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学園の片隅にある、普段は誰も来ない東屋。
そこで、この国の第一王子であるエドワード様が、信じられないほど丸まった背中で地面を見つめていました。
「……もう、ダメだ。私は、王子としての資格以前に、人を見る目がない」
「(おやおや。かつての自信満々だった王子様はどこへ行ってしまったのでしょう)」
私は、セシリア様から託された「元気づけの特製ハーブティー(という名の、お高そうな飲み物)」を手に、彼の前に立ちました。
「殿下。そんなところで地面の蟻と会話していても、失った信頼は戻ってきませんわよ」
私が声をかけると、殿下は力なく顔を上げました。
「ダントン嬢か。……笑いに来たなら、好きにしろ。私は、清楚を装った詐欺師に騙され、真実を語っていた婚約者を罵倒した、愚か者だ」
「ええ、その通りですわ。客観的に見て、現在の殿下の市場価値は暴落、ストップ安の状態ですわね」
私はハーブティーを机に置き、一切の容赦なく言い放ちました。
「す、すとっぷやす……?」
「殿下というブランドへの信頼がゼロになったということですわ。もし私が投資家なら、今すぐ殿下の株をすべて売り払って逃げ出しますわね」
「……はは、手厳しいな。やはり、私は王位を継ぐべきではないのかもしれない。セシリアにも、合わせる顔がないんだ」
殿下はまた、深くため息をつきました。
「(ダメですわ。このまま殿下が隠居なんてことになったら、セシリア様が王妃になれず、私の『最強の紹介状』がゴミ同然になってしまいます!)」
私の報酬を守るため、私は殿下の胸ぐらを掴みたい衝動を抑え、机を激しく叩きました。
「殿下! 甘えたことを仰らないでください! 失敗したなら、損失を取り戻すまで働いていただくのが筋というものですわ!」
「……え?」
「いいですか。殿下の現在の『負債』は、セシリア様への謝罪と、これからの誠実な態度でしか返済できないのです。ここで逃げ出すのは、借金を抱えたまま夜逃げする商人と同じですわよ!」
私は身を乗り出し、殿下の目を真っ直ぐに見つめました。
「いいえ、むしろ殿下はラッキーですわ。今回の件で『騙される痛み』を知った。それは、将来この国を経営する上で、最高の授業料を払って手に入れた経験ではありませんか!」
「授業料……。あんな無様な醜態が、か?」
「そうですわ! 一度も騙されたことがない世間知らずの王様より、痛い目を見て慎重になった王様の方が、よっぽど国民の資産を守れそうですもの。殿下、貴方は今、ようやく『高価な欠陥品』から『磨けば光る中古品』に昇格したのですわ!」
「……中古品。私は、王子なのだが」
殿下の顔に、少しだけ困惑と、そして生気が戻ってきました。
「そうですわ! だから、さっさと立ち上がって、その『誠意』という名の配当金をセシリア様に支払いなさい! 彼女は、まだ貴方のことを信じて待っているのですから!」
私が叫ぶと、殿下は呆気にとられたように私を見つめ、やがて小さく、しかし確かな声で笑い始めました。
「……ははは! 君は本当に、どんなことでもお金や商売に例えるのだな。だが、おかげで目が覚めたよ」
殿下はゆっくりと立ち上がり、服の汚れを払いました。
「そうだな。失った信頼は、これからの行動で返すしかない。……ダントン嬢、君に、そしてセシリアに、心から感謝する」
殿下の瞳に、かつての輝きとは違う、落ち着いた光が宿りました。
「(ふぅ……。なんとか倒産(隠居)は免れましたわね。これで私の五パーセントも、将来の玉の輿ルートも安泰ですわ!)」
私が満足げに頷いていると、背後の木陰からパチパチと拍手が聞こえてきました。
「見事な演説だったな。まさか、王子を『中古品』呼ばわりして立ち直らせるとは」
「クロード閣下! また、良いところで盗み聞きですか!」
クロード様が、面白そうに眼鏡を押し上げながら現れました。
「盗み聞きではない。君の『資産価値』がどこまで上がるか、見届けていただけだ。……エドワード、顔つきが変わったな。その調子なら、次の公務も任せられそうだ」
「……クロード。君には苦労をかけたな。これからは、君やダントン嬢に呆れられないような男になってみせるよ」
殿下はそう言い残すと、セシリア様の元へ向かって力強く歩き出しました。
残されたのは、私とクロード様。
「……さて、ルミエル。君の『教育』によって、王子は救われ、公爵令嬢は聖女となり、黒幕は一掃された。……君の計画、ほぼ完璧に遂行されたな」
クロード様が、私の腰を引き寄せ、耳元で低く囁きました。
「(……ひゃっ! 閣下、距離が近すぎますわ!)」
「そろそろ、君への『最終的な報酬』について、具体的に話し合おうか」
クロード様の熱い視線が、私の唇に落とされました。
私の「働かない生活」は、どうやら国家の最重要機密として、この男の腕の中で管理されることになりそうですわ!
そこで、この国の第一王子であるエドワード様が、信じられないほど丸まった背中で地面を見つめていました。
「……もう、ダメだ。私は、王子としての資格以前に、人を見る目がない」
「(おやおや。かつての自信満々だった王子様はどこへ行ってしまったのでしょう)」
私は、セシリア様から託された「元気づけの特製ハーブティー(という名の、お高そうな飲み物)」を手に、彼の前に立ちました。
「殿下。そんなところで地面の蟻と会話していても、失った信頼は戻ってきませんわよ」
私が声をかけると、殿下は力なく顔を上げました。
「ダントン嬢か。……笑いに来たなら、好きにしろ。私は、清楚を装った詐欺師に騙され、真実を語っていた婚約者を罵倒した、愚か者だ」
「ええ、その通りですわ。客観的に見て、現在の殿下の市場価値は暴落、ストップ安の状態ですわね」
私はハーブティーを机に置き、一切の容赦なく言い放ちました。
「す、すとっぷやす……?」
「殿下というブランドへの信頼がゼロになったということですわ。もし私が投資家なら、今すぐ殿下の株をすべて売り払って逃げ出しますわね」
「……はは、手厳しいな。やはり、私は王位を継ぐべきではないのかもしれない。セシリアにも、合わせる顔がないんだ」
殿下はまた、深くため息をつきました。
「(ダメですわ。このまま殿下が隠居なんてことになったら、セシリア様が王妃になれず、私の『最強の紹介状』がゴミ同然になってしまいます!)」
私の報酬を守るため、私は殿下の胸ぐらを掴みたい衝動を抑え、机を激しく叩きました。
「殿下! 甘えたことを仰らないでください! 失敗したなら、損失を取り戻すまで働いていただくのが筋というものですわ!」
「……え?」
「いいですか。殿下の現在の『負債』は、セシリア様への謝罪と、これからの誠実な態度でしか返済できないのです。ここで逃げ出すのは、借金を抱えたまま夜逃げする商人と同じですわよ!」
私は身を乗り出し、殿下の目を真っ直ぐに見つめました。
「いいえ、むしろ殿下はラッキーですわ。今回の件で『騙される痛み』を知った。それは、将来この国を経営する上で、最高の授業料を払って手に入れた経験ではありませんか!」
「授業料……。あんな無様な醜態が、か?」
「そうですわ! 一度も騙されたことがない世間知らずの王様より、痛い目を見て慎重になった王様の方が、よっぽど国民の資産を守れそうですもの。殿下、貴方は今、ようやく『高価な欠陥品』から『磨けば光る中古品』に昇格したのですわ!」
「……中古品。私は、王子なのだが」
殿下の顔に、少しだけ困惑と、そして生気が戻ってきました。
「そうですわ! だから、さっさと立ち上がって、その『誠意』という名の配当金をセシリア様に支払いなさい! 彼女は、まだ貴方のことを信じて待っているのですから!」
私が叫ぶと、殿下は呆気にとられたように私を見つめ、やがて小さく、しかし確かな声で笑い始めました。
「……ははは! 君は本当に、どんなことでもお金や商売に例えるのだな。だが、おかげで目が覚めたよ」
殿下はゆっくりと立ち上がり、服の汚れを払いました。
「そうだな。失った信頼は、これからの行動で返すしかない。……ダントン嬢、君に、そしてセシリアに、心から感謝する」
殿下の瞳に、かつての輝きとは違う、落ち着いた光が宿りました。
「(ふぅ……。なんとか倒産(隠居)は免れましたわね。これで私の五パーセントも、将来の玉の輿ルートも安泰ですわ!)」
私が満足げに頷いていると、背後の木陰からパチパチと拍手が聞こえてきました。
「見事な演説だったな。まさか、王子を『中古品』呼ばわりして立ち直らせるとは」
「クロード閣下! また、良いところで盗み聞きですか!」
クロード様が、面白そうに眼鏡を押し上げながら現れました。
「盗み聞きではない。君の『資産価値』がどこまで上がるか、見届けていただけだ。……エドワード、顔つきが変わったな。その調子なら、次の公務も任せられそうだ」
「……クロード。君には苦労をかけたな。これからは、君やダントン嬢に呆れられないような男になってみせるよ」
殿下はそう言い残すと、セシリア様の元へ向かって力強く歩き出しました。
残されたのは、私とクロード様。
「……さて、ルミエル。君の『教育』によって、王子は救われ、公爵令嬢は聖女となり、黒幕は一掃された。……君の計画、ほぼ完璧に遂行されたな」
クロード様が、私の腰を引き寄せ、耳元で低く囁きました。
「(……ひゃっ! 閣下、距離が近すぎますわ!)」
「そろそろ、君への『最終的な報酬』について、具体的に話し合おうか」
クロード様の熱い視線が、私の唇に落とされました。
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