生き残りBAD END

とぅるすけ

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第2章 「征」編

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「ショウ? 入るぞー」

 剣得はショウの工房のドアをノックして開ける。

「コーヒー買ってきたぞー」

 とショウの作業机に買ってきた缶コーヒーを置く。

「ありがとう……」

 作業画面を見たまま、お礼をした。

「はぁ、ショウ、楓彩となんかあったのか?」

 剣得は聞くべき質問を投げかけた。

「……」

 ショウのキーボードを叩く指が止まる。

「どうしたんだよ……お前らが喧嘩なんて……」

 剣得はソファに腰をかける。

「……別に喧嘩って訳じゃないけど……」

 ショウは俯く。

「じゃあ、どうしたんだよ」
「……少し…カッとなっちゃって……強く言っちゃった……」

 ショウは自分も悪いと思っているが口が尖っていた。

「ショウが、怒るなんて珍しいな……まぁ無理もないか」

 確かに、今のショウの精神は不安定。
 いつ、小雨のように戦いを恐れ、発狂するか分からない。

「か、楓彩には謝っておいてくれる?」

 暗い表情で剣得に頼む。
 依然として剣得には横顔しか見せない。

「あぁ、分かったよ……何か困ったら呼んでくれ」

 剣得はこれ以上はショウのストレスになりかねないと思い、ソファから立ち上がり、工房を出た。


 剣得は昼時なので、家にいる楓彩に何かを食べさせるため、近くのコンビニに寄った後、一度帰宅することにした。
 そして、玄関の前で座って鳩や野良猫と言った動物とじゃれてる楓彩を見つける。

「やっぱりか……」

 剣得は薄々感づいていたが、楓彩は家の鍵を持っていなかった。

「あ、剣得さん……おかえりなさい……」

 楓彩は猫を放すと、立ち上がり、スカートについていたほこりを払う。
 から元気なのか、いつもと同じ笑顔だった。

「……ただいま……」

 剣得もそれに合わせていつもと同じ顔をする。
 その後、剣得が鍵を開け、楓彩は「シローン♪」と言ってリビングまでの廊下を走った。

「ほれ、缶詰」

 そう言って、剣得はレジ袋からツナ缶を取り出して楓彩に投げて渡す。

「っ! あ、ありがとうございますっ」

 すこし危ない様子でキャッチする。

「ご飯にしよう」

 剣得はそう言うと、コンビニで買った弁当二つをレンジで温め始める。
 その後、テーブルを2人で挟むように座り、食卓にはいつもと比べて質素なメニューが並んでいた。

「いただきます!」
「いただきます」

 そして2人は会話をすること無くそしゃくを続けていた。

「「………」」

 そして

「か、楓彩」
「ゴクッ……なんですか?」

 楓彩は口に入っている物を飲み込んでから返事をする。

「その、ショウが謝ってた……あまりに気にしないでやってくれ………」

 と楓彩と目を合わせないようにして話す。

「……」

 楓彩は押し黙った。
 箸の動きを止めず、おかずを口に運びながら。
 その沈黙が剣得には怖かった。
 もしも、2人の仲が崩れることになったら、剣得にとっての日常が壊れるようなものだから。

「…………モグモグ」

 楓彩は弁当を食べ終わると、元あったふたを閉め、割り箸を静かに置く。

「……何か言いましたか?」
「!? (き、聞こえてなかったんかいー!!)」

 剣得の頭の中に稲妻が走る。
 どうやら、剣得は怯えていたあまりに、声があまり出ていなかったようだ。

「そ、その、ショウが謝ってたぞ!?」

今度ははっきり言う。

「そ、そうですか…でも、私がいけないんです」

 楓彩は俯きながら柔らかな笑を浮かべる。
 しかし、少し悲しんでいるようにも見えた。

「……?」
「私が弱いから……」

 その時、楓彩の頬を伝った光。

「………つ、強くなりたい………!!」

 楓彩は強い瞳で剣得を見る。
 涙こそこぼれていたが、「強くなりたい」その一心を感じさせる。
 いい顔をしていた。
剣得はその顔を見て

「ふっ、分かったよ、特訓を付けてやる、涙拭けよ…」
「うっうぅ、……は、はい”……」

楓彩は袖で涙を拭う。

「よし! じゃあ、楓彩に渡す物がある」

 そう言うと、剣得は立ち上がり、楓彩を手招きする。
 そして、普段使わないため、物置になっている玄関から入って左手にある部屋の前で止まる。
 そして、剣得はドアを押し開けると
 
「うわっ!汚ったな!」

 ドアを開けた瞬間、ホコリが立ち、臭いもいいものとは言えなかった。

「……」

 楓彩はいつの間にか、ハタキを右手に、左手に水の入ったバケツと雑巾を持っていた。

「お、おい楓彩……掃除は後にしてくれ」

 楓彩の両肩を抑え込む。
 その後、剣得は足元に気をつけながら部屋の奥まで進んでいく。
 すると

「おっ、あったあった」

 何やら縦長の古そうな木箱を手にして持ち出してくる。
 その木箱を楓彩に差し出すと、一瞬にしてホコリが落とされ、綺麗になった。

「おぉ、すげー………じゃなくて!! これをお前にやる」

 楓彩は両手の掃除用具を床に起き、その木箱を両手で受け取る。

「っ!! 重いっ!!」

 楓彩の腰に力が入り、少しよろける。
 剣得が軽々しく片手で掴んで持ってくるので、予想より重く感じた。

「な、なんですか?これ……」

 と木箱を抱える楓彩。

「まぁ、開けてみろ」

 2人は一旦、リビングに戻り、楓彩らテーブルの上に木箱を下ろす。
 そして、木箱を封するために結ばれていた紫色の紐を解く。が

「うわーん、固結びになっちゃいましたー!」

 と指に力を入れて嘆いていた。

「あぁ、もう! 蝶結びなんだから引っ張るだけだろうが!」

 剣得は固結びを解き、紐を回収する。

「す、すいません」
「ったく、スムーズにいかないな……」

 と紐をまとめながら皮肉る。
 そして楓彩は木箱を開く。

「こ、これは……」

 中に入っていたのは、黒い鞘、黄金の鍔、萎びやかなしなり。
 そして、一本一本丁寧に刺繍が施された柄。

「か、刀……?」
「そう、俺の実家にあったのを親父がくれた物だ」
「い、良いんですか? こんな立派な物を貰ってしまって……」

 楓彩はすこし戸惑う。
 状態はよく、相当な骨董品だろう。
 日本刀というのは今のご時世、そう簡単に手に入るものではない。
 なぜなら、近代兵器の進化が活発になり、日本刀という原始的な武器は実用性が無いからだ。
 そのため鍛治職人は存在しない。

「楓彩なら使えるだろ……」

 剣得はそう言うと、刀を手に取り、状態を確認する。
 そして楓彩に丁寧に手渡す。

「持ってるだけで物騒だからな、普段は……そうだな……これにでも入れておけ」

 剣得は物置から持ってきたであろう黒いバットケースを渡す。
 楓彩はバットケースに日本刀をしまう。

「切れるから扱う時は気をつけるんだぞ?」

 と注意を促す。

「はい!」

楓彩の返事には喜びと緊張が見て取れた。

「んじゃ、少し練習してみるか」

 2人は、G,S,A本部の戦闘実演室を使った。
 ショウも、見たいという理由で、同じ部屋に車椅子で入っていた。

「………」
「ショ、ショウさん……、その……」 

 楓彩はショウの前に立つ。

「謝んなくていいよ」

 ショウは楓彩の目を見て優しい表情で言う。

「え?」

「楓彩が謝ることなんか何も無いよ……一緒に強くなろう?」

 ショウの優しい笑顔と優しい言葉に楓彩の涙が溢れ出る。

「ショウさぁん!!」

 飛びつこうとするが

「っと、怪我に響きますね、やめときます」

 と急ブレーキをかける。

「別にいいよ?」

 と両手を広げる。
 楓彩はそれを聞いて、優しく、ショウの胸に顔を埋める。


 その後、戦闘実演室の機能の「ダミー戦闘」を使って、マネキンを10体ほど出現させ、日本刀の切れ味を試すことに。
 楓彩はそのダミーの前に立ち、剣得はその後ろで、腕を組んで楓彩を見守っていた。

「楓彩、気おつけろよー」

 剣得は日本刀の切れ味は大丈夫か、よりも、楓彩が怪我をしないかを心配していた。
 そして、楓彩は静かに抜刀する。
 その時、鉄と気が擦れるスーッという綺麗な音が鳴る。

「……(やっぱり重い…)」

 楓彩は刃に目を向ける。
 刃には自分の顔が映っていた。
 だが、異変に気づく

「は、剣得さん……鋭く、ありません……」

楓彩はそう言うと刃を剣得に見せる。

「は? どうゆうこと?」

 剣得は楓彩が持っている刀の刃を見ると、確かにおもちゃの刀のように丸い。
 重さ、硬さは完璧に本物の日本刀だ。

「どいうことだ?」

 剣得は不思議に思い、楓彩の手から日本刀を奪うと

「!?」

 驚愕する。
 さっきとは売って違って、鋭い、見るからに切れ味が良さそうな日本刀になっていた。

「「は!?」」

 楓彩と剣得は両目を擦った。
 しかし、変わらず、その刀は鋭利な光沢を輝かせていた。
 すると、車椅子のショウが自力で近づいてくる。

「ちょっと私にも見して」

 剣得は車椅子のショウに日本刀を丁寧に手渡す。
 次の瞬間

「あっ」

 ショウが手にした瞬間、刃は欠け始め、あっという間に“なまくら”になってしまった。

「「えぇぇぇ!?」」

 剣得と楓彩は絶望に満ちた顔をしていた。
だが、ショウは顎に手を当てて何か考えている様子だった。

「ふむふむ……やっぱり、これ“心鉄器しんてっき”だね。」
「「心鉄器?」」

 剣得と楓彩の頭の上にハテナマークが浮かぶ。

「そう、仲良くハモっちゃって、人の心の形にによって姿形を変える珍しい金属で出来た武器だねこんな物がまだ存在したんだ」

 心鉄器、持つ人によっては強力な武器。

 楓彩が持つと刃は丸くなり、切れないようになった。
 剣得が持つと殺傷能力の高そうな刃が生成され、ショウが持つとなまくらになってしまった。

「私の場合、今の心境、“萎えてるから”錆びたんでしょう」
「俺の場合は?」
「いざとなったら人を殺せる覚悟があるということでしょ? ……問題は楓彩、あの刃の形状から……あんた、人を傷つけることを拒否してるでしょ」
「…………」

 楓彩は自分の心を暴かれ、面を食らってしまって言葉が出なかった。
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