悪役令嬢をプロデュースして、お礼に最高の玉の輿を紹介してもらいますわ

ちゅんりー

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ついに、この日がやってきました。学園祭最終日、そして運命の夜会。

学園内は、私の「徹底したコストカット」と「見栄えの最大化」が融合した、最高にコスパの良い装飾で埋め尽くされています。

「ああ、見てくださいセシリア様。あの安い布地に魔法をかけて光らせただけのカーテン、まるで王宮の舞踏会のようですわ」

私は実行委員の腕章を誇らしげに叩きながら、控室でドレスアップ中のセシリア様に語りかけました。

「ルミエル、貴女って本当に……。でも、確かに綺麗だわ。あんなに少ない予算で、これほどの華やかさを演出できるなんて」

セシリア様は鏡の前で、私が選んだ「上品だが必要以上に宝石を散りばめていない(=万が一の際に換金しやすい)」ドレスを纏っています。

「当然ですわ。私の夢は、一銭の無駄もなく、かつ最高の贅沢を享受することですから! さあ、背筋を伸ばしてください。今夜、貴女はこの国の歴史を塗り替える『慈愛の公爵令嬢』として君臨するのです」

「……ええ。貴女の書いたシナリオ通りに、完璧に演じてみせるわ」

セシリア様の瞳には、かつての刺々しさは消え、静かな決意が宿っていました。

夜会の会場である大講堂は、熱気と光に包まれていました。

中心には、私が心血を注いで(そして業者を脅して)完成させた「光の噴水」が、魔法の輝きを放っています。

「(ふふふ、このショーが終われば、私の報酬は確定。そして、あの陰気なロバート先生とベアトリス様には、退場していただきますわ)」

私は会場の隅で、懐に忍ばせた「真実を映す魔石」の感触を確かめました。

すると、背後に冷ややかな気配が立ち上りました。

「……随分と物騒な顔をしているな、ルミエル。獲物を狙うハゲタカのようだぞ」

「失礼な! 私は今、崇高な正義の実現について考えていたところですわ、閣下」

振り返ると、そこには正装に身を包んだクロード様が立っていました。

その美貌と威圧感に、周囲の令嬢たちが息を呑むのが分かります。

「閣下、そのお姿……。まるで、どこかの国の王様みたいですわね。資産価値がさらに跳ね上がって見えますわ」

「褒め言葉として受け取っておこう。……準備はいいか。ロバートが、噴水の制御魔石に細工をしたようだぞ」

クロード様の低い声に、私はニヤリと笑いました。

「想定内ですわ。その細工こそが、彼らの自滅への特急券になりますの」

「そうか。……なら、私は特等席で観賞させてもらおう。……君の隣でな」

クロード様は私の腰を抱き寄せ、エスコートするように会場の中央へと導きました。

会場の視線が、中央のエドワード王子とセシリア様、そして意外な組み合わせの私たちに集まります。

「皆様、今宵のフィナーレを飾るのは、光と水の魔法ショーですわ!」

セシリア様が鈴を転がすような声で宣言しました。

その瞬間、ロバート先生が影から呪文を唱えるのが見えました。

本来なら、噴水が暴走してセシリア様を襲うはずの細工。しかし、私は事前に噴水の回路を「鏡の術式」に組み替えておいたのです。

「(さあ、ブーメランの時間ですわよ!)」

噴水から放たれたはずの暴走魔法が、見えない壁に跳ね返り、会場の端で高笑いしようとしていたロバート先生とベアトリス様を直撃しました。

「な、何だこれは! 魔法が、私の方へ!?」

「きゃあああ! ドレスが、私のドレスが!」

泥水にまみれた二人の姿に、会場は騒然となります。

「まあ、何ということでしょう! ロバート先生、貴方が噴水の調整を失敗なさったのですか?」

私はすかさず、野次馬の先頭に立って叫びました。

「ち、違う! これはセシリアが、私に呪いを……!」

「嘘をおっしゃい! 先生、貴方の懐から、噴水の暴走回路を起動する魔石が見えていますわよ?」

私はクロード様からお借りした「真実を映す魔石」を、高く掲げました。

魔石が不気味に黒く光り、ロバート先生の魔力特性と、噴水の暴走魔法を一本の線で繋ぎました。

「……これが、真実ですわ」

セシリア様が、哀れみの表情で彼らを見下ろしました。

「ベアトリス様、先生。私を貶めるために、この学園祭を台無しにしようとするなんて……。私は、悲しいですわ」

セシリア様の目から、一筋の美しい涙がこぼれました。

会場の生徒たちから、一斉に「卑怯者!」「セシリア様を侮辱するな!」という怒号が飛び交います。

エドワード王子も、冷徹な目でベアトリス様を見据えました。

「ベアトリス、ロバート。学園祭を汚し、公爵令嬢を暗殺しようとした罪、決して軽くはないぞ。……衛兵! この二人を連れて行け!」

「そんな! 殿下、お待ちください! 私はただ、マリアが……!」

ベアトリス様の叫びも虚しく、二人は会場から引きずり出されていきました。

静まり返った会場で、セシリア様は再び微笑みを浮かべました。

「皆様、お騒がせいたしました。……さあ、本当のショーを始めましょう!」

セシリア様が杖を振ると、今度こそ本物の「光の噴水」が夜空を彩りました。

拍手喝采の中、私は懐の算盤を弾き、勝利を確信しました。

「(ふふ、あははは! 大成功ですわ! これで私の報酬も、将来の安泰も確定ですわね!)」

「……満足か、小さな策士殿」

クロード様が、私の耳元で囁きました。

「ええ、大満足ですわ! 閣下、これで私の『働かない生活』、一気に現実味を帯びてきましたわね!」

「そうだな。……だが、君を『働かせない』代わりに、私を『楽しませる』という仕事は残っているぞ」

クロード様は私の指先を取り、そこに誓いを立てるように、深く接吻を落としました。

「(……ええい! この男、本当に一筋縄ではいきませんわね! でも、この心地よい敗北感……。悪くありませんわ)」

光り輝く噴水の下で、私の「玉の輿計画」は、かつてないほどの輝きを放ち始めたのでした。
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