悪役令嬢をプロデュースして、お礼に最高の玉の輿を紹介してもらいますわ

ちゅんりー

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「ふふ、ふふふ……。金貨。金貨の波に抱かれて眠る。これ以上の幸せがこの世にありましょうか」

私は今、クロード閣下の別邸にある「予備の金庫室」で、一人静かに至福の時を過ごしていました。

リリアーナ王女を資産の暴力で追い払ったあの日から、私は正式に閣下の婚約者として扱われるようになりました。

目の前には、約束通り譲渡された膨大な資産の目録と、その一部である現金の山。

「(ああ、もう一生どころか、来世まで働かなくていいですわ。……あ、前世も来世も興味ありませんけれど。今、この瞬間が全てですわ!)」

私は金貨を一枚手に取り、その冷たさを頬で味わいました。

これで私の「不労所得計画」は、完璧なゴールを迎えた。はずだったのです。

「……随分と楽しそうだな、私の『共同経営者』どの」

背後の扉が開き、この建物の持ち主であり、私の未来の夫となる男が姿を現しました。

「閣下! 驚かさないでくださいまし。今、資産の再編案を練っていたところですのよ(大嘘)」

「そうか。それは頼もしい。……なら、その『再編案』の第一歩として、この書類にサインをもらおうか」

クロード様が差し出したのは、羊皮紙に美しく綴られた一通の「契約書」でした。

「なんですの、これ。……えーと、なになに? 『レオンハート辺境伯夫人としての公務執行に関する合意書』?」

私は一字ずつ読み進め、その内容に目を剥きました。

「ちょっと待ちなさい! 外交晩餐会への出席、慈善団体の理事就任、さらには……閣下との『仲睦まじい姿』を週に三回は国民に披露すること!? これ、ただの重労働ではありませんか!」

「何を言う。私の資産を管理し、守るためには、相応の社会的地位と信頼が必要だ。……君は私の隣で、世界一幸せで、世界一欲張りな妻として君臨しなければならないんだ」

クロード様が、私の腰を引き寄せ、逃げ場を奪うように壁へと追い詰めました。

「嫌ですわ! 私は『働かない』ために貴方を選んだのです! こんなの、残業代の出ない過酷なサービス出勤ですわ!」

「残業代? ……いいだろう。公務に一回出席するごとに、君が欲しがっていたあの『南方の真珠』を一つずつ進呈しよう」

「……っ。あの、一粒で別荘が建つという、伝説の真珠ですか?」

「ああ。……それと、もし君が完璧に『愛し合う夫婦』を演じきれたら、ボーナスとして私の個人金庫の暗証番号をもう一つ教えてやる」

私の脳内で、算盤が激しい音を立てて火を噴きました。

「(……公務一回で別荘。……ボーナスで個人金庫。……三回出席すれば、一ヶ月で領地が一つ増える計算……!?)」

「どうした。君の得意な損得勘定だ。……これでも、割に合わないと言うのか?」

クロード様の顔が、これまでにないほど至近距離に近づきました。

彼の長い睫毛が、私の頬に触れそうなほどです。

「……閣下。貴方は本当に、性格が悪いですわ。私の弱点を、金貨の数まで把握していらっしゃる」

「君を飼いならすには、これくらいの餌が必要だからな。……さあ、サインしろ。ルミエル」

クロード様は私の手に羽ペンを握らせ、その上から自分の手を重ねました。

「(……ああ、もう。悔しいですけれど、この条件には勝てませんわ。不労所得よりも、超高額所得の方が魅力的だなんて、私の強欲さも底なしですわね!)」

私は震える手で、契約書の最後に自分の名前を書き込みました。

「……よし。これで君は、一生私のものだ。……仕事も、愛も、資産もな」

クロード様は満足げに微笑むと、私の唇に、契約完了の印として深く、甘い接吻を落としました。

「ん……っ。……閣下、今の接吻も、特別手当に入れてくださらないと困りますわよ」

「ああ。一生かけて、払い続けてやる」

私は彼の胸に顔を埋め、幸福な敗北感に浸りました。

こうして、私は世界一の資産を手に入れる代わりに、世界一忙しい「愛の公務」に身を投じることになったのです。

……まあ、報酬がこれなら、悪くない投資ですわね!
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