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桃源星編
決着
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さて、残りは15分。体力を温存してはいたが、それでもやはり疲労は溜まっている。一方のビティは相変わらず余裕そうである。
「こっからどうすんのか見ものだな。」
「…。」
とりあえず時間がない。俺はひたすらビティを追いかける。が、当然追いつくはずもない。それにビティも警戒しており、さっき捕まえたような手は通用しそうにない。また1から作戦を考えなければ俺に勝ち目はないだろう。だが、そうすぐに妙案は浮かんでこない。
ビティを追いかけ続けるうちに、気付けばもう残り時間は5分を切っていた。このままではまたビティに負けてしまう。しかし、まともに勝負しても勝てないことは明白である。
「おいおい。まさかそのままで追いつけるとでも思ってんのか?」
「まだまだこっからぁ!」
口ではそう言いつつも別に妙案が浮かんでいる訳ではない。どうする俺…。
いや、ある。成功するかは分からない。が、そんなことは言ってられない。
「どうした?やる気失せたか?」
ビティは俺の行動に疑問を呈した。
「いや、ちゃんと捕まえますよ。」
「じゃあお前は今何をしようとしてんだ?」
ビティがそう聞くのも当然だ。なにせ俺は木登りを始めたのだから。それにしても桃源星は凄い。地球にいる時よりもスムーズに上の方まで登ることが出来た。
「上まで登って何する気だ?」
「忘れたか?ここは桃源星だぜ?」
俺はビティの方に向かってジャンプした。ビティは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに距離を取ろうとした。だがもう遅い。俺はビティを捕まえる(実際は飛び乗るような形になってしまったが。)ことに成功した。
ドスン
「お前…イテーよ!」
「すいません…。でもこれで超能力は教えてくれますよね?」
「まだ時間は少し残ってるが…まぁいい。まさか木の上からジャンプしてくるとはな。」
「高い所からジャンプすれば距離があっても捕まえられると思ったので。上手くいって良かったです。」
「考えたな。超能力は明日教えてやるから今日はゆっくり休め。」
「あの…自分で言っといて難なんですが、本当にいいんですか?正直、スピードもスタミナもビティさんには全然及びませんでしたけど…。」
「確かに身体能力的な面で言えばお前はまだまだ物足りない。だがお前にはそれをカバー出来るだけの頭脳がある。それが今日改めて分かったから問題ない。2度も俺にタッチしたんだ。自信を持て。」
「ありがとうございます!」
「けど課題もあるからな。特にアツくなりやすいとことかな。まぁそれがいい時もあるんだが。お前俺を追いかけてる時ほとんどタメ口だったからな。」
「えぇ!全然気が付かなかった!すいません!」
「ま、それはいいんだけどよ。じゃ戻るぞ。」
「はい。」
翌日、俺はビティに超能力を教わった。
「まず、お前がどんな超能力を身につけたいか決めないとな。なんか考えてる能力とかあるか?俺的には放出型の能力の方が教えやすいしお前に向いてそうだから助かるんだが。」
ビティの能力は自分の射程範囲内の重力を自在に操るというもので、操る対象が放出されたビティのエネルギーに触れると能力が発動するらしい。
「あぁ。炎を放出する能力とか!どうですかね?」
「なんで炎なんだ?」
「なんとなくカッコ良さそうなので!」
「テキトーに決めた俺が言えることじゃないけどホントにそれでいいのかよ!」
「ホントは色々考えたいですけど…。でもいいんです。早く能力を覚えたいので。」
「そうか。ならいい。放出型はイメージが大事だ。例えば炎ならそれをイメージしながらエネルギーを放出する。それをひたすら繰り返すだけだ。」
「ちなみに強化型の場合はどうするんですか?」
「強化型は体の一部を強化する超能力だ。例えば右手でのパンチを強化するとなったら、ひたすら右手にエネルギーを込めて殴る。ただ強化型の超能力を覚える人間は元から身体能力に優れている場合が多いから習得も早い。だから全身が強化されてる能力者もいる。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「まぁお前にはあんま関係無いがな。とりあえず今日からひたすら炎をイメージしてエネルギーを放出する。試しにやってみろ。」
「はい。」
俺は目をつぶって頭の中で炎をイメージした。そして体内にあるエネルギーを外へ出した。まるでサウナに入ったかのように体から熱気が溢れ出る。
「炎が出た!」
そう思って目を開けると何やら黄色いモヤみたいなのが出ていた。
「これが体内エネルギーだ。お前はただ体内エネルギーを外へ出したに過ぎない。これを炎に変えるのは時間がかかる。」
その後も炎を出そうとするが、黄色いモヤしか出てこなかった。
「ま、始めたばっかだし当然だな。今日はこんなもんでいいだろ。あと、これとは別に今まで通りトレーニングは続けるぞ。」
「やっぱりそうですか。」
「ヒロ君の調子はどうです?」
ヒロへの指導が終わり、帰ろうとしていたビティはアダムに声を掛けられて立ち止まった。
「あ?どうもこうもねぇよ。今日から超能力を本格的に始めたんだからな。」
「そうですか。彼はどんな能力にしたんですか?」
「炎だとよ。理由はなんとなくカッコ良さそうだとさ。」
「…へぇ。これは面白い。」
「別に炎系の能力者は割といるだろ。」
「ま、そうですね。順調そうで何より。」
「あぁ。相変わらず時間はないけどな。」
「もう7月中旬ですからねぇ。」
「なんとか後2~3ヶ月で超能力をモノにして欲しいもんだがなかなか厳しいぞ。アイツはもっと時間がかかるかもな。」
「いや~どうでしょうかね。賭けますか?もしヒロ君が2ヶ月以内に超能力を覚えられなかったらご飯でも奢りましょうか。」
「2ヶ月以上かかったら?」
「リンゴ一年分。」
「お前は相変わらずリンゴ好きだな…。けど今回は俺が勝つぞ。よほどセンスがなきゃ2ヶ月で超能力を覚えるなんて無理だ。」
~2ヶ月後~
「ビティさん!超能力覚えましたよ!ほら!」
あれから2ヶ月経ち、俺は炎を出せるようになった。
「マジかよ…。」
余程驚いたのか、ビティは言葉を失っていた。心なしか少し落ち込んでいるようにも見えるが気のせいだろう。
「まだ微力ではありますけどね…。」
俺が一度に放出できる量はせいぜいコンロの弱火くらいだろうか。これではチャーハンを炒めることは出来ないだろう。
「いや、十分だ。そろそろ炎をイメージすんのも飽きたろ?」
「えぇ…まぁ。」
「よし。なら今から俺と戦うか。」
「こっからどうすんのか見ものだな。」
「…。」
とりあえず時間がない。俺はひたすらビティを追いかける。が、当然追いつくはずもない。それにビティも警戒しており、さっき捕まえたような手は通用しそうにない。また1から作戦を考えなければ俺に勝ち目はないだろう。だが、そうすぐに妙案は浮かんでこない。
ビティを追いかけ続けるうちに、気付けばもう残り時間は5分を切っていた。このままではまたビティに負けてしまう。しかし、まともに勝負しても勝てないことは明白である。
「おいおい。まさかそのままで追いつけるとでも思ってんのか?」
「まだまだこっからぁ!」
口ではそう言いつつも別に妙案が浮かんでいる訳ではない。どうする俺…。
いや、ある。成功するかは分からない。が、そんなことは言ってられない。
「どうした?やる気失せたか?」
ビティは俺の行動に疑問を呈した。
「いや、ちゃんと捕まえますよ。」
「じゃあお前は今何をしようとしてんだ?」
ビティがそう聞くのも当然だ。なにせ俺は木登りを始めたのだから。それにしても桃源星は凄い。地球にいる時よりもスムーズに上の方まで登ることが出来た。
「上まで登って何する気だ?」
「忘れたか?ここは桃源星だぜ?」
俺はビティの方に向かってジャンプした。ビティは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに距離を取ろうとした。だがもう遅い。俺はビティを捕まえる(実際は飛び乗るような形になってしまったが。)ことに成功した。
ドスン
「お前…イテーよ!」
「すいません…。でもこれで超能力は教えてくれますよね?」
「まだ時間は少し残ってるが…まぁいい。まさか木の上からジャンプしてくるとはな。」
「高い所からジャンプすれば距離があっても捕まえられると思ったので。上手くいって良かったです。」
「考えたな。超能力は明日教えてやるから今日はゆっくり休め。」
「あの…自分で言っといて難なんですが、本当にいいんですか?正直、スピードもスタミナもビティさんには全然及びませんでしたけど…。」
「確かに身体能力的な面で言えばお前はまだまだ物足りない。だがお前にはそれをカバー出来るだけの頭脳がある。それが今日改めて分かったから問題ない。2度も俺にタッチしたんだ。自信を持て。」
「ありがとうございます!」
「けど課題もあるからな。特にアツくなりやすいとことかな。まぁそれがいい時もあるんだが。お前俺を追いかけてる時ほとんどタメ口だったからな。」
「えぇ!全然気が付かなかった!すいません!」
「ま、それはいいんだけどよ。じゃ戻るぞ。」
「はい。」
翌日、俺はビティに超能力を教わった。
「まず、お前がどんな超能力を身につけたいか決めないとな。なんか考えてる能力とかあるか?俺的には放出型の能力の方が教えやすいしお前に向いてそうだから助かるんだが。」
ビティの能力は自分の射程範囲内の重力を自在に操るというもので、操る対象が放出されたビティのエネルギーに触れると能力が発動するらしい。
「あぁ。炎を放出する能力とか!どうですかね?」
「なんで炎なんだ?」
「なんとなくカッコ良さそうなので!」
「テキトーに決めた俺が言えることじゃないけどホントにそれでいいのかよ!」
「ホントは色々考えたいですけど…。でもいいんです。早く能力を覚えたいので。」
「そうか。ならいい。放出型はイメージが大事だ。例えば炎ならそれをイメージしながらエネルギーを放出する。それをひたすら繰り返すだけだ。」
「ちなみに強化型の場合はどうするんですか?」
「強化型は体の一部を強化する超能力だ。例えば右手でのパンチを強化するとなったら、ひたすら右手にエネルギーを込めて殴る。ただ強化型の超能力を覚える人間は元から身体能力に優れている場合が多いから習得も早い。だから全身が強化されてる能力者もいる。」
「なるほど。ありがとうございます。」
「まぁお前にはあんま関係無いがな。とりあえず今日からひたすら炎をイメージしてエネルギーを放出する。試しにやってみろ。」
「はい。」
俺は目をつぶって頭の中で炎をイメージした。そして体内にあるエネルギーを外へ出した。まるでサウナに入ったかのように体から熱気が溢れ出る。
「炎が出た!」
そう思って目を開けると何やら黄色いモヤみたいなのが出ていた。
「これが体内エネルギーだ。お前はただ体内エネルギーを外へ出したに過ぎない。これを炎に変えるのは時間がかかる。」
その後も炎を出そうとするが、黄色いモヤしか出てこなかった。
「ま、始めたばっかだし当然だな。今日はこんなもんでいいだろ。あと、これとは別に今まで通りトレーニングは続けるぞ。」
「やっぱりそうですか。」
「ヒロ君の調子はどうです?」
ヒロへの指導が終わり、帰ろうとしていたビティはアダムに声を掛けられて立ち止まった。
「あ?どうもこうもねぇよ。今日から超能力を本格的に始めたんだからな。」
「そうですか。彼はどんな能力にしたんですか?」
「炎だとよ。理由はなんとなくカッコ良さそうだとさ。」
「…へぇ。これは面白い。」
「別に炎系の能力者は割といるだろ。」
「ま、そうですね。順調そうで何より。」
「あぁ。相変わらず時間はないけどな。」
「もう7月中旬ですからねぇ。」
「なんとか後2~3ヶ月で超能力をモノにして欲しいもんだがなかなか厳しいぞ。アイツはもっと時間がかかるかもな。」
「いや~どうでしょうかね。賭けますか?もしヒロ君が2ヶ月以内に超能力を覚えられなかったらご飯でも奢りましょうか。」
「2ヶ月以上かかったら?」
「リンゴ一年分。」
「お前は相変わらずリンゴ好きだな…。けど今回は俺が勝つぞ。よほどセンスがなきゃ2ヶ月で超能力を覚えるなんて無理だ。」
~2ヶ月後~
「ビティさん!超能力覚えましたよ!ほら!」
あれから2ヶ月経ち、俺は炎を出せるようになった。
「マジかよ…。」
余程驚いたのか、ビティは言葉を失っていた。心なしか少し落ち込んでいるようにも見えるが気のせいだろう。
「まだ微力ではありますけどね…。」
俺が一度に放出できる量はせいぜいコンロの弱火くらいだろうか。これではチャーハンを炒めることは出来ないだろう。
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