着が混ざり合い、とんでもない結論を導き出していた。

「こんなの、もう……お嫁にいけないよぉ……ッ! 責任取れよぉ!! え~んえ~んえ~ん!!」

 160cmのボコボコにされた全裸の男が、180cmの全裸で顔が白濁液まみれの怨霊に対し、「嫁にいけない」と泣き喚きながら責任を追及する。

 貞子は、完全に停止した。
 怒りで殴ろうとしていたグローブの手が、空中で静止する。彼女の19年の生涯(とそれ以降)において、「責任を取れ」などと言ってきた人間は一人もいなかった。ましてや、自分のことを「お嫁さん候補」のような文脈で語る男など。

 貞子の顔にかかった白濁液が、顎を伝って滴り落ちる。
 彼女の黒髪の隙間から覗く目は、泣きじゃくる健一を見下ろし、かつてないほど激しく揺れ動いていた。

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