11 / 28
11
しおりを挟む
夜の帳が下り、ルベル渓谷は深い静寂に包まれていました。
昼間の騒動が嘘のように、虫の音だけが響いています。
リリィ様は「もう無理ですぅ……筋肉痛で体が動きません……」と泣き言を漏らしながら、夕食後すぐに泥のように眠ってしまいました。
私もベッドに入ったのですが、どうにも寝付けません。
原因は明白。昼間のレオンハルト様の言葉や、守ろうとしてくれた背中が、瞼の裏に焼き付いて離れないからです。
(……喉が渇いたわ)
私はベッドを抜け出し、キッチンへ向かいました。
水を一杯飲んで落ち着こう。そう思ってリビングを通ろうとした時。
「――眠れないのか?」
バルコニーの方から、低い声が聞こえました。
驚いて振り返ると、窓辺の椅子に腰掛け、月を見上げていたレオンハルト様と目が合いました。
彼は片手にワイングラスを持ち、月明かりに銀髪を輝かせています。
まるで一枚の絵画のような美しさに、私は一瞬、息を呑みました。
「……レオンハルト様こそ。ご自分の要塞へ戻られたのでは?」
「君が眠るまでは、近くにいようと思ってな」
彼は優しく微笑み、隣の椅子を目で示しました。
「少し、付き合わないか? 良い酒がある」
「……一杯だけですよ」
私は誘われるまま、彼の隣に座りました。
夜風が心地よく頬を撫でます。
注がれた赤ワインは、深いルビー色をしていました。一口飲むと、芳醇な香りが鼻腔をくすぐります。
「……昼間は、ありがとうございました」
私はグラスを見つめながら、素直に礼を言いました。
「貴方がいなければ、殿下を追い返すのに苦労したでしょうから」
「いや。君の『請求書攻撃』こそ見事だった。あんなに顔面蒼白になった王太子を見たのは初めてだ」
レオンハルト様はクツクツと笑いました。
「だが、油断はできない。彼は執念深い。特に、自分の所有物だと思っていたものを失った時はな」
「所有物……。ええ、まさにその通りですわ」
私は自嘲気味に笑いました。
「殿下にとって私は、便利な道具であり、飾りでした。愛されていたわけでも、一人の人間として見られていたわけでもない。……それが分かっていたから、私は感情を殺して『完璧な歯車』に徹していたのです」
そうです。
可愛げのない鉄の女。それが私の処世術でした。
期待しなければ傷つかない。淡々とこなせば、いつか終わる。
そう言い聞かせてきたのです。
「だから……分からないのです」
私は顔を上げ、レオンハルト様を見つめました。
「なぜ、貴方なのですか?」
「うん?」
「貴方は国一番の騎士団長。家柄も容姿も完璧で、王女殿下や他国の姫君からも引く手あまたでしょう。それなのに、なぜ私のような『可愛げのない元婚約者』に、そこまで執着なさるのです?」
「……まだ、信じられないか?」
「信じられません。同情や、一時的な気の迷いなら分かります。でも、貴方のそれは……重すぎます」
別荘を買う。家事をする。王太子に逆らう。
常軌を逸しています。
レオンハルト様はワインを一口飲み、少し遠い目をしました。
「スカーレット。君は覚えているか? 三年前の冬、王立図書館の奥にある『開かずの資料室』でのことを」
「資料室……?」
記憶を辿ります。
確かあの頃は、大寒波による不作で、地方の村々が飢饉に苦しんでいました。
しかし、前例がないという理由で予算が下りず、私は過去数百年の文献をひっくり返して対策を探していたのです。
「……ええ、覚えています。埃っぽくて、寒くて、カビ臭い部屋でした」
「あの日、私は巡回中にその部屋の前を通りかかった。深夜二時だ。明かりが漏れていたので覗いてみると……君がいた」
レオンハルト様は、懐かしそうに語り始めました。
「君は、高級なドレスの裾を埃まみれにして、床に座り込んでいた。髪はボサボサで、眼鏡もズレていた。片手には冷え切ったサンドイッチを持ち、もう片手で必死にページを捲っていた」
「……忘れてください。最悪の姿ですわ」
私は顔を覆いました。公爵令嬢としてあるまじき醜態です。
「いや、美しかった」
彼はきっぱりと言いました。
「その時の君は、誰に見せるためでもなく、ただ『誰かを救いたい』という一心で戦っていた。……その横顔を見た時、私は動けなくなったんだ」
「……」
「そして朝方、君はついに解決策を見つけた。『あった……!』と小さな声を上げて、ボロボロの顔で、本当に嬉しそうに笑ったんだ」
レオンハルト様の手が伸びてきて、私の頬に触れました。
その指先は熱く、私の心臓の鼓動を早めます。
「その笑顔を見た瞬間、私の心臓は射抜かれた。……ああ、この人は『氷の令嬢』なんかじゃない。誰よりも熱い情熱を持った、優しい女性なんだと」
「……買い被りです」
私は震える声で反論しました。
「私はただ、仕事だから……」
「仕事で、あんなに泣きそうな顔で喜べるか? 君は、他人のために本気で怒り、本気で悲しみ、本気で喜べる人だ」
彼の顔が近づきます。
アイスブルーの瞳が、熱を帯びて揺らめいていました。
「スカーレット。私は、完璧な公爵令嬢としての君に惚れたんじゃない。……泥だらけで、不器用で、頑張り屋の君に惚れたんだ」
「……っ」
言葉が出ませんでした。
今まで、誰も見てくれなかった部分。
隠して、押し殺して、誰にも理解されないと諦めていた「本当の私」。
それを、この人はずっと見ていてくれたのですか?
「三年間、ずっと片想いだった。君は王太子の婚約者だったから、遠くから見守ることしかできなかった」
彼の吐息がかかる距離。
「だが、今は違う。君は自由だ。……だから、もう遠慮はしない」
「レオンハルト、様……」
「好きだ、スカーレット。……愛している」
その言葉は、甘い毒のように私の全身に回りました。
心臓が痛いほど脈打ち、顔が沸騰しそうです。
業務的な契約でも、政治的な取引でもない。
純粋で、熱烈な、一人の男性からの求愛。
免疫のない私には、刺激が強すぎました。
「……ず、狡いですわ」
私は目を伏せ、かろうじて声を絞り出しました。
「そんな風に言われたら……計算が、狂ってしまいます」
「計算?」
「一人の穏やかな老後、という人生設計が……貴方のせいで、崩壊してしまいそうです」
私の言葉に、レオンハルト様は目を見開き、そして破顔しました。
「それは朗報だ。私の人生設計に、君を組み込む余地ができたということだな?」
「……検討中です。まだ、決裁は下せません」
「ふっ、厳しいな。だが、審査のテーブルに乗っただけでも前進か」
彼は私の手を取り、その甲に口づけを落としました。
チュッ、という小さな音が、静寂の中に響きます。
「待っているよ。君が私に『合格印』をくれるまで、何度でも口説き落とすつもりだ」
「……せいぜい頑張ってくださいませ。私の審査基準は厳しいですよ?」
精一杯の強がり。
でも、私の手は彼の手を振り払うことなく、むしろその温もりを求めて微かに握り返していました。
月明かりの下、氷の騎士と鉄の女の距離は、確実に縮まっていました。
ただ、私たち(特に私)は忘れていたのです。
この甘い空気のすぐ外側に、まだ解決していない「現実的な問題(王太子と法務大臣)」が迫っていることを。
「……おや?」
ふと、レオンハルト様が視線を森の方へ向け、目を細めました。
「どうなさいました?」
「いや……今、森の奥で鳥が騒いだ気がしてな」
「鳥? 夜行性のフクロウでしょうか」
「だといいが。……少し、嫌な予感がする」
彼は立ち上がり、鋭い視線で闇を見据えました。
その横顔は、先ほどまでの恋する男の顔から、再び「騎士団長」の顔に戻っていました。
私の心臓のドキドキとは別の意味で、胸がざわつきました。
まだ、終わっていない。
王太子ジュリアン。彼がただ引き下がるはずがない。
静寂な夜の向こう側で、次なる波乱の幕が上がろうとしていました。
昼間の騒動が嘘のように、虫の音だけが響いています。
リリィ様は「もう無理ですぅ……筋肉痛で体が動きません……」と泣き言を漏らしながら、夕食後すぐに泥のように眠ってしまいました。
私もベッドに入ったのですが、どうにも寝付けません。
原因は明白。昼間のレオンハルト様の言葉や、守ろうとしてくれた背中が、瞼の裏に焼き付いて離れないからです。
(……喉が渇いたわ)
私はベッドを抜け出し、キッチンへ向かいました。
水を一杯飲んで落ち着こう。そう思ってリビングを通ろうとした時。
「――眠れないのか?」
バルコニーの方から、低い声が聞こえました。
驚いて振り返ると、窓辺の椅子に腰掛け、月を見上げていたレオンハルト様と目が合いました。
彼は片手にワイングラスを持ち、月明かりに銀髪を輝かせています。
まるで一枚の絵画のような美しさに、私は一瞬、息を呑みました。
「……レオンハルト様こそ。ご自分の要塞へ戻られたのでは?」
「君が眠るまでは、近くにいようと思ってな」
彼は優しく微笑み、隣の椅子を目で示しました。
「少し、付き合わないか? 良い酒がある」
「……一杯だけですよ」
私は誘われるまま、彼の隣に座りました。
夜風が心地よく頬を撫でます。
注がれた赤ワインは、深いルビー色をしていました。一口飲むと、芳醇な香りが鼻腔をくすぐります。
「……昼間は、ありがとうございました」
私はグラスを見つめながら、素直に礼を言いました。
「貴方がいなければ、殿下を追い返すのに苦労したでしょうから」
「いや。君の『請求書攻撃』こそ見事だった。あんなに顔面蒼白になった王太子を見たのは初めてだ」
レオンハルト様はクツクツと笑いました。
「だが、油断はできない。彼は執念深い。特に、自分の所有物だと思っていたものを失った時はな」
「所有物……。ええ、まさにその通りですわ」
私は自嘲気味に笑いました。
「殿下にとって私は、便利な道具であり、飾りでした。愛されていたわけでも、一人の人間として見られていたわけでもない。……それが分かっていたから、私は感情を殺して『完璧な歯車』に徹していたのです」
そうです。
可愛げのない鉄の女。それが私の処世術でした。
期待しなければ傷つかない。淡々とこなせば、いつか終わる。
そう言い聞かせてきたのです。
「だから……分からないのです」
私は顔を上げ、レオンハルト様を見つめました。
「なぜ、貴方なのですか?」
「うん?」
「貴方は国一番の騎士団長。家柄も容姿も完璧で、王女殿下や他国の姫君からも引く手あまたでしょう。それなのに、なぜ私のような『可愛げのない元婚約者』に、そこまで執着なさるのです?」
「……まだ、信じられないか?」
「信じられません。同情や、一時的な気の迷いなら分かります。でも、貴方のそれは……重すぎます」
別荘を買う。家事をする。王太子に逆らう。
常軌を逸しています。
レオンハルト様はワインを一口飲み、少し遠い目をしました。
「スカーレット。君は覚えているか? 三年前の冬、王立図書館の奥にある『開かずの資料室』でのことを」
「資料室……?」
記憶を辿ります。
確かあの頃は、大寒波による不作で、地方の村々が飢饉に苦しんでいました。
しかし、前例がないという理由で予算が下りず、私は過去数百年の文献をひっくり返して対策を探していたのです。
「……ええ、覚えています。埃っぽくて、寒くて、カビ臭い部屋でした」
「あの日、私は巡回中にその部屋の前を通りかかった。深夜二時だ。明かりが漏れていたので覗いてみると……君がいた」
レオンハルト様は、懐かしそうに語り始めました。
「君は、高級なドレスの裾を埃まみれにして、床に座り込んでいた。髪はボサボサで、眼鏡もズレていた。片手には冷え切ったサンドイッチを持ち、もう片手で必死にページを捲っていた」
「……忘れてください。最悪の姿ですわ」
私は顔を覆いました。公爵令嬢としてあるまじき醜態です。
「いや、美しかった」
彼はきっぱりと言いました。
「その時の君は、誰に見せるためでもなく、ただ『誰かを救いたい』という一心で戦っていた。……その横顔を見た時、私は動けなくなったんだ」
「……」
「そして朝方、君はついに解決策を見つけた。『あった……!』と小さな声を上げて、ボロボロの顔で、本当に嬉しそうに笑ったんだ」
レオンハルト様の手が伸びてきて、私の頬に触れました。
その指先は熱く、私の心臓の鼓動を早めます。
「その笑顔を見た瞬間、私の心臓は射抜かれた。……ああ、この人は『氷の令嬢』なんかじゃない。誰よりも熱い情熱を持った、優しい女性なんだと」
「……買い被りです」
私は震える声で反論しました。
「私はただ、仕事だから……」
「仕事で、あんなに泣きそうな顔で喜べるか? 君は、他人のために本気で怒り、本気で悲しみ、本気で喜べる人だ」
彼の顔が近づきます。
アイスブルーの瞳が、熱を帯びて揺らめいていました。
「スカーレット。私は、完璧な公爵令嬢としての君に惚れたんじゃない。……泥だらけで、不器用で、頑張り屋の君に惚れたんだ」
「……っ」
言葉が出ませんでした。
今まで、誰も見てくれなかった部分。
隠して、押し殺して、誰にも理解されないと諦めていた「本当の私」。
それを、この人はずっと見ていてくれたのですか?
「三年間、ずっと片想いだった。君は王太子の婚約者だったから、遠くから見守ることしかできなかった」
彼の吐息がかかる距離。
「だが、今は違う。君は自由だ。……だから、もう遠慮はしない」
「レオンハルト、様……」
「好きだ、スカーレット。……愛している」
その言葉は、甘い毒のように私の全身に回りました。
心臓が痛いほど脈打ち、顔が沸騰しそうです。
業務的な契約でも、政治的な取引でもない。
純粋で、熱烈な、一人の男性からの求愛。
免疫のない私には、刺激が強すぎました。
「……ず、狡いですわ」
私は目を伏せ、かろうじて声を絞り出しました。
「そんな風に言われたら……計算が、狂ってしまいます」
「計算?」
「一人の穏やかな老後、という人生設計が……貴方のせいで、崩壊してしまいそうです」
私の言葉に、レオンハルト様は目を見開き、そして破顔しました。
「それは朗報だ。私の人生設計に、君を組み込む余地ができたということだな?」
「……検討中です。まだ、決裁は下せません」
「ふっ、厳しいな。だが、審査のテーブルに乗っただけでも前進か」
彼は私の手を取り、その甲に口づけを落としました。
チュッ、という小さな音が、静寂の中に響きます。
「待っているよ。君が私に『合格印』をくれるまで、何度でも口説き落とすつもりだ」
「……せいぜい頑張ってくださいませ。私の審査基準は厳しいですよ?」
精一杯の強がり。
でも、私の手は彼の手を振り払うことなく、むしろその温もりを求めて微かに握り返していました。
月明かりの下、氷の騎士と鉄の女の距離は、確実に縮まっていました。
ただ、私たち(特に私)は忘れていたのです。
この甘い空気のすぐ外側に、まだ解決していない「現実的な問題(王太子と法務大臣)」が迫っていることを。
「……おや?」
ふと、レオンハルト様が視線を森の方へ向け、目を細めました。
「どうなさいました?」
「いや……今、森の奥で鳥が騒いだ気がしてな」
「鳥? 夜行性のフクロウでしょうか」
「だといいが。……少し、嫌な予感がする」
彼は立ち上がり、鋭い視線で闇を見据えました。
その横顔は、先ほどまでの恋する男の顔から、再び「騎士団長」の顔に戻っていました。
私の心臓のドキドキとは別の意味で、胸がざわつきました。
まだ、終わっていない。
王太子ジュリアン。彼がただ引き下がるはずがない。
静寂な夜の向こう側で、次なる波乱の幕が上がろうとしていました。
0
あなたにおすすめの小説
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる