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第一部
第九話 晩御飯なのか宴会なのか
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「さっ、話も終わったみたいだし、2人ともソファーに座って。晩御飯にしましょ!折角、優香が一緒に買い物に行って、翔太くんのリクエスト料理をたくさん作ったみたいだし…。」
ウチのお母さんが言えば、
「優香ちゃん、翔太の為に晩御飯作ってくれたの?もぉ~、いつでもうちにお嫁にいらっしゃいよ。大歓迎よ!翔太も隅に置けないわよねぇ~、パパ?」
って、翔太ママが言う。
父親達は、翔太に
「早速、胃袋つかまれたのか?」とか、「優香の料理、味見したか?美味いだろ?」
とからかわれていた。
キッチンにいる母の所に、エプロンを着けて行き、
「お母さん、ありがと。お母さんには絶対反対されると思ってたから…。」
と言ったら、
「お母さんね、築城のおじいちゃんおばあちゃんに反対されて、なりたかった仕事を諦めた事があるのよ。築城は基地があるでしょ?基地のパイロットさんに憧れて、基地に出入りする業者さんの会社に入りたかった事があってね。反対された時は凄く辛かったけど、その後、パパに出会えたから今は幸せなんだけど、あの時の辛さを子供には絶対に味あわせたくないって、パパと結婚する時に話しててね。だから、お兄ちゃんの時もだけど、優香にも自分が決めた道なら反対はしないで応援しようって。自分で決めた道なんだから、途中でギブアップしない事!優香ならやれる!あ、さっきの築城のパイロットさんに憧れてたってのは、パパには内緒よ。そこは、パパにも話してないんだから…」
ウィンクをして、小皿やコップが乗ったお盆を私に渡してくる。
「由美ちゃん、手伝うわよ!」
翔太ママがひょっこり顔をのぞかせた。
「翔太ママ、座ってて下さい。」
私が制したら、
「え~、未来のウチのお嫁ちゃんと一緒に家事したいんだもん!」
って、流しで手を洗いだした。ウチのお母さんが
「明里ちゃんは将来のお姑さんなんだから、優香、逆らわないで仲良くしといた方が賢明だと思うわよ?」
なんて言い出した。
「娘が居たらこんなのかな~って、雰囲気くらいは味あわせてよ。ウチは、男ばっかりだし娘が欲しかったのよ!優香ちゃん、何も取って食おうって思わないし、意地悪するつもりも無いから。多分、そんなことしたら、あそこに座ってる奴が何こそしてくるかわかんないし…。」
って、翔太の背中を指差して言った。
「そんな事ないですよ。翔太は、凄く優しいし、自分の事のように私のこと考えてくれてますけど…。私、凄く、果報者だと思います。」
と答えれば、母親’Sから、
「惚気、ご馳走様!」
って、帰って来た。
現役主婦2人と、見習い主婦?の私を含めた3人で食事をする準備を始めれば、あっという間にリビングのテーブルが食卓に変身した。
私の右側には翔太が座っている。大人達4人は、『祝杯だ!』とか言って、グラスにビールを注いでいた。
「じゃ、優香が初めて翔太くんの為に作った料理をみんなで頂こうか。」
お父さんが声をすれば、
「いただきます。」
と、みんなが答えた。
お父さん達は、その後に「乾杯!」って半分宴会に突入って感じになった。
料理に手をつけた翔太ママが、
「何!優香ちゃん、凄く美味しいわ!もう、いつでも翔太のお嫁さんに来れるわね。」
と褒めてくれた。
翔太は、味見をしていたからか他のリクエストした料理も含めて大人しくもくもく食べていた。あっと言う間に、お茶碗の中身が空になっていたので、
「翔太、おかわりは?」
と声をしたら、
「要る!」
って、お茶碗を持って立ち上がった。
「よそってくるから、座ってて。」
私がお茶碗を取り上げて、キッチンに向かう姿を見ていた両親’Sからは、
「新婚さんみたいだねぇ~。」
「初々しいわぁ~。」
って声が聞こえたけど、放置しといた。
ご飯をよそって翔太に手渡せば、
「ありがと。」
って、ちゃんとお礼を言って受け取ってくれた。いつの間にか、私の小皿におかずが綺麗に盛られていた。
「ちゃんと食えよ。」
右側の耳元で囁かれた私は、真っ赤になったのは言うまでもない。
翔太が小皿に盛ってくれていたおかずをなんとか食べ切って、お腹いっぱいになった私。翔太は相変わらず、食べていて、結局ご飯はお茶碗に3杯も食べてた。
男子の食欲、恐るべし…。
両家の両親達は、各々自分たちの好きなお酒を飲み出して、いつもうちに集まった時の宴会状態になっていた。
翔太も、お腹いっぱいになったのか、手を合わせて『ご馳走様』をした。
テーブルの上をこのままにしておくのもなんだし、キッチンに行きおつまみになりそうな乾き物とかをお皿に適当に並べてリビングのテーブルに置き、代わりに空いたお皿やおかずの入ったお皿を片付けて行った。
「片付け、手伝うよ。」
と、翔太がキッチンに顔を出したけど、
「食洗機使っちゃうから、大丈夫だよ。それより、両親’Sのあの状態どう思う?」
リビングで大宴会を繰り広げている4人を指差した。
「ふふっ。優香、両親’Sってネーミングいいね。あの人達は俺らが小さい時からいっつもあんな感じじゃん。きっと、もう俺らの事なんて眼中に入ってないぞ。お袋達なんか、今度の連休に温泉旅行にいこうって、パンフレットなんか見ながら酒飲んでるしさ。親父らは、子供自慢大会始めてる…。こうなったら、もう朝までコースなんじゃね?」
翔太の言う通り、多分久し振りに集まったのもあるだろう。ましてや、突然の子供同士のおつきあい宣言からの、婚姻届まで記入のなんちゃって婚約⁈
親達の思惑が叶ったのだから、嬉しいのかもしれない。
「翔太、少しテニスの練習に付き合ってくれる?食べすぎたし、少し体動かして体力つけたいし…」
「食った後、直ぐだけど大丈夫か?俺は、大丈夫だけど。」
心配してくれる翔太。
「片付けとかして、時間も経ったし、そもそもお腹いっぱいって言っても動けないほど食べてないから大丈夫だよ。この格好じゃ動けないからちょっと着替えてくるけど、翔太はどうする?着替え…。お兄ちゃんので良かったら、ジャージとかあるけど?」
「拓斗さんのか…。少しデカイかも知れないけど、貸してもらって良い?家まで帰って着替えるの面倒くさいし。」
リビングを抜け出して、2階へ上がりお兄ちゃんの部屋に入った。お兄ちゃんが県外の大学に入る為、うちを出て行った時のままの部屋。荷物は幾分か減ってはいるけど、帰省してきた時とかに使うからベッドや着替えなんかは残っている。クローゼットに仕舞ってあったジャージとTシャツを翔太に渡した。序でにクローゼットに置いてあったお兄ちゃんのラケットバックも取りだした。お兄ちゃんは同じ高校の硬式テニス部のOBだから、その影響もあって私も中学から硬式テニスを始めた。お兄ちゃんは、副キャプテンをしていて中学の頃から県大会でも常に上位入賞者だった。社会人になった今でも、会社のテニスクラブで時々汗を流してるって言ってた。
「着替え、ここで大丈夫だよね?私も着替えてくるね。」
足早に隣の自室に向かい、クローゼットからジャージとTシャツを取りだして着替え始めた。
トップスを脱ぎかけていたら、カチャっとドアが開いた音がした。
振り返ったら、入り口に翔太がいて驚いた。
「ご、ごめん。まだ着替えてたんだ…」
翔太が真っ赤な顔をしてドアを閉めた。
翔太に下着姿見られた…、キャミソール着てたけど恥ずかしっ…
私の体温が急激に上がり、顔が熱くなった。
急いで着替えて、入り口の側に置いてあるラケットバックを片手に部屋を出ると、廊下に座り込んでうなだれている翔太を見つけた。
そっと側まで行って正面にしゃがみ込んで、ラケットバックを置いて翔太の顔を覗き込んだ。
まだ、真っ赤な顔をして目をギュッと瞑っている。
「翔太?」
と声を掛けたら、ビックリして目を開けた。目の前に私の顔があるから更に驚いて廊下の壁に頭を打ち付けた。
「大丈夫?」
膝立ちで翔太の頭を壁から離したら、私の胸にポスッと翔太の顔が着地した。
慌てて退けようとする翔太の頭をギュッと抱きしめて、
「ちょっと驚いて、恥ずかしかったけど、気にしてないよ。」
と伝えた。
「ゆ、優香…胸…結構あるな…。」
ぼそっと翔太が呟いた。抱きしめていた手を離し、
「それなりには、成長してます!」
「エロい下着着てるし、ビックリした…」
って翔太が返してきた。
「普通のキャミソールだよ?今日はトップスの色に合わせて黒だったけど。エロいのって、ほら、レースとかいっぱい付いた感じのヤツなんじゃない?よく知らないけど…。」
って、言い返した。
落ち着きを取り戻した翔太。あんなに慌てる翔太の姿を見れるのは、多分、彼女で婚約者である私だけの特権だと思う。
翔太の手を取って、片手にはラケットバックを持ち
「行くよ!私の体力作りにも協力してね。優しい婚約者さん。」
ウチのお母さんが言えば、
「優香ちゃん、翔太の為に晩御飯作ってくれたの?もぉ~、いつでもうちにお嫁にいらっしゃいよ。大歓迎よ!翔太も隅に置けないわよねぇ~、パパ?」
って、翔太ママが言う。
父親達は、翔太に
「早速、胃袋つかまれたのか?」とか、「優香の料理、味見したか?美味いだろ?」
とからかわれていた。
キッチンにいる母の所に、エプロンを着けて行き、
「お母さん、ありがと。お母さんには絶対反対されると思ってたから…。」
と言ったら、
「お母さんね、築城のおじいちゃんおばあちゃんに反対されて、なりたかった仕事を諦めた事があるのよ。築城は基地があるでしょ?基地のパイロットさんに憧れて、基地に出入りする業者さんの会社に入りたかった事があってね。反対された時は凄く辛かったけど、その後、パパに出会えたから今は幸せなんだけど、あの時の辛さを子供には絶対に味あわせたくないって、パパと結婚する時に話しててね。だから、お兄ちゃんの時もだけど、優香にも自分が決めた道なら反対はしないで応援しようって。自分で決めた道なんだから、途中でギブアップしない事!優香ならやれる!あ、さっきの築城のパイロットさんに憧れてたってのは、パパには内緒よ。そこは、パパにも話してないんだから…」
ウィンクをして、小皿やコップが乗ったお盆を私に渡してくる。
「由美ちゃん、手伝うわよ!」
翔太ママがひょっこり顔をのぞかせた。
「翔太ママ、座ってて下さい。」
私が制したら、
「え~、未来のウチのお嫁ちゃんと一緒に家事したいんだもん!」
って、流しで手を洗いだした。ウチのお母さんが
「明里ちゃんは将来のお姑さんなんだから、優香、逆らわないで仲良くしといた方が賢明だと思うわよ?」
なんて言い出した。
「娘が居たらこんなのかな~って、雰囲気くらいは味あわせてよ。ウチは、男ばっかりだし娘が欲しかったのよ!優香ちゃん、何も取って食おうって思わないし、意地悪するつもりも無いから。多分、そんなことしたら、あそこに座ってる奴が何こそしてくるかわかんないし…。」
って、翔太の背中を指差して言った。
「そんな事ないですよ。翔太は、凄く優しいし、自分の事のように私のこと考えてくれてますけど…。私、凄く、果報者だと思います。」
と答えれば、母親’Sから、
「惚気、ご馳走様!」
って、帰って来た。
現役主婦2人と、見習い主婦?の私を含めた3人で食事をする準備を始めれば、あっという間にリビングのテーブルが食卓に変身した。
私の右側には翔太が座っている。大人達4人は、『祝杯だ!』とか言って、グラスにビールを注いでいた。
「じゃ、優香が初めて翔太くんの為に作った料理をみんなで頂こうか。」
お父さんが声をすれば、
「いただきます。」
と、みんなが答えた。
お父さん達は、その後に「乾杯!」って半分宴会に突入って感じになった。
料理に手をつけた翔太ママが、
「何!優香ちゃん、凄く美味しいわ!もう、いつでも翔太のお嫁さんに来れるわね。」
と褒めてくれた。
翔太は、味見をしていたからか他のリクエストした料理も含めて大人しくもくもく食べていた。あっと言う間に、お茶碗の中身が空になっていたので、
「翔太、おかわりは?」
と声をしたら、
「要る!」
って、お茶碗を持って立ち上がった。
「よそってくるから、座ってて。」
私がお茶碗を取り上げて、キッチンに向かう姿を見ていた両親’Sからは、
「新婚さんみたいだねぇ~。」
「初々しいわぁ~。」
って声が聞こえたけど、放置しといた。
ご飯をよそって翔太に手渡せば、
「ありがと。」
って、ちゃんとお礼を言って受け取ってくれた。いつの間にか、私の小皿におかずが綺麗に盛られていた。
「ちゃんと食えよ。」
右側の耳元で囁かれた私は、真っ赤になったのは言うまでもない。
翔太が小皿に盛ってくれていたおかずをなんとか食べ切って、お腹いっぱいになった私。翔太は相変わらず、食べていて、結局ご飯はお茶碗に3杯も食べてた。
男子の食欲、恐るべし…。
両家の両親達は、各々自分たちの好きなお酒を飲み出して、いつもうちに集まった時の宴会状態になっていた。
翔太も、お腹いっぱいになったのか、手を合わせて『ご馳走様』をした。
テーブルの上をこのままにしておくのもなんだし、キッチンに行きおつまみになりそうな乾き物とかをお皿に適当に並べてリビングのテーブルに置き、代わりに空いたお皿やおかずの入ったお皿を片付けて行った。
「片付け、手伝うよ。」
と、翔太がキッチンに顔を出したけど、
「食洗機使っちゃうから、大丈夫だよ。それより、両親’Sのあの状態どう思う?」
リビングで大宴会を繰り広げている4人を指差した。
「ふふっ。優香、両親’Sってネーミングいいね。あの人達は俺らが小さい時からいっつもあんな感じじゃん。きっと、もう俺らの事なんて眼中に入ってないぞ。お袋達なんか、今度の連休に温泉旅行にいこうって、パンフレットなんか見ながら酒飲んでるしさ。親父らは、子供自慢大会始めてる…。こうなったら、もう朝までコースなんじゃね?」
翔太の言う通り、多分久し振りに集まったのもあるだろう。ましてや、突然の子供同士のおつきあい宣言からの、婚姻届まで記入のなんちゃって婚約⁈
親達の思惑が叶ったのだから、嬉しいのかもしれない。
「翔太、少しテニスの練習に付き合ってくれる?食べすぎたし、少し体動かして体力つけたいし…」
「食った後、直ぐだけど大丈夫か?俺は、大丈夫だけど。」
心配してくれる翔太。
「片付けとかして、時間も経ったし、そもそもお腹いっぱいって言っても動けないほど食べてないから大丈夫だよ。この格好じゃ動けないからちょっと着替えてくるけど、翔太はどうする?着替え…。お兄ちゃんので良かったら、ジャージとかあるけど?」
「拓斗さんのか…。少しデカイかも知れないけど、貸してもらって良い?家まで帰って着替えるの面倒くさいし。」
リビングを抜け出して、2階へ上がりお兄ちゃんの部屋に入った。お兄ちゃんが県外の大学に入る為、うちを出て行った時のままの部屋。荷物は幾分か減ってはいるけど、帰省してきた時とかに使うからベッドや着替えなんかは残っている。クローゼットに仕舞ってあったジャージとTシャツを翔太に渡した。序でにクローゼットに置いてあったお兄ちゃんのラケットバックも取りだした。お兄ちゃんは同じ高校の硬式テニス部のOBだから、その影響もあって私も中学から硬式テニスを始めた。お兄ちゃんは、副キャプテンをしていて中学の頃から県大会でも常に上位入賞者だった。社会人になった今でも、会社のテニスクラブで時々汗を流してるって言ってた。
「着替え、ここで大丈夫だよね?私も着替えてくるね。」
足早に隣の自室に向かい、クローゼットからジャージとTシャツを取りだして着替え始めた。
トップスを脱ぎかけていたら、カチャっとドアが開いた音がした。
振り返ったら、入り口に翔太がいて驚いた。
「ご、ごめん。まだ着替えてたんだ…」
翔太が真っ赤な顔をしてドアを閉めた。
翔太に下着姿見られた…、キャミソール着てたけど恥ずかしっ…
私の体温が急激に上がり、顔が熱くなった。
急いで着替えて、入り口の側に置いてあるラケットバックを片手に部屋を出ると、廊下に座り込んでうなだれている翔太を見つけた。
そっと側まで行って正面にしゃがみ込んで、ラケットバックを置いて翔太の顔を覗き込んだ。
まだ、真っ赤な顔をして目をギュッと瞑っている。
「翔太?」
と声を掛けたら、ビックリして目を開けた。目の前に私の顔があるから更に驚いて廊下の壁に頭を打ち付けた。
「大丈夫?」
膝立ちで翔太の頭を壁から離したら、私の胸にポスッと翔太の顔が着地した。
慌てて退けようとする翔太の頭をギュッと抱きしめて、
「ちょっと驚いて、恥ずかしかったけど、気にしてないよ。」
と伝えた。
「ゆ、優香…胸…結構あるな…。」
ぼそっと翔太が呟いた。抱きしめていた手を離し、
「それなりには、成長してます!」
「エロい下着着てるし、ビックリした…」
って翔太が返してきた。
「普通のキャミソールだよ?今日はトップスの色に合わせて黒だったけど。エロいのって、ほら、レースとかいっぱい付いた感じのヤツなんじゃない?よく知らないけど…。」
って、言い返した。
落ち着きを取り戻した翔太。あんなに慌てる翔太の姿を見れるのは、多分、彼女で婚約者である私だけの特権だと思う。
翔太の手を取って、片手にはラケットバックを持ち
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