宇宙大戦記

Uruka

文字の大きさ
10 / 11
桃源星編

2度目の勝負

しおりを挟む

「戦うって…。いくらなんでもそりゃ無茶な。」

 ビティは超能力の熟練者。それに対して俺はまだスタートラインに立ったばかりである。下手したら死んでしまう。

「もちろん手加減はする。それに予選までもうあと3ヶ月しかないんだ。そろそろ実戦経験を積まないきゃならん。」

「まぁ言われてみればそうですね。」

「実戦の前にアドバイスしとくぞ。まず基本的には相手と適度に距離を保て。そうすれば攻撃を回避出来る可能性がぐんと高まる。そして、攻撃を受けそうになったらその場所にエネルギーを集中させろ。」

「はい。攻撃面では何かアドバイスはありますか?」

「そうだな…。まぁさっきも言ったが相手と距離を保った状態でいることが大事だな。放出型の長所は離れた場所から攻撃出来ることだ。接近戦だと強化型の相手や自分より身体能力が優れた相手だと即死だからな。」

「分かりました。」

「じゃあ早速始めるぞ。」

 ビティの開始の合図で実戦練習が始まった。俺はビティに言われた通り、ビティから少し離れて様子を窺うかがう。すると、ビティの体には黄色いモヤが溢れ始めた。その直後、その黄色いモヤが塊となって俺に向かって迫ってきた。前回は黄色い塊に全く気付けなかったが、今回は目で追えている。

ヒュン

 一度交わしても次々に黄色い塊は飛んでくる。俺も反撃しなくては。そう思って俺は炎をビティに向かって放とうとした。が、その瞬間、逆に俺はビティの攻撃を食らってしまった。一瞬にして体が重くなった。攻撃に意識が行きすぎて避けるのが二の次になってしまった。

「考えてる暇なんてねぇぞ!無意識で炎を出せるようにしろ!走る時にいちいち右足を前に動かして…とか考えねぇだろ!」

「は…はい。」

 前回とは違って俺は攻撃を食らってもなんとか喋れるようになっていた。攻撃は食らったが成長が実感出来たのは良かったのかもしれない。

 とはいえ俺はまだしっかりと炎をイメージしないと炎は出せない。そこは要改善である。それにしても体が重い…。相変わらずえげつない能力である。だが、俺は解決策を知っている。俺はすぐに力を抜いた。

「同じ手を2度食らう程俺はアホじゃねぇ。」

 ビティはそう言うと俺が力を抜いた瞬間に迫ってきた。そして、

 バコッ

 俺はビティのボディーブローをモロに食らってしまった。ビティは放出型とは言え、そのパンチ力は凄まじかった。臓器を吐き出しそうなくらいの激痛である。

「安心しろ。手加減してるから死ぬことはない。まぁそう簡単には起き上がれないだろうけど頑張れや。」

 強烈な痛みはなかなか引かなかったが、俺はなんとか立ち上がった。このまま突っ伏したままでは前回と変わらない。まぁ前回は土壇場でビティの能力を見破ることに成功はしたわけだが。

 とにかく反撃しなくては。俺は炎をビティに向けて放とうとしたが、ボディーブローが効いていて力が入らない。そしてその隙にビティが再び攻撃を始めた。

「さて…何発まで耐えれるかな?」

 さっきとは異なり、ビティは黄色い塊を何発も俺に向かって放った。ボディーブローを食らったばかりの俺が避けられる訳がない。結局、2、3発程食らってしまった。

ドスン!

 さっきよりも威力が強い…。俺の体が重くなりすぎて、ついに地面にヒビが入った。そして、地面は割れ、俺は地面のさらに底へ沈んでいく。

ブォン

 しかし、スレスレの所で俺は宙に留まることに成功した。エアシューズのおかげで、俺は地面の底に打ち付けられずに済んだ。

 「ほう…。エアシューズも大分使いこなせるようになったな。まぁあまり意味は無いがな。」

 なんとか耐久しているが、やはりキツい。それにおそらくビティは全く本気を出していないだろう。もし本気だったら今頃あばら骨が捻れていただろう。

 俺は地上へ上がろうとしたが、どうやらビティはその瞬間を狙っていたらしい。俺はまたしてもビティの攻撃を受けた。

 「このままじゃワンサイドゲームだぜ?」

 クソッ!反撃のチャンスすらねぇ!だが、ビティの攻撃のカラクリはもう分かっている。エネルギーを0にして力を抜けばいいだけだ。

 だが俺はある違和感に気が付いた。体の力が抜けないのだ。勝手に力が入ってしまうのである。

 訳の分からないまま、俺は割れた地面の底に叩きつけられた。何が起こったんだ…?!

「何が起こったか分からねぇだろ?」

 見上げた先にいるビティがそう言った。確かにその通りである。

「俺の能力は重力を操る。重力は重ければ重い程強くなる。つまり、エネルギー量が多ければ多い程効果は絶大。つまり、前回俺の攻撃を受けた時よりエネルギー量が増大している分、簡単に能力が解除出来ないって訳だ。」

 なるほど…。言われてみればそうである。2発目の時も能力を解除するのに少し時間がかかった。だがその理論でいくとおかしい点がある。

「それなら一発目の攻撃が1番重くないとおかしくないですか?その時はまだエネルギー量をほぼ消費していないわけだし。」

「それはお前がエネルギーをまだ上手く使いこなせてないからだ。本来ならば体力=エネルギー量なんだが、お前の場合はエネルギーを出す時に、エネルギー量以上に体力を消費しちまってる。気付いてないかもしれないが、エネルギーを0にするには実はそれなりに体力を消費するんだ。だからさっきはお前の残りのエネルギー量よりも体力が下回り過ぎてエネルギーを0にすることが出来なかったんだ。」 

「なんとなくですけど意味は分かりましたよ…。でもそれってどうしたらいいんですか?」

「慣れるしかない。残り3ヶ月だが、そこまでに限りなくその差を0にするしかない。」

「分かりました…。」

「まぁキリがいいし今日はこの辺で終わりだ。これ以上やったらお前の骨がバキバキに折れかねないからな。後はゆっくり休め。」

「はい。」



 実戦練習が終わった後に、ビティはアダムの元へ向かった。

「おい!どう言うことだ?なんでヒロは2ヶ月で能力を会得してるんだよ!お前まさか…。さてはドーピングか?!」

 ビティは納得がいかないと言った感じでアダムを問い詰める。

「いやいや。突然押し掛けてきて随分な物言いですね。そんなことする訳がないでしょう。」

「じゃあなんで…」

「放出型の超能力を覚える上で1番大事なのはイメージを深めること。頭を使うのは彼の得意分野ですからねぇ。それに彼の努力は凄まじかったですよ。ヒロ君に頼まれて炎に関する資料を何冊か貸したのですが、片っ端から読み漁ってましたよ。」

「そうか。確かにアイツの長所を考えれば当然か。けど逆に言えばそれを見出した俺ってスゲェー。」

「そういうことにしときましょう。けど約束は守って下さいよ?」

 約束とは賭けの内容であったリンゴ一年分のことである。

「あぁ分かってるよ。まぁ冗談はさておきそれでも時間がないことに変わりはない。あと3ヶ月でどれだけ本戦出場者と渡り合えるかはまだ未知数だ。」

「まぁそれはそうですね…。けど大丈夫ですよ。」

「軽く言ってくれるな…。けど俺の予想以上にアイツは成長している。3ヶ月後が楽しみだ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

真実の愛のおつりたち

毒島醜女
ファンタジー
ある公国。 不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。 その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。 真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。 そんな群像劇。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...