生き残りBAD END

とぅるすけ

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第1章 犯罪制裁 編

それぞれの───

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「母さん!!」

 晴雲は見てしまった。
 自分の母親が死ぬところを。


 その後の記憶は途絶え、気がついた時には都心の安全な丘の上にいた。
 近くには相変わらず手を握っている小雨。
 自分達の家の方を向いて立っていた。
その時

「小雨!晴雲!」
「父さん……」「父さん……?」

 振り向くとG,S,Aの制服を着た晴雲達の父親が小走りで近寄ってくる。

「よかった、無事だったか!母さんと会ったか?」
「……っ!!」

 蘇る、まだ、あの光景が。
 手も足も出せず大切な人が消える瞬間が。
 
「……兄貴?」

 この場にいる家族で、自分だけが知る母の死。

「……晴雲?」

 父親は晴雲の異変に気づいたようだ。

「オエェっ!!」

 晴雲は嘔吐してしまった。
 その晴雲の姿に父親は全てを察し、涙を流した。

「……母さんが………!!」
「父さん? 兄貴?」

 小雨だけは今、何が起こっているのか、なぜ目の前の2人は泣いているのか、理解出来なかった。

「な、なんで……泣いてるの?母さんがどうかしたの?」
「っ!!」

 そう、今この真実を知って一番辛い思いをするのは小雨だった。
 小雨は家族を誰よりも大切にし、いつか、皆で揃うことが夢だった。
 父親は小雨を抱きしめることしか出来なかった。
 言葉は出なかった。


 それから二週間
 晴雲達の父親は仕事が落ち着いたので小雨と晴雲と一緒にいることにした。
 ある日の晩。

「なぁ、晴雲、高校はどうなった?」
「……第二志望が受かってたから、そこに行く」
「そうか……」
「……」
「……」
「なぁ?晴雲?父さんが──」
「父さん!」
「っ!」
「誤魔化さなくていい、あの時、なんで来なかったの? なんで母さん“1人で”俺達を助けに来るんだよ!」
「……っ!」

 晴雲は分かっていた。

「見れば分かるよ……規制線にはG,S,Aが撤退した様な跡はあったし、先に進んでみれば死んでいたのは明らかに生存者サバイバーによる外傷を負った死体だらけだったし、何より、母さんは無傷で汗をかいて走ってきた様子だった!」
「い、いやまて──」
「母さんはすごかったよ…危険な場所に避難している人達をまとめて俺らだけでも逃がそうと、乗り捨てられていた護送車を探してきて、挙句の果てには──っ!!」
「……仕方が無かったんだ」
「………はぁ?」

 閉口していた父親の口から出た子供じみた言葉に晴雲は素っ頓狂な声をあげる。

「……上からの命令だったんだ。あのタイプの生存者サバイバーは自らのテリトリーがあって、近づくにも危険だ、だから…待機しろ…と」
「……今あの生存者サバイバーはどうなったんだ?」
「海に逃げて以来、姿を表していない。」
「……そうか……」

 晴雲の肩から力が抜ける。

「……わかったよ、よく分かった……」
「……晴雲?」

 父親が晴雲に目を向けると

「“お前ら”(G,S,A)の無能さが……!!」

 この時、晴雲は笑っていた。
 晴雲の中で何かが壊れた。

 そして、それから三ヶ月。
 小雨は祖父の家で暮らすことになり、晴雲は一時期祖父の家で暮らしてはいたが、姿をくらませ、警察などの操作にも引っかからずに忽然と姿を消した。
 父親は晴雲と母親のことでストレスが溜まり、病床に付してしまった。

 更に三ヶ月
 父親は他界。
 小雨も引きこもりがちになり、学校へは行かなくなってしまった。
 そんな時だった。
 小雨が縁側に座って空を眺めていると

「小雨、久しぶりだな…」
「っ!? あ、兄貴!!」

 晴雲が姿を現す。
 小雨は祖父達を呼ぼうとするが

「静かにしてくれ、小雨」

 と言われ押し黙る。
 晴雲の目は虚ろで、前のように明るく優しい兄の姿ではなかった。

「なぁ、小雨、お前将来何になるか決まってるか?」
「……え?」
「もし親達を追ってG,S,Aに入るような事があったらいくらお前でも…殺すぞ?」

 唐突だった。

「え…え? まって、何言ってるのか分かんないよ!」
「俺と来い」
「ど、どこに…?」
「世界を変えるぞ」

 と小雨の右腕を引っ張る。

「嫌だ!!」
「っ!?」

 小雨は振りほどき、晴雲を突き飛ばす。

「あ、兄貴が何をしてるか知らないけど、帰ってきてよ! また一緒にいようよ!」
「……」
「もし、世界を変えるって兄貴が言うなら私は拒否するよ?」
「なぜ?」
「今はもう帰ってこないかもしれないけど、父さんと母さんがいた世界だもん! 私は……私は! この世界を守る!!」

 これが最初の兄への反抗だった。


 それから2人は会うことは無かったが、小雨は見事G,S,Aに入隊。
 そして、晴雲はSABERへ。
 それぞれの道を進んでいった。

  

「……り……ん……?」

 小雨が目を覚ますと、薄暗い部屋の中に人影が見える。まだ視野は狭く、ぼやけて見える。
 臨は目をつむって頷いていた。
 どうやら眠気と戦っているようだ。

「り…ん……」
「………?」

 その微かな声に臨は気づいた。

「小雨!? ままままってて!! ショウを呼んでくる!」

 ありえないスピードで飛び出すと、ありえない、と言うより、窓からショウをお姫様抱っこで連れて飛び込んでくるという非常識っぷり。

 間もなくして小雨の診察が始まる。

「小雨、見えてる?」

 小雨は頷く。

「手足の感覚はある?」

 小雨は再度頷く。

「痛みは? まだ少しあるでしょ?」
「大丈夫……」
「よかった、一応痛み止めは出しておくよ」
「ありがとう……」
「よかった!ほんとに良かったよ!小雨ぇ!!」

 臨はいつもの小雨の如く飛びつこうとするが、ショウに取り押さえられてしまう。

「ハーイどーどーどー。臨さん落ち着いてー。」
「さぁて、小雨、聞きたいことがあるけど明日にするよ、楓彩も来るだろうから明日は──」

その時、2人は小雨の異変に気づく。

「……い、いや………いやぁぁぁぁぁ!!!!」
「「────っ!!」」
「いや!…いやだ!!」

 小雨は両耳に手を当てふさぎこんでしまった。

「小雨!?」
「ちょっと! どうしたの!? 小雨!!」
「いやだ!…死にたくない!!…うあああ!!」

 小雨は泣き出してしまった。
 ショウは小雨の背中を擦り。

「大丈夫、大丈夫だから…」
「ううぅ…」

 臨はあまりの衝撃に、黙っていることしか出来なかった。


 翌日

「小雨、落ち着いた?」
「うん…」
「小雨さん!」

 小雨はその声がする方へ目を向けると今にも泣き出しそうな顔をした楓彩が走って近づいてくる。

「楓彩ちゃん…」

 小雨は布団の中から手を出すと楓彩の頭を撫でる。
 今回ばかりは楓彩もその手を握り返し、嫌がる様子は無かった。

「本当良かったです…」
「迷惑…かけたね…」

 楓彩の頭を撫でている手が段々、胸まで降りてくるが、楓彩は気付かず、小雨を見つめている。
 ショウは静かに小雨の楓彩にセクハラしている手をどけて本題を切り出す。

「さぁ、小雨、大丈夫? 話せそう? 」
「うん…頑張るよ」

 その後、小雨は襲われた時のことを洗いざらい話した。
 時おり見せる恐怖に歪んた顔はこの場にいたショウ、臨、楓彩、剣得の心を強く締め付けた。


 そして
剣得は覚悟を決める。

「これは、宣戦布告と受け取る、奴らは“俺と”本格的に喧嘩をしたいようだ」

 その顔は冷めて入るが、“怒り”そのものだった。
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