生き残りBAD END

とぅるすけ

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第2章 「征」編

切れない刀

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 剣得は楓彩と夕食を済ませ、楓彩は再び素振りに戻り、剣得はショウの工房へ向かった。
「ショウちゃんの工房」にて

「結局、人は切れないけど……折れることはまず無いでしょ」

 ショウと剣得は工房で話していた。

「なぁ、思ったんだが…あいつの刀、折れるとどうなるんだ?」

 剣得は恐る恐る質問する。

「……考えたくはなかったけど、あの子の心その物が折れることになるね、あの刀は“心の具現化”だから」

ショウはパソコンを操作しながら素っ気ない感じで返答した。

「心が折れたら?」
「廃人になるね」

その時

「出来た!!」

ショウはパソコンから手を離し、上に伸びをする。

「ん?」

 ショウが今完成させたのは、例の男専用の檻だ。

「よぉし!剣得!生産室に行くよ? 押してって!」

ショウはキラキラした目で剣得を見つめる。

「はいよ……(ガキかこいつは…)」
剣得はそんなことを思いながら、ショウの車椅子に付いている取っ手に手を掛け、ショウを生産室まで連れていく。


 生産室
 そこではロボットアームがショウの描いた設計通りにパーツを組み合わせていた。
 それを窓ガラス越しに見つめるショウと剣得。

「さぁて、そろそろかな?」

 すると、ロボットアームの動きが一斉に止まる。

「さぁ! 剣得! 押して押して!」

 剣得はショウに煽られるがままに生産ラインの最深部へと車椅子を引く。

「(こいつ、楽しんでやがるな?)」

 そして、ベルトコンベアに乗って運ばれてくる携帯電話ほどの大きさの装置を手に取るショウ。

「これは牢屋に付けるだけで、空間固定出来る優れもの! やつの能力を実際に感じて作ってみた!」

 とドヤ顔をするショウ。

「何かとすごいな……お前」

 少し引く剣得。

「さぁ、試運転だ! 早速あいつの入ってる檻に付けてみよう!!」

 その後、2人はものけの空の牢屋の前で唖然としていた。

「あれ?……逃げられた?」
「そ、そのようだな」

 そして、G,S,A本部に鳴り響く警報。
 剣得とショウは司令室で監視カメラの様子を見ることに。

「おい、奴はどこへ行った」
「分かりません、一瞬にして姿を消したので……」

オペレーターは画面を凝視しながら剣得に返答した。

「おい、ショウ! 逃げないんじゃなかったのか!?」
「し、知らない! そんなこと!」

 ショウもモニターを凝視して言う。
 その時、剣得は楓彩が心配になり、楓彩が1人で素振りをしているであろう戦闘実演室へ向かう。


「楓彩!」

 剣得は戦闘実演準備室のドアを勢いよく開けた。
 そこには休憩用のベンチに仰向けで寝ているかの姿が。

「おい!楓彩!!大丈夫か!!」

 剣得は楓彩の後頭部を左腕で支え、体を揺さぶる。

「ん? あぁ………むにゃぁ……」

 剣得の頬に楓彩の右手の甲がクリーンヒットする。 

「ばふっ!!」

 剣得はすかさず、右腕の腕時計に目線を下ろす。

「9時2分……」

 確時睡眠症。
 楓彩の持っている不思議な病気だ。
 その日、結局、男は姿を現さずに姿を消した。
 剣得は楓彩を自宅へ返すため、帰宅しようとするが、ショウは車椅子のため、明日は楓彩と共に行動しなければならない。
 そのため、ショウは剣得宅で泊まることに。

 翌日

「剣得さん!剣得さん!起きてください!」

 いつもの朝と同じように、楓彩が剣得の体を馬乗りになって揺さぶっていた。

「ん? ……朝か……」

 いつもはベッドで楓彩と一緒に寝ているのだが、昨日はショウがベッドを使っていたので、楓彩と剣得は敷き布団で寝た。
 もちろん同じ布団に。
 それだからか、天井がやけに高い気がする。

「楓彩、降りてくれ……朝飯作るから」
「はーい♪」

 楓彩は朝から機嫌のいい返事をする。
 剣得は起き上がり伸びをすると、楓彩に背を向け、台所へ向かう。

「ショウさんも起こしますね?」

 楓彩はそう言うと、ショウの体を揺さぶろうと近づく。
 その時。

「ショ───わぁっ!!」

 楓彩は敷き布団を踏んでしまって滑る。
 剣得はそれに気づき、楓彩の支えに入ろうとするが、剣得も布団に足を取られて楓彩と一緒に倒れ込む。

「いって…………楓彩……大丈ぶっ────」

 剣得の右手に柔らかく、浅い小さな物が収まる。

「いっ!くぁっ!!」

 楓彩のその声を聞いて剣得は素早く両手を挙げる。
 だが、剣得はさっきの楓彩の声に違和感を感じる。

「楓彩、大丈夫か? 痛かったか?」
「うぅ……い、いえ、大丈夫です……」

と顔を歪めて胸元を抑える楓彩。

「(やはりおかしい…)」
「?」

 剣得は勇気をだして、確認してみることにした。

「楓彩、悪いな…ちょっと見せろ」
「え?」

 剣得はそう言うと、楓彩の着ているTシャツを鎖骨のあたりまでめくって、胸元を凝視する。
 やはりノーブラ…。

「ひゃあっ!! な、なにして……!!」

 楓彩の顔は一気に赤面する。

「やっぱりな……楓彩、この“傷”いつ、どうやって作った?」

 そう、楓彩の谷間と呼んでいいのかは定かではないが、二つの小さな膨らみの真ん中当たりに、棒で叩かれたような細い痣が出来上がっていた。

「こ、これは……その、ちょっとした、事故といいますか、なんと言いますか……」
「……どうやったら素振りで事故るんだよ…」

 剣得は楓彩のTシャツを下ろし、ため息をつく。
「じ、実は……───」


12時間前

「素振りですけど……この刀意外と重いですね」

 と、抜刀し、鞘を静かに床に置く。
 鏡のように綺麗な鉄、それに見合った重さ、だが、何度見ても玩具のような刀だ。

「早く重さに慣れないとっ!」

 木刀より重い武器を使うのは初めてなので、先日のように足でまといにならぬように自己鍛錬を積んでいく。
 と、その時だった。

「っ!!」

 縦に素振りをしていた楓彩は背後に気配を感じる。
 振り返ると、2mほど離れた場所に、目つきは鋭く、右目の下のの切り傷跡、そして、細身の体。

「あ、あの……」

 その男は楓彩を見ていた。

「ふっ、なぁ、お前もG,S,Aなのか?」

 男は楓彩を少し見下すような目で問う。

「あ、はい……」

 楓彩はおどおどとしながら返事を返す。
 そして、男の目に楓彩の持っている刀が止まる。

「おい、なんだその玩具は……」
「し、心鉄器です……」
「そうか……お前、強くなりたいって目をしてるな」

 男は真っ直ぐ楓彩の瞳を覗いてくる。

「っ!」
「わかるさ……何人ものの人の目をみて、その夢を断ってきたんだから……」

 男は心なしか、すこし悲しい目をする。 

「だが、今回の俺は違う、お前のその夢、叶えてやるよ…」

 男の口角が上がる。

「え?」
「武器は要らん。(取り上げられてるし)かかってこい」

 と、男は両拳を顔の前に構えて、戦闘態勢に入った。

「いや! 待ってくださいよ!! いきなりの事で何が何だか────」

───刹那

 楓彩の顔の右を鋭い風が通る。

「っ!?」
「戦場では考えてる暇なんか無いぞ…?」

 男の鋭く低い声は楓彩の核心を貫いた。
 そして男は拳を引っ込める。

「さぁ、お前の前にいるのは、人殺しだ……全力で来ないと………死ぬぞ?」

 違う、これは剣得との模擬戦闘ではない、これは殺し合い。
 命のやり取りだ。
 次、気を抜けば確実に殺される。
 男が放つ本物の殺気はそれを物語っていた。

「……(集中っ!大丈夫…私なら──)」

───刹那

 楓彩と男は姿を消し、同じ刹那の内にお互いの元の立ち位置が交代していた。

「ぐふっ!!」

 膝を崩したのは楓彩だった。
 胸にずっしりと重い感覚が奔る。
「手刀でも勝てるな……お前の剣は俺には届かない……人を切れない剣など……」

 男は振り返って楓彩を煽る。
「……ひっ、人が……」
「?」
「人が切れなくても……」

 楓彩は膝に手を置いて立ち上がる。
 その足は一撃受けただけでフラフラだった。

「守れるものはあります!!」

 楓彩の真剣な眼差し、その瞳から放たれる、目に見えない光は男を揺さぶった。
 その後、楓彩は男に一撃も入れることは出来なかったが、最初の一撃以来、楓彩も攻撃をうまくかわしていたので、目立ったケガはしなかった。


 剣得宅

「その後、疲れちゃったんでベンチでお昼寝をしてました」

 と顎に人差し指を置いて昨日の出来事を思い出す楓彩。

「それで? 男はどこに消え去った?」

 と細い目をして尋ねる。

「分かりません、突然姿を消したので」
「はぁ、もういい、楓彩、包帯巻いてやるからシャツ脱げ」

 剣得はため息を吐いて、リビングに置いてあった救急箱を手に取る。
 楓彩は寝巻きとして使っているTシャツを脱ぎ、剣得に向かって無い胸を張る。

「まずは冷やさなきゃな」

 と言って冷却シートを取り出し、楓彩胸の痣に貼り付ける。

「ひゃっ!! 冷たい!!」

 楓彩は肩をすくめて、体をビクッと震わせる。

「我慢しろー……楓彩、もう二度とあいつと二人きりになるなよ?」
「? 何でですか?」
「危ないから」

その時

「剣得………あんた何やってんの……?」

 と携帯電話をベッドの上で構える寝癖が酷いショウ。
 どうやら通報するらしい。

「治療中だ、静かにしてろ……」

 その後、剣得はさらしのように楓彩の胸に包帯を巻く。

「包帯女子……楓彩に自分の趣味を押し付けるのは良くないよ? 剣得」

 ショウは剣得に冷たい視線を送る。

「ちがうから!!」


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