山村貞子と、終わってる男の愛のライフプラン ――

優心

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第十九章:パーカーの残り香と、受肉した疼き

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「……ちょっとトイレ。勝手に冷蔵庫開けるなよ」

 健一が席を立ち、パタパタとバスルームの方へ消えていった。 静まり返ったリビング。貞子は一人、ソファに腰掛けていた。

 袖を通したばかりの、健一のパーカー。 厚手の生地からは、洗剤の匂いに混じって、健一自身の「生」の匂いが漂ってくる。それは先ほど彼女を洗い流した、清潔で、どこか甘い、人間の体温の匂いだった。

「……っ、……」

 貞子は、長い袖口に鼻を埋めた。 クンクン、と深く息を吸い込むたびに、脳の奥が痺れるような感覚に陥る。呪いのビデオの中で、何十年も孤独に震えていた彼女にとって、自分を物理的に、そして暖かく包み込んでくれるこの布切れは、健一そのものであるかのように感じられた。

 受肉したばかりの身体は、健一の「生」のエネルギーに敏感に反応し続けている。 先ほどまで彼にAI搭載ラブドール扱いされ「電源スイッチ」を探す彼に膣内を弄り回されていた熱が、まだ下腹部の奥に居座っていた。

「……あ、……ぁ」

 貞子は周囲を警戒するように見回し(怨霊特有の察知能力で、健一がまだ戻ってこないことを確認し)、パーカーの裾から、おずおずと手を差し入れた。

 ジーンズのジッパーを少しだけ下ろす。 自分の「割れ目」に指先が触れた瞬間、ビクンと肩が跳ねた。健一に乱暴に扱われていた時とは違う、自分自身の指が与える、細く鋭い刺激。

「……ん、……っ、ケン、イチ……。」

 彼のパーカーの中で、彼の匂いに包まれながら、自分の秘部を「いじる」。 それは、怨霊としてのプライドを完全に捨て去り、一人の「欲深い雌」として堕ちていく行為だった。彼女の指先は、健一が注ぎ込んだ「熱」をなぞるように、ヌルリと湿った場所をなぞり続けた。

 女性怨霊協会:もはや阿鼻叫喚の向こう側
 モニターを見ていた怨霊たちは、あまりにも「生々しい」貞子の自慰行為に、絶句していた。

「…………ガチじゃん。これ、ガチのやつじゃん」 口裂け女が、呆然と呟く。もはや笑う余裕すらなく、画面の「エロティシズム」に圧倒されていた。

「貞子のパーカー・クンクン……。しかもあの指使い。受肉したての女って、あんなに性欲が爆発するものなの?」 花子さんは、スマホの録画を止め、自分の地雷系メイクを直す手が震えていた。

「ポポポ……ポポ……♡(貞子さん、凄まじいですね……。あんなに健一くんの匂いに陶酔して……)」 八尺様は、あまりの刺激に鼻血が出そうになり、
 ハンカチで必死に抑えている。

「あ、あ、あ……(ダメよ貞子、彼が戻ってくるわ……!)」 伽椰子は、ハラハラしながらモニターに手を伸ばし、まるで親戚の娘の不祥事を止めるかのような顔でオロオロしていた。

 リビング:最悪のタイミング
 ガチャリ、とトイレのドアが開く音が響いた。

「……ふぅ。お待たせ、お待た……って、お前、何してんの?」

 健一が戻ってくると、そこには顔を真っ赤にし、パーカーの裾に手を入れたまま硬直している貞子の姿があった。

「!!!ッ…………。」
  
「…………。」

 貞子の指先は、まだ「そこ」に触れたままだ。 健一のパーカーから漂う、わずかなムスクの香りと、貞子の荒い吐息。

「……あ、いや、これは……その、電源スイッチが、故障してないか、確認を……。」

 貞子は、上目遣いで、涙目になりながら、蚊の鳴くような声で言い訳をした。 

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