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芽生える想い
しおりを挟むエリーナはアレクシスと過ごす時間が増えるごとに、彼に対する想いがますます深まっていることを実感していた。しかし、その想いをどう伝えるべきか、どう扱うべきかがわからず、日々の中で揺れ動いていた。アレクシスは依然として距離を置き、冷たい態度を取っていたが、その背後にある彼の孤独や苦悩を知るたびに、ますます心を引かれていった。
ある日、エリーナは公爵邸内の庭園で、アレクシスがひとりで歩いているのを見かけた。彼はまるで何かを考え込んでいるようで、いつもの冷徹な顔ではなく、どこか遠くを見つめる目をしていた。エリーナはその姿に心を打たれ、静かに彼の元へ向かって歩き出した。
「公爵様、お散歩ですか?」
エリーナの声に気づいたアレクシスは、振り向きもせずに答えた。
「ただ、少しの間、考え事をしていただけだ。」
その冷たい言葉に、エリーナは少しだけ胸が締めつけられるような感覚を覚えた。だが、彼が考え事をしているという言葉には、何か重い事情があるようにも感じられた。
「何を考えているんですか?」
エリーナは少し勇気を振り絞って尋ねてみた。すると、アレクシスは一度だけ彼女を見つめ、再び静かに歩き始めた。
「君が知る必要はない。」
その言葉に、エリーナは驚き、思わず足を止めた。しかし、すぐに気を取り直し、彼に続いて歩き出した。
「私はあなたのことをもっと知りたいんです。あなたが抱える悩みや、過去のこと。」
「過去のことなど、もう終わったことだ。」
アレクシスはその言葉をあまりにも冷たく発したため、エリーナはそれ以上何も言えなくなった。
それでも、彼が心のどこかでエリーナに対して少しでも開かれていると感じる瞬間があった。それが彼にとってどんな意味を持っているのか、エリーナにはわからなかったが、その微かな変化を見逃すことはなかった。
数日後、エリーナは再びアレクシスと一緒に過ごす機会を得た。この日は公爵邸で開催される小さなパーティーの準備があり、二人は忙しい時間を共に過ごすことになった。
「今日はお客様がいらっしゃるので、準備を手伝ってほしい。」
アレクシスはエリーナにそう言った。彼の指示通り、エリーナは食事のセッティングや、花のアレンジを手伝いながら、少しずつ彼との距離を縮めていった。
その間、二人の会話はそれほど多くはなかったが、エリーナが軽く微笑んだり、彼の些細な言動に反応するたびに、アレクシスの目が少しだけ柔らかくなった。それが、エリーナにはとても大きな意味を持っていた。
パーティーが始まると、エリーナは他の客と一緒に食事を取ることになり、アレクシスとも少し離れて過ごす時間が増えた。その間に、何度か彼の視線がエリーナの方へ向けられる瞬間があった。
その日の夜、パーティーが終わり、客が帰ると、エリーナはいつも通りに部屋へ戻ろうとした。しかし、その途中でアレクシスと再び顔を合わせた。
「お疲れ様でした。」
エリーナは自然に声をかけると、アレクシスは少しだけ立ち止まり、軽く頷いた。
「君も大変だったな。」
その言葉に、エリーナは驚きながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
「だが、君はもう少し自分を大切にしろ。」
アレクシスは突然、そんなことを言った。その言葉にエリーナは少し戸惑いながらも、心のどこかで温かいものを感じた。
「私が大切にするべきこと、ですか?」
「君の心だ。」
その言葉には強い意志が込められていたが、同時に優しさも感じられた。
エリーナはその言葉を胸にしまい込んだ。彼の中で何かが少しずつ変わり始めていることを感じながら、それでもまだ彼の心の奥深くには触れられない自分を痛感していた。
その翌日、エリーナはふとした瞬間に、アレクシスが少し優しい笑顔を見せたことを思い出していた。それは短い瞬間だったが、彼の冷たい外面の中にほんの少しでも温かさがあることを感じたからだ。
「公爵様、少しだけでも……」
エリーナは心の中で、彼との距離が縮まる日を信じて、少しずつ歩みを進めようと決意を新たにしていた。
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