8 / 28
8
しおりを挟む
一日の授業を終えたアンジェラは、セリアに誘われて図書館を訪れていた。昨日クインス校を案内した時は、蔵書整理のために入ることができなかったのだ。二人は思い思いの本を選んで借りると中庭に出て、ベンチに腰を下ろした。閲覧室は私語が禁じられているためだ。
「あら? あそこにいらっしゃるのって」
セリアが声を上げた。見ると、オーウェンが悠然と中庭を歩いていた。エリックの姿はなかった。声が聞こえたのか、オーウェンはアンジェラ達に気がつくと、こちらへ向かってきた。
「ああ、君は、留学生の」
セリアは立ち上がり、優雅な礼をした。
「改めまして、ラパルマン王国より参りました、セリア・マレーナ・カサードと申します。お会いできて光栄です」
「そうか、だが私も今はここの一学生だ。そう畏まらなくていい。是非クインス校での生活を、心ゆくまで楽しんでくれ」
「ありがとうございます」
オーウェンはアンジェラの方を向いた。
「ディライト。今日の歴史学の授業では話を聞かせてもらえたこと、感謝している。なかなか良い時間だったな」
「いえ。私の方こそ、とても楽しかったです」
アンジェラの頬は少し熱を帯びて、声も心なしか上擦っていた。
「それはコルネリウスの本か?私も好きだ」
「ほ、本当ですか?」
好きという言葉に、アンジェラはついどきっと反応してしまった。
「実は王立学院に入る頃まで体が弱くてな。熱を出して城から出られない間は、本ばかり読んで過ごしていた。そのコルネリウスの作品も、よく読んでいる」
「私も、これが一番好きです」
偶然見かけて、懐かしくなって借りた本を、オーウェンも読んでいたことを知って、アンジェラは嬉しく思った。
さらに、彼が王都の中心部にあるウィステリア校ではなく、自然豊かな郊外のクインス校に通っている理由も初めて分かった。
「読書の邪魔をしてすまなかった、失礼するよ」
オーウェンはそう言って去って行った。
「すごいわ。今日は2回も殿下とお話できたなんて、何だか信じられない……」
「面白かったわよ、さっきのアンジェラ」
「えっ、どうして?」
尋ねても、セリアは笑うばかりで答えてくれない。
「それにしても、噂通り素敵な方ね、オーウェン殿下」
「そうよね!」
思わず間髪入れずに返してしまった。オーウェンが褒められると、アンジェラの心も温かくなるようだった。
「まあ、私は騎士団にいるような屈強な方が好みだけど」
セリアの理想の男性像は、何とも意外なものであった。
「あら? あそこにいらっしゃるのって」
セリアが声を上げた。見ると、オーウェンが悠然と中庭を歩いていた。エリックの姿はなかった。声が聞こえたのか、オーウェンはアンジェラ達に気がつくと、こちらへ向かってきた。
「ああ、君は、留学生の」
セリアは立ち上がり、優雅な礼をした。
「改めまして、ラパルマン王国より参りました、セリア・マレーナ・カサードと申します。お会いできて光栄です」
「そうか、だが私も今はここの一学生だ。そう畏まらなくていい。是非クインス校での生活を、心ゆくまで楽しんでくれ」
「ありがとうございます」
オーウェンはアンジェラの方を向いた。
「ディライト。今日の歴史学の授業では話を聞かせてもらえたこと、感謝している。なかなか良い時間だったな」
「いえ。私の方こそ、とても楽しかったです」
アンジェラの頬は少し熱を帯びて、声も心なしか上擦っていた。
「それはコルネリウスの本か?私も好きだ」
「ほ、本当ですか?」
好きという言葉に、アンジェラはついどきっと反応してしまった。
「実は王立学院に入る頃まで体が弱くてな。熱を出して城から出られない間は、本ばかり読んで過ごしていた。そのコルネリウスの作品も、よく読んでいる」
「私も、これが一番好きです」
偶然見かけて、懐かしくなって借りた本を、オーウェンも読んでいたことを知って、アンジェラは嬉しく思った。
さらに、彼が王都の中心部にあるウィステリア校ではなく、自然豊かな郊外のクインス校に通っている理由も初めて分かった。
「読書の邪魔をしてすまなかった、失礼するよ」
オーウェンはそう言って去って行った。
「すごいわ。今日は2回も殿下とお話できたなんて、何だか信じられない……」
「面白かったわよ、さっきのアンジェラ」
「えっ、どうして?」
尋ねても、セリアは笑うばかりで答えてくれない。
「それにしても、噂通り素敵な方ね、オーウェン殿下」
「そうよね!」
思わず間髪入れずに返してしまった。オーウェンが褒められると、アンジェラの心も温かくなるようだった。
「まあ、私は騎士団にいるような屈強な方が好みだけど」
セリアの理想の男性像は、何とも意外なものであった。
1
あなたにおすすめの小説
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる