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第1章 犯罪制裁 編
変わりゆく世界
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シャワーを浴びるショウ。
「はぁ、疲れた……ん?」
ショウは外の音に続きシャワーを止め、耳をすませる。
「警報? 近いな」
ショウは大事とは捉えずに服を着て2人の元へ向かった。
「警報がなってるね」
「生存者だろ、珍しいな。」
「うぅ、この音嫌い!」
ロウは怖がって風呂上がりのショウに抱きついた。
「あぁ、ショウちゃんいい匂い………」
ショウは優しくロウの頭を撫でる。
「ショウ、例の薬は完成したのか?」
「あと1歩……いや、もう完成か、ちょっとだけ副作用が出るんだけどね」
「どんな?」
「体が耐えきれなくて死ぬ」
「お、おう、それはまた、極端だな」
「大変だったんだよ? ロウが、何かのジュースだと思ってこの前飲みそうになったんだから」
「それは笑えないな。」
「ラットで実験はしてるけど、失敗率が11%位かな?」
「まだ使えないな」
「飲む?」
「断る!!なぜ、勧めた!?」
「ジョークだよ、ジョーク」
このジョークを真顔で言っているので本当にジョークなのか分からない令武。
「ったく………っ!」
「……令武も気づいた?」
「なになに?──むぐっ!」
ショウと令武は外の異変に気づき神経を研ぎ澄ます。
「静かすぎる」
いつもは自動車が通る音が絶えないのだが、今は人が歩く音すら聞こえてこない。
「生存者が来たのか。令武、窓の外見てみて、そーっとね。」
「馬鹿な、ちょっとした都会だぞここ」
と言いつつも暗視ゴーグルを手に取り、窓の外から夜景を見ると、暗視ゴーグルを使う以前に
「っ! 明かり一つない……」
「電気を消そう、目立つから」
ショウはアジトの電気を消し、息を潜める。
「なんだろう、なにか来るね」
ショウは暗視ゴーグルを令武から受け取ると、窓の外を見渡す。
その時だった。
「っ!!」
地響きとともに数メートル離れた場所にあるビルが倒壊する。
「ロウ、令武、逃げるよ…来る…」
そう言うと、ショウは荷物を手短にまとめ、静かにアジトのあるビルの窓から脱出する。
「何なんだよいったい!」
令武はロウをお姫様抱っこで着地し、静かに下ろす。
ショウはロウの手を引く。
ビルとビルの間にあるちょっとした小道に入る。
「生存者だ、周りの奴らとっくに避難して───」
その時、ショウが目にしたのは物凄いスピードで、後方から走ってくる血まみれの人型生存者だった。
「っ!!令武!ロウ!走って!!」
ショウはロウの手を離し、荷物のアタッシュケースを令武に預けると、拳銃の狙いを生存者の頭に定め、引き金を引く。
放たれた弾丸は見事に生存者の頭に命中するが、生存者は減速することはなく、気がついた時にはもう目の前で近づいていた。
「しまっ───」
ショウの右側を生存者が通過する。
「えっ!?」
刹那、生存者は凄まじいスピードで、先に走っていたロウの両足を引きちぎる。
「っ!?ぎゃあああ!!!!」
ロウの悲鳴に令武は唖然として、生存者へ目を向けたその時だった。拳銃を持っているはずの腕は肘より先がちぎれ、生存者の右腕に収まっていた。
「ぐぁ!!!」
そして、生存者は、慈悲をかけているのか、すぐには殺さなかった。2人が苦しんでいる様子を見下ろしていた。
「グォォ───?」
「うわぁぁぁぁ!!!」
それを見たショウは怒りに我を忘れ、短剣を片手に突っ込むが
「───っ!!」
生存者は、残像を残しショウの背後に回り込む。
「(これ、知性のない生物の動きじゃない!!)」
後ろからの殺気、腕を振り上げ空気を切る音、ショウは全てを悟った。
「(嘘でしょ?ここまで積み上げて来たのに、ここまで頑張って来たのに! こんな奴に!! こんなバカに!!)」
ショウは振り向き
「殺されてたまるかぁぁぁああ!!!!」
短剣を生存者の胸に突き立てるが、刃が折れてしまう。
そして、生存者の振り抜いた拳を間一髪かわし、拳銃を至近距離で全弾撃ち込み、全て頭部に当てる。
「ど、どうだ……!!」
「グォォ……。」
生存者は怯むことなく、第2撃を繰り出すが、ショウはほぼ直感で距離をとり回避する。
「これでも喰らえ!!」
ショウは手にしていた拳銃を強力なレールガンにすると狙いを定め引き金を引─────
「ごぶっ!!!」
狙いが定まった時には生存者の足はショウの腹部にめり込んでいた。
だが、ショウも負けじと狙いを生存者の足に定め、引き金を引く。
生存者は左足を付け根から吹き飛ばす。
そして、ショウは近くの壁に叩きつけられる。
「……う、うぅ、ごぶっ!!」
ショウは盛大に吐血し、生存者はバランスを崩し、倒れ込む。
その時だった。
ショウは見てしまった。
いつの間にか移動した生存者が瀕死状態のロウを掴みあげ、耳の裏まで裂けた口で、丸呑みする瞬間を。
「……ロ、ロウ………!! ───っ!」
生存者は令武に不気味な目を向け両腕と片足を使い歩み寄る。
「や、やめろ、来るな!!」
「や、やめて……!!」
生存者は同じ手口で令武も丸呑みにする。
「シ、ショウ………!!」
令武は飲み込まれる瞬間、ショウをみて全てを託したように笑っていた。
そしてショウの目の前から令武とロウは姿を消した。
「あ、あ………や、やだ………」
「グォォ」
「………かえ……せ! 返せ………!!」
ショウは立ち上がるが手足に力が入らず、すぐに膝をついてしまう。
「返せ………!!」
意識が朦朧とする中、殺気だけは生存者に向いていた。
「……殺す……殺す殺す殺す殺す!!」
ショウは力を振り絞り、近くに落ちていたレールガンを拾い生存者に撃ち込む。だが
「………そんな……っ!!」
片腕で防がれてしまう。
撃ち出した弾となる鋭い鉄片は筋肉質の前腕にくいこんだまま生存者は腕を下ろす。
「ガグォォ……!!」
「(死ねない!死にたくない!仇を!あいつらのために!!)」
生存者は歩み寄る。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
レールガンを再度構える。
───刹那、生存者の姿が消える。
「───え!?」
気がつくと目の前にはG,S,Aの制服を肩からかけている金髪ツンツンヘアの男性が立っていた。
「よぉ、ガキ、助けてやるよ、離れな」
男はそう言うと生存者を吹き飛ばした腕を下ろし
「おい、後は任せた」
その声に合わせて、G,S,Aの制服を着た人々がショウを保護しに来る。
意識が朦朧とする中ショウは
「……(あいつは、私が………!!)」
ショウの意識はそこで途絶えた。
目を覚ますと清潔感溢れる天井が視界に入った。
「………っ!」
ショウは勢い良く起き上がろうとしたが腹部に激痛が走り、再び横になった。
いつの間にか着ていた病衣を脱ぎ、腹部を確認すると、包帯が巻いており、他にも怪我をした部分には処置が施されていた。
「……なんだよこれ………」
ショウは周りを見渡しながら、はだけた病衣を直す。
1人のためにはやけに広い病室だった。
「ここ……」
ショウは体に無理がないように静かに立ち上がり、白いカーテンを開け外を眺める。
高いビル郡の向こうに、橙色の夕日が見える。
「やっぱり、G,S,Aの本部……」
いつもは遠目に見ている建物と位置が一致する時点でここがどこか推測できた。
その時だった。
「おーい、大丈夫かー?」
病室の扉を開け、男性が入ってくる。
「あれ? 歩けんの?」
ショウは振り向き、男性に目を向ける。
「だれ? あんた…」
「まぁ、座れよ」
「令武は? ロウは!?」
「座れって」
男はショウの両肩を掴み近くの丸椅子に座らせる。
「………なに、なにが目的?」
「そんなに警戒しなくても……まぁ、無理もないか」
ショウは尚、男をにらみ続ける。
「王思 剣得だ、安心しろ捕まえたりはしない」
「どうだが、私、G,S,Aや公の機関は信用しない質でね」
「そうかい、で、君の名前は?」
「……はぁ? あんた、話聞いてた?」
ショウは素っ頓狂な声をあげる。
「………」
「………」
「シ、ショウムート=ロン=トゥルン、ショウだ。」
「ショウか、宜しくな」
剣得は手を差し出すが、ショウはそっぽを向いて握手をする気は無いようだ。
「……っ!!そうだ!! 奴は!? 生存者は!?」
「……あぁ、始末したよ…」
「なっ!?」
「?」
「……あ、あいつは私が……っ!!」
「無理だ、ガキ、お前が思ってる世界と、G,S,Aが生きてる世界は違う」
「……」
ショウは閉口してしまった。
「相手が悪かったな。同情するよ」
「お、お前なんかに私の気持ちが!!」
「分かる! 痛いほどな! 俺も“奴らに”親友を殺されている」
「………」
「なぁ、生存者を相手にするのは無理だ、1人ではな?」
「………」
「なぁ、協力しないか?」
「………やだ」
「あれ?」
「私は、1人で、1人で………」
ショウの頬を涙が伝う。
「あ、あれ?なんで……!!」
ショウは慌てた様子で涙を拭うが
「うっ、うぅぅ」
止まらない、ブレーキが壊れたように。
「うあああぁぁ…」
「よく、我慢したな、今まで」
剣得は泣きじゃくるショウを抱き寄せる。
「あぁ」
温かい、安心する、こんなことを感じたのはいつぶりだろうか。
「仇を取ろう、一緒に」
「そう言われて、私はG,S,Aに入ったって感じかなー」
「そんな事があったんですね。」
「たく、あの女ったらしめ、童貞のくせに」
「どうてい?」
「楓彩は……やっぱりいいや」
ショウは楓彩に過去のことを聞こうと思ったが、飲み込んだ。
「?」
「とにかく、早く風邪治して、試験に向けて勉強しないとね?」
「はい!」
「♪」
「ショウさん?」
「なに?」
「頑張りましょうね。」
「うん」
令武とロウのことは今でも時折、会いたいと思うことがある。
けど、これは過ぎたこと。
あの時、剣得が寄り添ってくれなかったらどうなっていただろう。
人外に奪われたものを、開けられた心の穴を、塞いでくれなかったら私はどうなっていただろう。
どちらにせよこれは“私の道”だ。振り返らない、もう二度と奪わせない。
そして、いつか、誰かの心の穴を塞ぐことが出来るなら───
「はぁ、疲れた……ん?」
ショウは外の音に続きシャワーを止め、耳をすませる。
「警報? 近いな」
ショウは大事とは捉えずに服を着て2人の元へ向かった。
「警報がなってるね」
「生存者だろ、珍しいな。」
「うぅ、この音嫌い!」
ロウは怖がって風呂上がりのショウに抱きついた。
「あぁ、ショウちゃんいい匂い………」
ショウは優しくロウの頭を撫でる。
「ショウ、例の薬は完成したのか?」
「あと1歩……いや、もう完成か、ちょっとだけ副作用が出るんだけどね」
「どんな?」
「体が耐えきれなくて死ぬ」
「お、おう、それはまた、極端だな」
「大変だったんだよ? ロウが、何かのジュースだと思ってこの前飲みそうになったんだから」
「それは笑えないな。」
「ラットで実験はしてるけど、失敗率が11%位かな?」
「まだ使えないな」
「飲む?」
「断る!!なぜ、勧めた!?」
「ジョークだよ、ジョーク」
このジョークを真顔で言っているので本当にジョークなのか分からない令武。
「ったく………っ!」
「……令武も気づいた?」
「なになに?──むぐっ!」
ショウと令武は外の異変に気づき神経を研ぎ澄ます。
「静かすぎる」
いつもは自動車が通る音が絶えないのだが、今は人が歩く音すら聞こえてこない。
「生存者が来たのか。令武、窓の外見てみて、そーっとね。」
「馬鹿な、ちょっとした都会だぞここ」
と言いつつも暗視ゴーグルを手に取り、窓の外から夜景を見ると、暗視ゴーグルを使う以前に
「っ! 明かり一つない……」
「電気を消そう、目立つから」
ショウはアジトの電気を消し、息を潜める。
「なんだろう、なにか来るね」
ショウは暗視ゴーグルを令武から受け取ると、窓の外を見渡す。
その時だった。
「っ!!」
地響きとともに数メートル離れた場所にあるビルが倒壊する。
「ロウ、令武、逃げるよ…来る…」
そう言うと、ショウは荷物を手短にまとめ、静かにアジトのあるビルの窓から脱出する。
「何なんだよいったい!」
令武はロウをお姫様抱っこで着地し、静かに下ろす。
ショウはロウの手を引く。
ビルとビルの間にあるちょっとした小道に入る。
「生存者だ、周りの奴らとっくに避難して───」
その時、ショウが目にしたのは物凄いスピードで、後方から走ってくる血まみれの人型生存者だった。
「っ!!令武!ロウ!走って!!」
ショウはロウの手を離し、荷物のアタッシュケースを令武に預けると、拳銃の狙いを生存者の頭に定め、引き金を引く。
放たれた弾丸は見事に生存者の頭に命中するが、生存者は減速することはなく、気がついた時にはもう目の前で近づいていた。
「しまっ───」
ショウの右側を生存者が通過する。
「えっ!?」
刹那、生存者は凄まじいスピードで、先に走っていたロウの両足を引きちぎる。
「っ!?ぎゃあああ!!!!」
ロウの悲鳴に令武は唖然として、生存者へ目を向けたその時だった。拳銃を持っているはずの腕は肘より先がちぎれ、生存者の右腕に収まっていた。
「ぐぁ!!!」
そして、生存者は、慈悲をかけているのか、すぐには殺さなかった。2人が苦しんでいる様子を見下ろしていた。
「グォォ───?」
「うわぁぁぁぁ!!!」
それを見たショウは怒りに我を忘れ、短剣を片手に突っ込むが
「───っ!!」
生存者は、残像を残しショウの背後に回り込む。
「(これ、知性のない生物の動きじゃない!!)」
後ろからの殺気、腕を振り上げ空気を切る音、ショウは全てを悟った。
「(嘘でしょ?ここまで積み上げて来たのに、ここまで頑張って来たのに! こんな奴に!! こんなバカに!!)」
ショウは振り向き
「殺されてたまるかぁぁぁああ!!!!」
短剣を生存者の胸に突き立てるが、刃が折れてしまう。
そして、生存者の振り抜いた拳を間一髪かわし、拳銃を至近距離で全弾撃ち込み、全て頭部に当てる。
「ど、どうだ……!!」
「グォォ……。」
生存者は怯むことなく、第2撃を繰り出すが、ショウはほぼ直感で距離をとり回避する。
「これでも喰らえ!!」
ショウは手にしていた拳銃を強力なレールガンにすると狙いを定め引き金を引─────
「ごぶっ!!!」
狙いが定まった時には生存者の足はショウの腹部にめり込んでいた。
だが、ショウも負けじと狙いを生存者の足に定め、引き金を引く。
生存者は左足を付け根から吹き飛ばす。
そして、ショウは近くの壁に叩きつけられる。
「……う、うぅ、ごぶっ!!」
ショウは盛大に吐血し、生存者はバランスを崩し、倒れ込む。
その時だった。
ショウは見てしまった。
いつの間にか移動した生存者が瀕死状態のロウを掴みあげ、耳の裏まで裂けた口で、丸呑みする瞬間を。
「……ロ、ロウ………!! ───っ!」
生存者は令武に不気味な目を向け両腕と片足を使い歩み寄る。
「や、やめろ、来るな!!」
「や、やめて……!!」
生存者は同じ手口で令武も丸呑みにする。
「シ、ショウ………!!」
令武は飲み込まれる瞬間、ショウをみて全てを託したように笑っていた。
そしてショウの目の前から令武とロウは姿を消した。
「あ、あ………や、やだ………」
「グォォ」
「………かえ……せ! 返せ………!!」
ショウは立ち上がるが手足に力が入らず、すぐに膝をついてしまう。
「返せ………!!」
意識が朦朧とする中、殺気だけは生存者に向いていた。
「……殺す……殺す殺す殺す殺す!!」
ショウは力を振り絞り、近くに落ちていたレールガンを拾い生存者に撃ち込む。だが
「………そんな……っ!!」
片腕で防がれてしまう。
撃ち出した弾となる鋭い鉄片は筋肉質の前腕にくいこんだまま生存者は腕を下ろす。
「ガグォォ……!!」
「(死ねない!死にたくない!仇を!あいつらのために!!)」
生存者は歩み寄る。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
レールガンを再度構える。
───刹那、生存者の姿が消える。
「───え!?」
気がつくと目の前にはG,S,Aの制服を肩からかけている金髪ツンツンヘアの男性が立っていた。
「よぉ、ガキ、助けてやるよ、離れな」
男はそう言うと生存者を吹き飛ばした腕を下ろし
「おい、後は任せた」
その声に合わせて、G,S,Aの制服を着た人々がショウを保護しに来る。
意識が朦朧とする中ショウは
「……(あいつは、私が………!!)」
ショウの意識はそこで途絶えた。
目を覚ますと清潔感溢れる天井が視界に入った。
「………っ!」
ショウは勢い良く起き上がろうとしたが腹部に激痛が走り、再び横になった。
いつの間にか着ていた病衣を脱ぎ、腹部を確認すると、包帯が巻いており、他にも怪我をした部分には処置が施されていた。
「……なんだよこれ………」
ショウは周りを見渡しながら、はだけた病衣を直す。
1人のためにはやけに広い病室だった。
「ここ……」
ショウは体に無理がないように静かに立ち上がり、白いカーテンを開け外を眺める。
高いビル郡の向こうに、橙色の夕日が見える。
「やっぱり、G,S,Aの本部……」
いつもは遠目に見ている建物と位置が一致する時点でここがどこか推測できた。
その時だった。
「おーい、大丈夫かー?」
病室の扉を開け、男性が入ってくる。
「あれ? 歩けんの?」
ショウは振り向き、男性に目を向ける。
「だれ? あんた…」
「まぁ、座れよ」
「令武は? ロウは!?」
「座れって」
男はショウの両肩を掴み近くの丸椅子に座らせる。
「………なに、なにが目的?」
「そんなに警戒しなくても……まぁ、無理もないか」
ショウは尚、男をにらみ続ける。
「王思 剣得だ、安心しろ捕まえたりはしない」
「どうだが、私、G,S,Aや公の機関は信用しない質でね」
「そうかい、で、君の名前は?」
「……はぁ? あんた、話聞いてた?」
ショウは素っ頓狂な声をあげる。
「………」
「………」
「シ、ショウムート=ロン=トゥルン、ショウだ。」
「ショウか、宜しくな」
剣得は手を差し出すが、ショウはそっぽを向いて握手をする気は無いようだ。
「……っ!!そうだ!! 奴は!? 生存者は!?」
「……あぁ、始末したよ…」
「なっ!?」
「?」
「……あ、あいつは私が……っ!!」
「無理だ、ガキ、お前が思ってる世界と、G,S,Aが生きてる世界は違う」
「……」
ショウは閉口してしまった。
「相手が悪かったな。同情するよ」
「お、お前なんかに私の気持ちが!!」
「分かる! 痛いほどな! 俺も“奴らに”親友を殺されている」
「………」
「なぁ、生存者を相手にするのは無理だ、1人ではな?」
「………」
「なぁ、協力しないか?」
「………やだ」
「あれ?」
「私は、1人で、1人で………」
ショウの頬を涙が伝う。
「あ、あれ?なんで……!!」
ショウは慌てた様子で涙を拭うが
「うっ、うぅぅ」
止まらない、ブレーキが壊れたように。
「うあああぁぁ…」
「よく、我慢したな、今まで」
剣得は泣きじゃくるショウを抱き寄せる。
「あぁ」
温かい、安心する、こんなことを感じたのはいつぶりだろうか。
「仇を取ろう、一緒に」
「そう言われて、私はG,S,Aに入ったって感じかなー」
「そんな事があったんですね。」
「たく、あの女ったらしめ、童貞のくせに」
「どうてい?」
「楓彩は……やっぱりいいや」
ショウは楓彩に過去のことを聞こうと思ったが、飲み込んだ。
「?」
「とにかく、早く風邪治して、試験に向けて勉強しないとね?」
「はい!」
「♪」
「ショウさん?」
「なに?」
「頑張りましょうね。」
「うん」
令武とロウのことは今でも時折、会いたいと思うことがある。
けど、これは過ぎたこと。
あの時、剣得が寄り添ってくれなかったらどうなっていただろう。
人外に奪われたものを、開けられた心の穴を、塞いでくれなかったら私はどうなっていただろう。
どちらにせよこれは“私の道”だ。振り返らない、もう二度と奪わせない。
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