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1話 この世界での、彼の最後
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日本のどこかにある静かな住宅街。最近クマやキツネ、アライグマやサルといった野生動物の被害が毎日のニュースを彩っているなか、彼は日課にしている散歩をしている。彼の住む地域ではほぼこれらの被害とは無縁であり平和な日常を送っている。
今の季節は夏真っ盛り。一ヶ月以上真夏日が観測されていて衣類を着ることさえ躊躇うほどの異常な暑さが続いているが、さすがに外に出るには裸でいるわけにはいかないので、彼はお気に入りの半そでの薄いTシャツに半そでのパーカー、動きやすいチノパンを着ている。少しでも暑さをしのぐ為につば付きの帽子も忘れない。
「さすがに暑すぎでしょ。やっぱ今日の散歩は止めればよかったかも」
現在はお昼を過ぎているのだがまだまだ涼しくなる気配はなく、彼は自販機で飲み物を購入しそれを飲みながらゆっくりと歩いている。特に目的地はないのだが、あまり運動が好きじゃない彼が唯一続けられているもので、一応ダイエットの名目も兼ねている。
彼の名前は『和真』、年齢は三十歳。体型はぽっちゃりでメタボほどではないが、おデブである。小中高とずっと野球を続けてきたが高校卒業と同時に野球も卒業し、今は仕事でパソコンとにらめっこする日々である。そんな彼は野球以外の運動があまり好きではなく、大学進学からずっと運動をしなくなるとどんどん太ってしまい、今では球児だった頃の面影も無くなっている。
そんな彼が気分転換にしていたのが散歩であり、今では毎日の日課として散歩をする習慣が身についている。さすがに彼も太っていく自分の体型に健康的なヤバさを感じ、最低限の運動として散歩を選んだとも言える。
そんな風に何気なく歩いていると、住宅街を少し抜けて大きなビルが点々としている駅前通りに来ていた。彼の自宅から歩いてくると片道四十分程度はかかるので彼は遠くに見えるビルのところをぐるっと回って帰ろうと思い歩みを進める。そこまで行くには横断歩道を通らないと行けず、今は赤信号だったので立ち止まり信号が変わるのを待っている。ずっと炎天下の中を歩き続けていた彼は全身汗だくで上着のパーカーが汗で変色している。周りにいる人も同じような感じだが、彼は忙しさからここ二日ほど風呂に入っていなかったため自分でも体臭が気になっていた。
(分かってますよ。ちゃんと帰ったら風呂に入りますよ。)
信号待ちをしている人たちが若干自分から距離をとっているように感じた彼はニオイがきついんだろうなと思い心の中で勝手に謝っていく。まぁ、誰だって太った人が汗だくで近くにいたら無意識にでも距離をとってしまうものだし、脳内で臭いと考えてしまっても視覚的に仕方ない部分もあるのだろう。
そんな中、彼の後ろの方からタッタッタとリズミカルな足音が聞こえてきた。少し振り向いて後ろを見ると小さな女の子が一人、こちらに向かって走ってきていた。その表情は切羽詰まっているような慌てているような感じでとても急いでいるのが見てわかる。その子は信号待ちをしている人たちの間をうまい具合に抜けてきて、先頭にいた彼の横をそのままの速さで駆け抜けていった。
歩行者の方の信号はまだ赤。なのだが信号が見えないほど急いでいたのか道路の向こうから車が来ているのに気づいていないようでそのまま道路に飛び出してしまった。車の運転手がクラクションを鳴らしつつ急ブレーキをしているが、素人目に見ても間に合いそうもないスピードで近づいてくる。その女の子もクラクションを聞いてから自分が道路に飛び出してしまったのに気づいたようで、音の方を見ると先ほどとは違った意味で驚いた表情をさせながらその場に立ち止まってしまう。
(ちょっ!?バカかっ!?)
周りの人たちが声を上げるがそんなものは意味がない。そんな中、彼は無意識なのか手を女の子に向かって伸ばしながら走り出していく。車が来る前に女の子の手を掴んだ彼は走り出したスピードを活かし、手を引きながら体を回転させて女の子を後ろへ投げ飛ばす。彼よりも断然小柄な女の子は引っ張られる勢いのまま投げられ無事に歩道の近くまで到着したが、反対に彼はその子と位置が入れ替わる形になってしまい向かってくる車が目の前にいる。
(あぁ、駄目だな)
その時の彼は回転させた勢いに足が絡めとられてしまいその場に倒れこんでしまう。動けないと瞬時に判断した彼は助かることを諦め近づいてくる車のヘッドライトの眩しさに目をつぶる。
(あの子のトラウマにならないように)
彼は女の子のことを最後に気遣い、意識を失っていった。
今の季節は夏真っ盛り。一ヶ月以上真夏日が観測されていて衣類を着ることさえ躊躇うほどの異常な暑さが続いているが、さすがに外に出るには裸でいるわけにはいかないので、彼はお気に入りの半そでの薄いTシャツに半そでのパーカー、動きやすいチノパンを着ている。少しでも暑さをしのぐ為につば付きの帽子も忘れない。
「さすがに暑すぎでしょ。やっぱ今日の散歩は止めればよかったかも」
現在はお昼を過ぎているのだがまだまだ涼しくなる気配はなく、彼は自販機で飲み物を購入しそれを飲みながらゆっくりと歩いている。特に目的地はないのだが、あまり運動が好きじゃない彼が唯一続けられているもので、一応ダイエットの名目も兼ねている。
彼の名前は『和真』、年齢は三十歳。体型はぽっちゃりでメタボほどではないが、おデブである。小中高とずっと野球を続けてきたが高校卒業と同時に野球も卒業し、今は仕事でパソコンとにらめっこする日々である。そんな彼は野球以外の運動があまり好きではなく、大学進学からずっと運動をしなくなるとどんどん太ってしまい、今では球児だった頃の面影も無くなっている。
そんな彼が気分転換にしていたのが散歩であり、今では毎日の日課として散歩をする習慣が身についている。さすがに彼も太っていく自分の体型に健康的なヤバさを感じ、最低限の運動として散歩を選んだとも言える。
そんな風に何気なく歩いていると、住宅街を少し抜けて大きなビルが点々としている駅前通りに来ていた。彼の自宅から歩いてくると片道四十分程度はかかるので彼は遠くに見えるビルのところをぐるっと回って帰ろうと思い歩みを進める。そこまで行くには横断歩道を通らないと行けず、今は赤信号だったので立ち止まり信号が変わるのを待っている。ずっと炎天下の中を歩き続けていた彼は全身汗だくで上着のパーカーが汗で変色している。周りにいる人も同じような感じだが、彼は忙しさからここ二日ほど風呂に入っていなかったため自分でも体臭が気になっていた。
(分かってますよ。ちゃんと帰ったら風呂に入りますよ。)
信号待ちをしている人たちが若干自分から距離をとっているように感じた彼はニオイがきついんだろうなと思い心の中で勝手に謝っていく。まぁ、誰だって太った人が汗だくで近くにいたら無意識にでも距離をとってしまうものだし、脳内で臭いと考えてしまっても視覚的に仕方ない部分もあるのだろう。
そんな中、彼の後ろの方からタッタッタとリズミカルな足音が聞こえてきた。少し振り向いて後ろを見ると小さな女の子が一人、こちらに向かって走ってきていた。その表情は切羽詰まっているような慌てているような感じでとても急いでいるのが見てわかる。その子は信号待ちをしている人たちの間をうまい具合に抜けてきて、先頭にいた彼の横をそのままの速さで駆け抜けていった。
歩行者の方の信号はまだ赤。なのだが信号が見えないほど急いでいたのか道路の向こうから車が来ているのに気づいていないようでそのまま道路に飛び出してしまった。車の運転手がクラクションを鳴らしつつ急ブレーキをしているが、素人目に見ても間に合いそうもないスピードで近づいてくる。その女の子もクラクションを聞いてから自分が道路に飛び出してしまったのに気づいたようで、音の方を見ると先ほどとは違った意味で驚いた表情をさせながらその場に立ち止まってしまう。
(ちょっ!?バカかっ!?)
周りの人たちが声を上げるがそんなものは意味がない。そんな中、彼は無意識なのか手を女の子に向かって伸ばしながら走り出していく。車が来る前に女の子の手を掴んだ彼は走り出したスピードを活かし、手を引きながら体を回転させて女の子を後ろへ投げ飛ばす。彼よりも断然小柄な女の子は引っ張られる勢いのまま投げられ無事に歩道の近くまで到着したが、反対に彼はその子と位置が入れ替わる形になってしまい向かってくる車が目の前にいる。
(あぁ、駄目だな)
その時の彼は回転させた勢いに足が絡めとられてしまいその場に倒れこんでしまう。動けないと瞬時に判断した彼は助かることを諦め近づいてくる車のヘッドライトの眩しさに目をつぶる。
(あの子のトラウマにならないように)
彼は女の子のことを最後に気遣い、意識を失っていった。
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