生き残りBAD END

とぅるすけ

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第1章 犯罪制裁 編

野郎ども

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「2人でかかってきな」
「「え?」」

 2人が驚愕するのも無理もない、仮にも2人は試験の上位2名で、強力な力の持ち主なのだから。

「い、いいんですか?」

 楓彩は心配そうに尋ねる。

「大丈夫大丈夫、片方は武器なしのハンデもあるんだから」

 と素っ気ない返事が返ってきた。


 そして始まった模擬戦闘。
 楓彩と瑛太の2人は動きやすい素材のトレーニングウェアに着替える。
 本部と同じような、方向感覚を失いそうになるほど、何も無い真っ白な部屋に3人は立っていた。

「少し時間を上げるよ!作戦でも考えな!」

 朝日は少し離れた2人に届くような声を響かせる。

「「………」」

 2人を緊張感が襲った。無理もない、なぜなら

「ひゅーっひゅー♪」

 目の前にいる朝日はよそ見をして下手な口笛を吹いているのだから。

「な、なめてる」
「なめてますね」
「鬼月さん、ちょっといい?」

 瑛太は楓彩に顔を近づける。

「鬼月さんの速さで攻撃を仕掛けようと思う、俺の雷撃で動きと視界を奪うから、隙を見つけて叩き込んで?」
「わ、分かりました」

 そして、2人は朝日の方へ向き直る。

「さぁて、始めようか」

──刹那

 瑛太は右腕を前に突き出し、青白い雷を放つ。
その雷は周囲の明かりを霞ませるほどに光っていた。
 しかし
 その雷撃は朝日を目の前にして離散する。
 そう、朝日の目の前には巨大な氷の壁が出来上がっていた。

「ちっ! ……鬼月さん!!」
「はい!!」

 楓彩はご自慢の神速で、瑛太の視界から姿を消す。
 それとほぼ同時に朝日の前に出来ていた壁が粉々になり、朝日の姿が露見する。

「瑛太さん!! (意外と硬かった!!)」
「っ!!(下の名前かよ!)」

 瑛太はすかさず雷撃を先程よりも高出力で放つ。

「……甘いな……」

 朝日は左腕を前に突き出し、全身を覆い隠す程度の氷を作り出し雷撃を防ぐ。

「鬼月さん!(さっきより氷が小さい!次の鬼月さんの攻撃で終わり──)」
「きゃあ!!」

 楓彩の悲鳴が響く。

「!?」

 瑛太が楓彩の方へ目線を送ると

「な、何ですかこれ!?」

 楓彩の下半身は朝日が作り出したであろう氷で固められ、身動きが取れないようになっていた。

「なに!?」

 瑛太は朝日の足元から自分たちの足元へかけて氷が伸びていることに気づく。

「攻撃に専念しすぎたな……」

 瑛太も朝日の策略に気づいたが、遅く、既に膝上まで凍結して動きを封じ込まれていた。

「くっ!!」

 感覚はあるが動けない。

「さぁて、チェックメイトだな……鬼月ちゃんも───」

 刹那、朝日は体制を反らし、楓彩の蹴りをかわす。

「(抜け出し───)」

 考える暇もなく、朝日こ後頭部に楓彩の膝蹴りが迫る。
 間一髪、地面から自分の後頭部にかけて氷を貼って防ぐと同時に楓彩の体全身に氷を付着させ、再度動きを止める。
 だが、風圧で朝日は前に吹き飛ぶ。
 そして空中で体制を立て直し見事な着地を決めると

「お、鬼月ちゃん……速いね」

 朝日の余裕な表情が崩れる。

「くーーっ!!ダメでしたか!」

 と、肩下まで氷付けの楓彩は悔しそうな表情をする。

「ははは、仮にも剣得の次に強いで有名な俺だからねぇ(にしてもあのスピードいったいどうやって……? 剣得はこの娘にどんな訓練をしてるんだ……)」
「?」
「あ、わるいね、氷すぐに溶かすから」

 と歩み寄ってくる。
 朝日は楓彩に付着している氷に触れる。
 次の瞬間、氷は溶けて水になり、辺りを濡らす。
 同じように瑛太を拘束していた氷も溶かし、解放する。

「へっしゅっ!」

 楓彩は流石に寒かったのか身震いしていた。
 確かに、辺りを見回すと、朝日が創り出した氷だらけで、巨大な冷蔵庫状態だ。

「鬼月ちゃん、寒いね、出よっか」
「は、はい」

 3人は訓練室からでる。

「温かーい」

 と楓彩は伸び伸びする。
 すると

「鬼月さん、神ヶ丘さんお疲れ様です」

 白髪の女性が声をかけて、毛布を差し出してくる。

「真希奈、あと、頼んでもいいか?」

 と申し訳なさそうに朝日が頼むと

「じゃあ、後で私も朝日さんにも頼みますね」

 と、首を傾げて笑った。

「あ、おう…」

 朝日は何か気まずそうに返事をする。
 するとショウは

「あんた自分の強さを自慢したかっただけでしょ……」

 と呆れた感じで言った。

「……トゥルンにはバレてたか……」

 その時、朝日は後ろにいる新人2人から寒気を感じる。
 恐る恐る振り返ると

「朝日さん……」
「………代表……」

 楓彩と瑛太の目には呆れと怒りが見て取れた。

「悪かった悪かった!! ……でも、2人ともいい所はあるよ」
「「いいところ?」」
「あぁ、神ヶ丘の考えた作戦は悪くなかったむしろ良かった、相手が悪かったがな? それにその電気系能力もなかなか強力じゃないか、これからはもっと、能力と身体能力を磨いていけ、そうすればまず負けることはないだろ」
「は、はい」

 朝日が急に真面目になるので少し戸惑った。

「鬼月ちゃんは可愛い」
「はい……………」
「………」
「………え?」
「え?」
「そ、それだけですか!?」
「え?いや、なんというかこじんまりとしていて可愛いよ…とても」
「いやいやいや!! そういった事ではなく!!それにそんな事ないです!!」
「?」
「はぁ、もういいです」

 楓彩はこれ以上何言っても無駄だなと言う感じでため息をして

「ショウさん、パトロールの時間ですよね? 行きましょ!」
「あ、うん」

 そうして、楓彩は着替えると、ショウの腕を引っ張って頬を膨らませて東区から出ていった。

「………いいんですか? 代表? 彼女──」

 真希奈はまたもや呆れた表情で何かを問おうとしたが

「いいんだよ、真希奈」

 と遮られてしまう。


「楓彩凄かったね?」
「何がですか?」

 日が沈むころ、2人はパトロールを開始していた。
 潮の香りがする海辺を通り、スラム街を抜け、スラム境界と言われる都心とスラムの間を抜けるコース。

「まさか、あの朝日を1歩でも動かせるんだから」
「?」

 楓彩はよくわからない様子で首を傾げる。

「“氷壁の凍海”で有名なんだから。」

 朝日はその名の通り、絶対の防御力を誇ることで、G,S,Aはもちろん悪党の中でも有名な話である。

「そ、そうなんですか……(そんなに強いんだ、あの人)」
「楓彩ちゃんは活躍できると思うよ?」
「そ、そうですか?」

 と楓彩は頭の後ろに手を当てて照れている様子だった。


 楓彩の仕事初日。
 このまま、何事もなく終われば良かったのだが、運命というのは皮肉なもので、恐れていた事態が発生する。


 日が沈み、街に明かりが灯り出した、島の中心に高くそびえ立つ、観光地として有名な摩天楼。
 その中にある、大人の雰囲気が漂うバー。

「朝日、久しぶりだな……」
「よう、遅れた……」

 剣得はカウンター席に座り、遅れてきた朝日に対して挨拶を交わす。
 やがて朝日も席に座ると

「マスター、こいつにもこれを頼む。」
「かしこまりました」

 剣得は自分と同じものを注文する。

「すまんな、剣得。これ奢りか?」
「んなわけ」
「だよね……」

朝日は笑い混じりに言う。

「なぁ、朝日、楓彩、どうだ?」
「あぁ、鬼月ちゃん?」
「鬼月ちゃん?」

 朝日の楓彩に対する呼び名に少し疑問をもったが、話が進まないので触れないことにする剣得。

「すごいと思うよ、まさかこの俺が体制崩すとは思わなかった」
「まぁ、俺が教えてるからな」

 剣得はどこか誇らしげな横顔を見せる。

「ふっ、恐れ入ったよ……なぁ、剣得」
「?」
「“あれから”何年経った?」
「さぁな、覚えていないし思い出したくもない」

 剣得は朝日の質問にシラを切った。

「早いなぁ、俺らはもうこんなにおっさんに近づいたしな」
「……そうだな……」

 2人は目線をやや上にあげ何か思いふけっていた。

「お前はもうそろそろ魔法使いだろ?」

 朝日は剣得を小馬鹿にするように笑いながら言う。

「ほっとけ」
「早く相手見つけないと……あ!まさか鬼月ちゃん?」
「は?」
「いやでも合法的じゃないな……14歳だし…でも、剣得は割とロリコンだし…」
「いやいや!楓彩は違うぞ!?」

 剣得は顔の前で手を振り、顔を赤面させて否定する。

「あっそう、んじゃ俺が食べちゃおっかな?」

 と悪戯な笑を浮かべる。

「そんな事したらいくらお前でもぶち殺す………!!」

 剣得の目は本気だった。
 赤面していたが。

「顔赤いぞー酔ったか?」
「うるせぇ、だいたいお前なぁ────」

 ───その時

 ドォォォ

 突然の爆音。
 2人はバーの大きな窓ガラスから夜景を見下ろすと、遠く、スラム境界の辺りのビルの谷間から爆炎が上がっていた。

「───楓彩!!」

 剣得はいち早く悟った。
 あの場所に楓彩がいると。
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