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「お嬢様! 大変です、王都から早馬が参りました! それも、王宮直属の使いです!」
ハンスが血相を変えて、一通の手紙を私の部屋に持ち込んできました。
カイル卿との甘いひとときから一夜明け、私が「浮かれた令嬢の顔」から「新作のコントの構成案」を練る顔に戻っていた時のことです。
「王宮から? ……まあ。ジークフリート様ったら、わたくしが恋しすぎて、ついに筋肉の名称をわたくしの名前にでも変えたのかしら?」
「そんなホラーな話ではありませんよ。……ほら、これを見てください」
ハンスから受け取った手紙には、豪華な金の封蝋。
そこには間違いなく、王家の紋章が刻印されていました。
「……どれどれ。『親愛なるベアトリスへ。君がいなくなってから、王都の空気は淀み、私の日常からは活気が失われた。君のあの……独特な切り返しがないと、誰も私の筋肉を正当に評価してくれないのだ』……何これ」
読み進めるうちに、私の顔は引きつっていきました。
「『リリアーナも、君の新作ネタがないことにひどく落胆し、最近では教会で祈る代わりに変顔の練習をしている。……ベアトリス、君を許すことにした。今すぐ王都へ戻り、再び私の傍らでその芸……いや、愛を披露せよ』……ですって」
私は手紙を握りつぶし、勢いよく机を叩きました。
「ふざけないで! どの口が『許す』なんて言っていますの!? わたくしは今、辺境で最高の観客(婚約者)を見つけたところなんですのよ!」
「お嬢様、落ち着いてください。……でも、これ、ただのラブレターではありませんね。王命に近い強制力を持たせています」
不機嫌の絶頂にいた私の元へ、カイル卿が顔を出しました。
彼の顔は、いつもの穏やかな笑顔ではなく、かつての冷徹な「鉄面皮」に戻っていました。
「……ベアトリス、その手紙を読んだか」
「カイル卿! ええ、読みましたわ! ジークフリート様ったら、相変わらず自分のことしか考えていない、救いようのないボケ担当ですわね!」
カイル卿は私の手から手紙を取り、内容を鋭い目で追い、それから小さく、けれど怒りを含んだ声で吐き捨てました。
「……『誰も私の筋肉を正当に評価しない』か。……馬鹿げている。彼は、君を何だと思っているんだ。……道具か何かだとでも?」
「道具だなんて、とんでもない。……わたくしのことは、最高級の『暇つぶし用玩具』くらいにしか思っていませんわ、あの筋肉ダルマは」
「……私は、君を渡さない」
カイル卿が、私の肩を強く掴みました。
その瞳には、私を失うことへの確かな恐怖と、王太子に対する静かな怒りが燃えていました。
「君は、私の……ヴァランシエンヌの大切な宝だ。……たとえ王命であっても、君をあの男の元へ帰すつもりはない」
「カイル卿……。素敵だわ、その独占欲! わたくしのギャグ並みに強烈ですわ!」
私は彼の胸に顔を埋めましたが、事態は笑い事ではありませんでした。
手紙の最後には、「拒絶する場合は、辺境伯領への支援を打ち切り、魔物討伐の予算も削減する」という卑劣な脅しが書かれていたのです。
「……卑怯な真似を。ジークフリート王子は、そこまでして自分を笑わせてくれる人間が欲しいのか……」
カイル卿の拳が、みしりと音を立てて握られました。
「いいえ、カイル卿。彼はただの寂しがり屋なんですの。……そして、わたくしの『ツッコミ』がないと、自分のアイデンティティを保てないほど、中身が筋肉でスカスカなんですわ」
私は顔を上げ、不敵な笑みを浮かべました。
「いいでしょう。そこまでおっしゃるなら、受けて立ちますわ。……ただし、ただ戻るだけではありません。王都の皆さんに、『本当のお笑い』の恐怖を教えて差し上げますわよ!」
「お嬢様……。その顔、完全に悪役令嬢を通り越して、大魔王の顔になっていますよ」
ハンスのツッコミを聞きながら、私は王都への「凱旋」……いえ、「爆笑テロ」の準備を開始しました。
カイル卿という最高のパートナーを得た今の私に、もはや恐れるものなど何一つありません。
「待ってなさいジークフリート様。……あなたの腹筋を、笑いすぎて本当のダルマに変えて差し上げますわ!」
波乱の予感を孕みつつ、物語の舞台は再び、あの騒がしい王都へと戻ろうとしていたのでした。
ハンスが血相を変えて、一通の手紙を私の部屋に持ち込んできました。
カイル卿との甘いひとときから一夜明け、私が「浮かれた令嬢の顔」から「新作のコントの構成案」を練る顔に戻っていた時のことです。
「王宮から? ……まあ。ジークフリート様ったら、わたくしが恋しすぎて、ついに筋肉の名称をわたくしの名前にでも変えたのかしら?」
「そんなホラーな話ではありませんよ。……ほら、これを見てください」
ハンスから受け取った手紙には、豪華な金の封蝋。
そこには間違いなく、王家の紋章が刻印されていました。
「……どれどれ。『親愛なるベアトリスへ。君がいなくなってから、王都の空気は淀み、私の日常からは活気が失われた。君のあの……独特な切り返しがないと、誰も私の筋肉を正当に評価してくれないのだ』……何これ」
読み進めるうちに、私の顔は引きつっていきました。
「『リリアーナも、君の新作ネタがないことにひどく落胆し、最近では教会で祈る代わりに変顔の練習をしている。……ベアトリス、君を許すことにした。今すぐ王都へ戻り、再び私の傍らでその芸……いや、愛を披露せよ』……ですって」
私は手紙を握りつぶし、勢いよく机を叩きました。
「ふざけないで! どの口が『許す』なんて言っていますの!? わたくしは今、辺境で最高の観客(婚約者)を見つけたところなんですのよ!」
「お嬢様、落ち着いてください。……でも、これ、ただのラブレターではありませんね。王命に近い強制力を持たせています」
不機嫌の絶頂にいた私の元へ、カイル卿が顔を出しました。
彼の顔は、いつもの穏やかな笑顔ではなく、かつての冷徹な「鉄面皮」に戻っていました。
「……ベアトリス、その手紙を読んだか」
「カイル卿! ええ、読みましたわ! ジークフリート様ったら、相変わらず自分のことしか考えていない、救いようのないボケ担当ですわね!」
カイル卿は私の手から手紙を取り、内容を鋭い目で追い、それから小さく、けれど怒りを含んだ声で吐き捨てました。
「……『誰も私の筋肉を正当に評価しない』か。……馬鹿げている。彼は、君を何だと思っているんだ。……道具か何かだとでも?」
「道具だなんて、とんでもない。……わたくしのことは、最高級の『暇つぶし用玩具』くらいにしか思っていませんわ、あの筋肉ダルマは」
「……私は、君を渡さない」
カイル卿が、私の肩を強く掴みました。
その瞳には、私を失うことへの確かな恐怖と、王太子に対する静かな怒りが燃えていました。
「君は、私の……ヴァランシエンヌの大切な宝だ。……たとえ王命であっても、君をあの男の元へ帰すつもりはない」
「カイル卿……。素敵だわ、その独占欲! わたくしのギャグ並みに強烈ですわ!」
私は彼の胸に顔を埋めましたが、事態は笑い事ではありませんでした。
手紙の最後には、「拒絶する場合は、辺境伯領への支援を打ち切り、魔物討伐の予算も削減する」という卑劣な脅しが書かれていたのです。
「……卑怯な真似を。ジークフリート王子は、そこまでして自分を笑わせてくれる人間が欲しいのか……」
カイル卿の拳が、みしりと音を立てて握られました。
「いいえ、カイル卿。彼はただの寂しがり屋なんですの。……そして、わたくしの『ツッコミ』がないと、自分のアイデンティティを保てないほど、中身が筋肉でスカスカなんですわ」
私は顔を上げ、不敵な笑みを浮かべました。
「いいでしょう。そこまでおっしゃるなら、受けて立ちますわ。……ただし、ただ戻るだけではありません。王都の皆さんに、『本当のお笑い』の恐怖を教えて差し上げますわよ!」
「お嬢様……。その顔、完全に悪役令嬢を通り越して、大魔王の顔になっていますよ」
ハンスのツッコミを聞きながら、私は王都への「凱旋」……いえ、「爆笑テロ」の準備を開始しました。
カイル卿という最高のパートナーを得た今の私に、もはや恐れるものなど何一つありません。
「待ってなさいジークフリート様。……あなたの腹筋を、笑いすぎて本当のダルマに変えて差し上げますわ!」
波乱の予感を孕みつつ、物語の舞台は再び、あの騒がしい王都へと戻ろうとしていたのでした。
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