山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

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第十一章:禁忌の受肉と、怨霊たちの戦慄

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 暗い霊界の雀荘『奈落』では、モニターに映し出された光景に、女怨霊たちがかつてない衝撃を受けていた。 画面の向こう、健一のワンルームマンション。そこには、DVDの世界から消えたはずの貞子が、実体を持ってそこに座り込んでいたのだ。

「!!! ちょっと、なんで現世にそのまま残ってるのよ!?」 会長の花子さんが、手に持っていたスマホを落としそうになりながら叫んだ。本来、呪いの世界に引きずり込んだターゲットを解放すれば、怨霊もまた自分の領域に戻るのが鉄則だ。

「摩訶不思議……。彼は、貞子の『呪いの境界線』を物理的にぶち壊して帰ってきたって事ですか?」 かしまさんが顎に手を当て、信じられないものを見る目でモニターを凝視する。

「ありえませんわ! 霊体が何の媒体もなしに、あんなにハッキリと受肉するなんて……。わたくしたちの常識が通用しませんわ!」 メリーさんが扇子を激しく仰ぎ、高飛車な声を裏返らせた。

「ポポポ(そうよ)、ポポポポ……」 八尺様も、困惑の色を隠せない。

「生への執着? ……いや、それだけじゃない気がするわね。貞子って元々そういうタイプじゃないし……」 口裂け女がギャルメイクの眉を寄せ、必死に「考え中」のポーズを取る。

 その時、雀卓に座り飴を舐めながら戦況(?)を見守っていた、無口な美少女・美々子が、静かに口を開いた。

「……1つ、仮説として考えられるのは。」

 その冷ややかな声に、場が静まり返る。美々子はモニターの中で、貞子の股間から垂れ、太ももを汚している「白濁した液体」を指差した。

「……あの男の精液を、直前に注入されたから。」

「「「…………ええっ!?」」」

 怨霊たちの絶叫が重なった。

「……生きた人間の、それもあんなに濃い生命エネルギーの結晶を、あんな量、ダイレクトに異界で流し込まれたら……。死の象徴である貞子の霊体に、一時的な『生の座標』が書き込まれてもおかしくない。彼女は今、健一の『生』を燃料にして、この世界に繋ぎ止められているのよ」

 美々子の淡々とした、しかし生々しい解説に、伽椰子は「あ、あ、あ……」と顔を覆い、俊雄はわけがわからないまま首を傾げた。

「つまり……貞子ちゃんは今、あのアホな健一って男の『精子』のおかげで、人間として受肉しちゃってると!?」 ありえないという風に花子さんが戦慄する。

「その通り。でも、あの男は『注文したラブドール』だと思ってる……。最悪のボタンの掛け違い……。」

 モニターの中では、健一が「返品しなきゃ」と独り言を言いながら、慌ただしく出勤していく姿が映し出されている。 そして部屋に残された貞子は、美々子の指摘通り、自分の内側から溢れ出す「熱」に戸惑うように、シーツをぎゅっと握りしめていた。

 彼女の体は、健一の生命力によって、呪いの怪物から「一人の女」へと書き換えられつつあったのだ。
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